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テーマ:高級ホテル・高級旅館(34)
カテゴリ:Gourmet (Sweets)
これまで銀座エリアである程度の規模のある高級ホテルといえば「帝国ホテル」だったと思う。「西洋銀座」も非常によいホテルでホスピタリティには定評があるが、77室とあまりにキャパが小さいし、中に入れば素晴しい雰囲気だが、周辺環境がよくない。西洋銀座のようなアットホームな高級ホテルを好む客は、いかにゴージャスなつくりとはいえ、大規模ホテルは敬遠する場合が多い。
だから、西洋銀座のお客と帝国ホテルのお客は最初からあまり競合しないようにも思う。だが、「ザ・ペニンシュラ東京」は間違いなく帝国ホテルにとっては脅威だろう。ペニンシュラは300室あまりと、帝国ホテルの3分の1ほどのキャパだが、その分お客に目が行き届くだろうし、グレードも高くして顧客層を絞っている。アジアの名ホテルとしてのグローバルなノウハウも帝国ホテルよりありそうだ。これまで帝国ホテルを利用していた海外の富裕層がペニンシュラにある程度取られるのは仕方ないかもしれない。 では、日本人はどうかというと、案外ペニンシュラには流れないような気もする。実際に建築を見てそう思ったというのもあるが、帝国ホテルには、ザ・ペニンシュラ東京にはない「銀座エリアのホテルとしての歴史」というものがあるからだ。Mizumizuの亡父も生前、帝国ホテルの「アクアラウンジ」を愛用していた。シングルモルトのウィスキーに目がなく、しかもXX年モノ以上というこだわりがあった亡父にとっては、そうしたお酒を出すことができ、サービスもよく、サイドディッシュもおいしく、夜景も楽しめる帝国ホテルのアクアは嗜好にぴったりだったのだろうと思う。 こうしたある程度以上の年代の日本人にとっては「帝国ホテル」ブランドというのはなかなか威力がある。紀宮様の結婚披露宴というのも何だかんだいってブランドイメージを上げたと思う。ペニンシュラは確かにロケーションはいいが、敷地が狭いという印象はぬぐえない。新参者のツライところだろう。ロビーのカフェ「ザ・ロビー」も、香港のそれは東京よりずっとゆったりしている。東京の「ザ・ロビー」はあまりにキチキチしすぎて、優雅な雰囲気がない。 帝国ホテルを見上げると、亡父とのアクアでの時間を思い出す。サイドディッシュで特に父とMizumizuが好んだのが、アナゴを使った簡単な料理だった。ところが、アナゴと何を組み合わせていたのか思い出せない。電話をして聞いてみたら、もうそのメニューはないとのことでハッキリとわからなかった。確かアナゴとフォアグラだったような気がするが、違うかもしれない。亡父はこれを「おかわりください」といって追加注文していた。英語もフランス語もできる人だったが、日本語になると突然「おかわり」などと言うのがおかしくもあり、多少恥ずかしくもあった。 父が亡くなる直前、アクアからキープしているボトルの期限が迫っていることを知らせるはがきが来た。連絡をもらえれば延ばせるという。父が元気になってアクアにもう一度行く可能性がないことは、そのときすでにわかっていたのだが、電話をして延ばしてもらった。そして、亡くなったあとに家族で亡父の残したグレンへディックのボトルを空け、おいしいサイドディッシュを堪能した。 こうしたちょっとした家族の想い出を帝国ホテルにもっている日本人は案外多いような気がする。その土地での歴史というのは、ホテルにとっては大切なことだ。外資のホテルが日本でこうした歴史を作っていくのは並大抵のことではない。だから、やはりペニンシュラは海外の顧客をターゲットにしていくのだと思う。確かオーナーはユダヤ系。その方面の人脈もありそうだ。香港でのブランドイメージはバツグンだから、中国人のお金持ちもペニンシュラを選ぶかもしれない。帝国ホテルのアクアには白人も多かった。ああいった顧客がペニンシュラに流れるのもあるだろうな、と思う。だが、日本人で1泊6万出してもいい、というほどのお金持ちは案外いないのだ。 だがしかし、ザ・ペニンシュラ東京の公式ホームページはあまりにシャビーでひどすぎる。もうオープンしたのだから、情報を早く充実させてほしいもの。英語圏ではあの程度のもので許されるのかもしれないが、日本のホテルの百花繚乱の工夫を凝らしたホームページと比べると月とスッポン。あれでは泊まる気になれない。 ホームページがあまりにわかりにくいので、ホテルで聞いたところ、2Fに広東料理のヘイフンテラス、上階にバーとフュージョン料理(イタリアンとフレンチを組み合わせた料理だとか)のレストランを併設したPeterがあるそうだ。ランチはそれぞれ4000円台からのよう。広東料理はイイかもしれない。今度はちゃんとバレットにクルマを預けて(笑)、食べに行ってみよう。 ところで、スイーツだが昨日ご紹介したマンゴープリン以外はちょっと期待はずれだった。 これは「ヤムヤム」というネーミング。yum yumとは英語で「おいしい」という意味。でも、どうみてもサントノーレにしか見えないんですが…(苦笑)。 3つのプチシューに違ったクリームを詰めたということだった。サントノーレはとても手のかかる菓子だ。パートシュクレ(土台になるパイ生地)とプチシュー、それにクリームのアンサンブル。プチシューはカラメリゼしてあるのが基本(あくまでMizumizuの中では)だが、ペニンシュラのヤムヤムはチョコレートコーティングとちょっと廉価版(笑)だった。パートシュクレもイマイチ薄いし、クリームもケチくさい量。売り物の味の違うプチシューのクリームも、実はほとんど違いがわからなかった。 というわけで、どうも作るのが面倒なサントノーレを全体的に廉価版にした、という感が否めないスイーツだった。これでyum yum(おいしい)とお茶を濁されるより、正統なるサントノーレを買ったほうがいいなぁ。サントノーレでクリームをケチったら、もうそれで高級感がぐっと落ちる。 クグログもあったので、思わず買ってしまった。が、実はこれもネームプレートをみて、「え? クグロフ? これが?」と意表をつかれたのだ。 クグログはアルザスのお菓子だが、フランスのものというようりドイツ語圏の焼き菓子といったほうが正しい。斜めのうねり模様がはいったドーナツ型がよく見る形だ。小さなクグロフは穴があいてないものもあるが、ペニンシュラのクグロフは砂糖をコーティングしていて、ブリオッシュのうねり模様が見えない。 でも、上にのったオレンジの砂糖漬けが美味しそうだったので、試してみた。 結果は… あっ、甘い! ブリオッシュ自体はお酒が効いていておいしい「ような気がする」のだけれど、表面の砂糖がメチャ甘くてビックリ。甘みにはかなり強いMizumizuでもかなり衝撃を受けたので、「甘さ控えめ」が好きな人には耐えられないかも… オレンジももう少し苦味や酸味を残してもいいような気がする。とにかく、全体的に甘すぎてブリオッシュの出来具合については詳しい論評が不可能となってしまった。クグロフはやっぱりブリオッシュの焼き方で勝負してほしい。 ううむ… 日本以外のアジアではこのレベルで十分高級スイーツなのかもしれないが、東京では、ダメでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.10.10 17:26:09
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