シェ・マルコ(荻窪)には地元の常連しかほとんど知らない隠れた超人気メニューがある。
自家製の生パスタを使った「ジェノベーゼ」。ジェノベーゼとは「ジェノバの」という意味。パスタではバジリコを使ったソースを指す。
Mizumizuはジェノベーゼはあまり食べない。というか、ハッキリ言って嫌いだ。バジリコ自体は嫌いではないのだが、ジェノベーゼソースになるとバジリコの青臭さが強調されてしまうような気がする。なので、めったに(というか、ほとんど)食べないのだが、シェ・マルコのジェノベーゼだけは別。
ここのジェノベーゼはガーリックをうまくつかってバジリコの青臭さを消している。サーブされたときに漂ってくるフレッシュなバジリコの香りとガーリックの香ばしい香りはハナマルものだ。そして細いけれど生だからモチモチとしたパスタの食感も素晴らしい。シェ・マルコでは他にはカルボナーラとボロネーゼも試したけれど、これらはハッキリ言って『並』。ジェノベーゼだけが傑出している。しかも800円とお値打ち。
ビストロなのだが、なぜか自家製の生パスタも食べられるから女性が1人でも入りやすい。実際単独客はだいたいフレンチのコースではなく、パスタを食べている。なかでもジェノベーゼは「驚異のオーダー率(お店の人の弁)」だそうだ。
もちろん、フレンチでも、正統派の郷土料理を出す店であることは間違いない。
これなんて、エスカルゴ中のエスカルゴ。ここまでオーソドックスなのはいまやかえって珍しいかもしれない。実はこれを食べて驚いた。というのは、ディジョンで
リベラシオン広場を見ながら食べたエスカルゴと味がまったく同じだったからだ。つまり、ガーリックの風味が強烈だったということ。白ワインとマリアージュさせることを考えてのフランス人らしい強い味付けだ。もしかしたら遠く離れたこの2つのレストラン、ディジョンの「ル・プレ・オ・クレール」と荻窪の「シェ・マルコ」のシェフは同じところで修業したのかもしれない。マルコのシェフはブルゴーニュの「エスペランサ」にいたというし、その可能性は高い。
焼き林檎とアイスのデザートでは、アイスの上で羽を広げてる白鳥(??)が妙に気に入っている。なんというか、シャガールの絵に出てくるヘタウマの鳥みたい。アイスは濃厚な味ではなく、ジェラートのようなさっぱり系。
通りにある看板はこんな感じ。とてもウマそうな店に見えない…(苦笑)。ラーメン屋やドーナツ屋とごちゃごちゃになった看板は、丼モノでも出す店みたいだ(再苦笑)。
ある日のこと。ちょうど店から出てきたたら、看板の前で、若いカップルが立ち止まり、女性のほうが指差しながら男性に話しかけていた。
「けっこう美味しそうだと思うんだけど?」
男性は黙っている。Mizumizuがさっそくプッシュしてあげた。
「今食べてきたけど、おいし~ですよぉ!」
「あ、そうですかぁ。じゃ」
といって、女性はうれしそうに男性を促して入っていった。男性のほうは苦笑い。
お客さん一組ゲット!
ジェノベーゼとスフレが美味しいことは、教えてあげる暇がなかった。ゴメンね。