前田真三の風景写真で名高い「丘の町、美瑛」。大雪山系の麓だが、春や夏は案外晴れても山が見えないことも多い。冬も天気が悪ければ同じことだが、ときに吹雪のあとなど、空気が澄んでくっきりと見えることもある。そういう冬の日に美瑛を訪れることができたら、ラッキーだ。
大雪山というのは特定の山の呼称ではなく、トムラウシ山、美瑛岳、十勝岳、旭岳など標高2000m前後の山々の広大な連なりを指す。総面積は神奈川県に匹敵する。
「富士に登って山の高さを知り、大雪に登って山の大きさを知る」とも言われる。
煙をあげているのは十勝岳。日没の最後の一瞬の光を受けて、立ち上る噴煙が薔薇色に輝いた。
日没前後のわずか20分ほどの光のドラマだった。すぐに山の峰は黄昏の闇の中に沈んでいった。