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書いていて我ながらウンザリしてきたので、ここらでちょっとブレイク。
主観点による操作ばかりがアリアリの現行のフランケンシュタイン・ルールだが、もともとの理念は、「ジャンプばかりが重視され、滑りがおろそかになっている風潮を見直そう」というものだった。 だがその結果、ジャンプの技術はあっという間に低下。ストイコは、男子の五輪王者に対して、「ブライアン・ボイタノ時代まで逆戻りした」と酷評した。 「滑り」に関して言えば、確かに往年のトップ・スケーターのほうが基本に忠実でクリーンかもしれない。 そんなフィギュアの原点を鑑賞できる超レア物ビデオを楽天オークションに出したので、興味のあるかたは入札してください。 出品者と落札者の個人情報をお互いに開示しないですむ「匿名発送」にしてあります。再生には問題ありませんが、古いビデオなので、多少画面がユレて見えることも・・・ 神経質な方にはお奨めしません。 追記:あまり値段がつりあがってしまうのは本意ではないので、こちらのオークションは早期終了としました。入札してくださった皆様、ありがとうございました。 ビデオはアメリカで買ったもの。1995年発売だが、80年代のアイスショーでの映像も入っている。もちろん日本未発売。今となっては入手も不可能。出演しているのは、そうそうたるメンバーだ。 まずは、ブライアン・ボイタノ。 ストイコのコメントは的を射ている。ハッキリ言って・・・ライザチェックよりずっとうまい(あ~、言ってしまった)。スケートはしっかり氷をとらえて伸びるし、エッジは深いし、ジャンプは高く力強く、軸もしっかりしている。「ボイタノといえばイーグル」だが、これまたちょ~素晴らしい。微動だにしないポーズに男性美が溢れている。いや~、このカリスマ性は、今のルール適合型の超優等生男子選手にはないものだ。この時代以下の五輪王者って、一体何?(あ~、言ってしまった) ボイタノの手から炎が出るような演出は・・・「???」
そして、ペアのベストオブベスト、ゴルデーワ&グリンコフ。 2人のユニゾンを見ると、「これがペアでしょ」と言いたくなる。「今のペアの滑りって汚い」とも。最初に出た世界ジュニアが5位だったというだけで、あとは出場した試合すべて1位か2位という奇跡のゴールデンカップル。グリンコフが若くして亡くなるという、悲劇的な結末がこのペアを永遠の伝説にした(そして、ゴルデーワさんが、これまたロシアの生んだイケメン金メダリスト、イリヤ・クーリックと再婚したことで、麗しき伝説をぶち壊されたファンから大ブーイングを浴び、人気も地に落ちた。実際、ゴルデーワ&クーリックのペア・パフォーマンスはびっくりするほどヒドかった)。 中国勢の台頭で、ツイストリフトやスロージャンプなどの投げ技、単独ジャンプのテクニックは向上したと思うが(ゴルデーワは3回転ジャンプがまったく跳べない人だった)、基本的な滑りの部分では、もしかしたらこのペアの時代から比べると、後退しているかもしれない。
リレハンメルでゴルデーワ&グリンコフと金メダルを争うことになる、ミシュクチョノフ&ドミトリエフも出ているが、相当若いらしく、スケートはかなり粗い。ここからゴルデーワ&グリンコフと世界1位を争うまでレベルを上げたということに、逆に驚く。ドミトリエフはパートナーを替えて、長野五輪でも金を獲った選手。
伊藤みどりも登場! 若き日の伊藤みどり(何歳だろう? 10代であることは間違いないと思うのだが)。大きく明確な放物線を描く、「飛距離と高さが奇跡的に素晴らしい」ジャンプ。サルコウ・ジャンプでも飛距離が出てるってのには改めて驚いた。たぶんブレードにバネ仕込んでるな(笑)。こういうサルコウを跳ぶ選手は、今は皆無。現行ルールで伊藤みどりがいたら敵なし? いえいえ、伊藤みどりがいれば、ジャンプの質をできるだけ過小に評価するルールができるだけです。 そして、軽々と跳ぶ3トゥループ+3トゥループ。セカンドジャンプを降りたあと急にあさっての方向に曲がっていってしまうなんて誰かのような疑わしさはない。ピタッと降りて、すぅーと自然な曲線で流れていく。完璧に回りきって降りてくるというのは、こういうことでしょう。
エリザベス・マンリー この人はブロンドの佐藤有香。とにかく、なにからなにまで基本に忠実。フィギュアスケートを実際にやっている人には、こういう滑りが何よりお手本になるのではないか。
おまけに、ペトレンコもいるではないか。 バンクーバーで薔薇の王冠を戴いたジョニー・ウィアー選手の左側に座っていた、ロシアのおじさん。若いころの彼は別人です、ハイ。 「めちゃくちゃ痩せている!」 長いなが~い脚を氷と水平になるまで上げてのスピンには、クラクラ。氷の上をただ回ってるだけで、あそこまで貴族的な雰囲気を出せるとは・・・ ランビエールも高貴な雰囲気をたたえた選手だが、堂々たるカリスマ性ではペトレンコのほうが上かもしれない。 つまり・・・本当に、今は「昔のスケーターのほうが滑りもうまくて、カリスマ性があってよかった」状態になっているのだ。あれこれ規定を細かく定めた現行ルールに適応している優等生たちは、だいたい皆同じようなことをするので、過去の名スケーターのような個性や、「大輪の花の風情」がない。おまけに難度の高いジャンプはリスクがあるので跳ばない。スケートの基本である滑る力を重視するルールとはいっても、これではファン離れが進むのも当然だろう。ストイコやプルシェンコが激怒するのもわかる。 ビデオには他に、ライバルのケリガン選手に対する暴力事件(知人を介して殴打させた)で、フィギュアスケート史に悪名を残したトーニャ・ハーディングの演技も入っている。まだ若く、悪者になっていない時代。彼女は、スケーティングはたいしたことなし。
あとは、カタリナ・ビットとの「カルメン対決」で知られるデビ・トーマス。国家をあげて強化され、金メダル獲得後は高額な契約金を得てプロに転向したビットと違い、トーマスはプロのフィギュアスケーターになるつもりはなかった人。現役引退後は、医学部に進んで医師となったハズ。スピンの軸など非常にしっかりして、基礎のできているスケーターだということがわかる。
<明日はきのうの記事の続きに戻ります>
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最終更新日
2010.03.07 01:55:36
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