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オリンピック本番を控えて、「明日トリプルアクセルが決まるか決まらないか。それで自分の人生が決まると思うと眠れなかった」と言ったのはフランスのフィリップ・キャンデロロ選手。フィギュアスケート選手がオリンピックでメダルを獲ることがいかに大きな意味をもつのか、オリンピック後の、特に高橋選手に対するメディアや世間の「扱い」を見ると、あらためてまざまざと思い知らされる。 フィギュア選手の人生を分けるのは、往々にして1つのジャンプ。高橋選手については「世界一のステップ」がとかく注目されがちだが、競技者としての彼の強さはトリプルアクセルにあると思う。あの素晴らしい質のトリプルアクセルがあるからこそ、シーズン通して4回転を失敗しつづけても、世界の頂点に立つことができた。 本田武史選手が世界トップと戦うことができたのに、同年代の田村岳斗選手が世界に羽ばたけなかったのも、本田選手には素晴らしいトリプルアクセルがあったのに対し、田村選手は(4回転以上に)トリプルアクセルが苦手だったからだ。 人生の「明」と「暗」を分けるのは、本当のところちょっとした違いでしかない。一般人の多くが通り過ぎる「受験」という関門もそうだ。当落線上にいる受験生の結果を分けるのは、難しい問題が解けるか解けないかではない。基本的な問題を1つ落とすか落とさないか。ほんの少しの違いで、その後の人生が大きく変わる。時には、そこでもうほとんどすべてが決まってしまう。わずかの差で望むものを得られなかった人には残酷な話だが、世の中は常にそうしたものだ。 高橋選手がオリンピックで「もう一歩の4位」だったら、今ごろこれほど注目されることはなかっただろう。本当にメダルが獲れてよかった。 もちろん浅田選手も。国民的人気を誇るスター選手であるがゆえに、バンクーバーで万が一メダルを逃したらどうなっていたか、想像もしたくない。1億総評論家になって、コーチや選手を大バッシングしただろう。金メダルでなかったのは、いかにも残念だが、ああした偏向採点の中で、トリプルアクセルを3度という、これまで誰もなしえなかった快挙を達成し、銀メダルを獲ったのは立派の一言だ。トリノの世界選手権で浅田選手がいい演技をしなければ、まだ世間はこの採点の異常さに気づかずにいたかもしれない。 銀座を歩いていて見かけたポスター。真っ白な大地に伸びた影が、不思議なほど長い。透明な空気感も伝わってくる。よく「風景写真は日の出・日の入り前の2時間が勝負」と言われるが、その定石を踏襲した時間帯に撮影したのかもしれない。 「オリンピックのメダリスト」という称号を手に入れれば、同シーズン途中まで試合で強かったのは、実は後輩の織田選手のほうだったことなど、世間は忘れてしまう。 フィギュアスケーターの選手生命は短い。今のうちにどんどん稼いでください。高橋大輔はそれに値する才能を持った人だ。 ゆうパックの宣伝ポスターに比べると、この本の表紙の写真はずいぶんリキが入っていない・・・ これじゃ、ただのスナップでは? 金メダリストのライザチェックがさっぱり日本で注目されないのとは対照的に、最高の演技をしながらメダルを与えられなかったことで、逆に株を上げたウィアー選手。ウィアー選手にああいう採点をしながら、日本人のお偉いさんは、「選手はまず自分の個性、セールスポイントを見極めることが大切」などと言っている。そうすれば正当に評価されて、公平な点が与えられるとでも? ふざけないでほしい。誰にも真似できない個性を生かしたプログラムを作り、最小限のミスで演技をまとめたバンクーバーでのウィアー選手の結果を見れば、そんなおためごかしは今さらむなしいだけだ。 日本では金メダリスト以上にファンから愛されているウィアー選手。ショーでどんどん人気を見せ付けてください。日本で、「ジョニー・ウィアーは家族的でないからショーにふさわしくない」とか「他に才能のある選手がたくさんいるから、ウィアーを呼ぶ余裕がない」などと、見え透いた意地悪を言う人はいません。 こちらの浅田選手の写真はまた、非常に美しい。浅田真央の明るさ、華やかさ、躍動感がよくでている。短いスカートのなびき方もチャーミングだ。 こちらは在庫わずかとか? しかし、この雑誌は、チャンピオンになって表紙に載る選手のポーズがいつも同じ・・・ Mizumizuが非常に好きな写真はこれ。モーターマガジン社はクルマを主に扱う出版社だと思うが、メカに強い出版社らしく、クールで金属的なグレーの背景色に、カッコいいポーズを決めた日本人選手がほぼV字に配置されている。縦の白抜きは、下に来るにしたがってスポットライトのように変化し、ライトの光が後ろから選手に当たって影ができているような印象を作っている。選手も含めて全体がメカニックでシャープなイメージに統一されていることに、卓越したセンスを感じる。
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最終更新日
2010.07.05 23:56:38
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