初夏の風
5月は私の一番好きな季節である。熱くもなく寒くもなく、薄いブラウス1枚で初夏の風に吹かれながら新緑の山や畑を眺めながらウォーキングをするのは最高に贅沢な時間である。ゴールデンウィーク前に植えた苗もようやく根付いてようでゴーヤ、トマト、インゲン、キュウリの弦も伸び始めている。これから先は雑草との戦いと毎日の水やりに追われることになる。 ふと気づくと、去年は姿を見せなかった燕が飛び交っているのを数日前から見かける。気がつくと去年はボロボロで崩壊しかかっていた巣が、しっかりと頑丈にリフォームされている。ということは、今年はここで子育てをするのかもしれない。気になって毎日何回か巣の様子をみているのだが、卵を産んだような気配がしないので、もしかしたら古巣を捨ててどこかに新しい巣を作っているのかもしれない。 そして5月も半分が過ぎてしまった。一緒にウォーキングをしている知人が「あっという間に時間が過ぎてしまう」とよくいうが、私だって75歳の後期高齢者になったと大騒ぎをしていたが、あと3か月もすれば76歳になってしまう。 今日はガスの点検が来た。点検に来てくれたのはまだ20代の若い男性で、訪問先はやはり独居老人が多く、説明してもわからないこともあるらしい。いうまでもなく、今のご時世は年寄りにとっては生きにくい世の中である。買い物に行っても現金を手渡しして済むことも少なくなり、レジの横で画面をにらみながら苦戦している高齢者を見ると、何時自分がそんな事態に陥るのかと不安になってくる。人と人とが顔を見合わせ、声をかけあいながら物事に向かい合うという時代にはもう戻らないのだろうか?きっと戻らないに違いない。 年に抗って無理をしてまで長生きをしようとは思わないが、命の終わりは誰にも分らない。75歳の後期高齢者になってしまった私は手探り状態で、オタオタと毎日を過ごしながらお迎えが来るのを待つばかりである。「この歳になったら楽しまなけりゃ損よ」という人もいるし、まるでお尻に火がついたかのように出歩きまわる人もいる。人はそれぞれ懸命に(?)自分の人生を生きているのだ。大したこともできないくせに偉そうに「生きていくのもたいへんね」なんて人ごとの様に言ってられないと、息子が置いていってくれた花と娘から送られてきた花を眺めながら思う今日この頃である。