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長編時代小説コーナ

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龍5777

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May 22, 2007
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カテゴリ:暗闘
「伝令ー」  騎馬兵の緊迫した声が本営に響きわたった。

「君も一緒したまえ」  大鳥圭介が素早く表に飛び出して行った。

「申しあげます。敵勢が小山宿北部に接近中であります。大監察の香川敬三が

総大将の模様です、その数ざっと千五百名ほどにございます」

「ご苦労」  伝令が駆けさった。本営のまえに大砲二門と弾薬を積んだ荷車が

凌霜隊士に守られている。

「朝比奈隊長、これで一泡ふかせてやろう、君に礼を言うよ」

「わたしは隊にもどります」  「貴隊の奮戦を期待する」

  大鳥圭介の声を背に茂吉は騎乗し隊士を引きつれ帰隊した。本営から鋭い

ラッパの音が響きわたり、各隊が整然と移動をはじめている。

  洋式戦術の大家である大鳥圭介は、政府軍の殲滅を企図し、巧妙な作戦で

政府軍を包囲し猛烈な砲戦をしかけた。えんえんと砲声が轟き銃声も混じって

いる。政府軍の損害は深刻で敗退をよぎなくされた。この頃の政府軍はすべて

が新鋭銃を携行している訳ではない、恭順した諸藩の混成軍で火縄銃まで混じ

っていた。大鳥圭介は三度にわたり政府軍を敗退し、四次にわたる小山戦争は

旧幕軍の完全な勝利となった。この日の戦闘で政府軍は戦死者百二十名、負傷

者二百名余の損害をだし完敗した。幕軍の鹵獲(ろかく)した兵器は大砲二十門、

小銃三百挺にあがった。この戦闘で凌霜隊も大いに奮戦した。

  これを契機とし大鳥軍は三千余の大軍にふくれ、日光籠城をめざし進撃を

開始した。戦勝で沸き立つなか、再び、凌霜隊に事件が起こった。

  山片俊三隊士が逃亡したのだ。彼はこの日、太平山への斥候を命じられ

陣を離れ、そのまま夜が迫っても帰還せず全隊士が心配していた。翌朝、隊が

粟野に着陣すると、ひよっこり戻ってきた。  「心配したぞ」

  全隊士が安堵の笑みで迎えた。

「済まぬ、なんせ敵の真ん中に残され身動きがとれなかった」 その後、山片は

平常どおり任務につき、夜を迎えるとランドセルから何か取り出し、そのまま隊

を離れ、再び姿を見せることがなかった。

「可笑しい」  全隊士が山片俊三の行動に疑惑をもった。

「脱走じゃ」  またもや山田熊之助が吠えた。

「全員集合いたせ」  速水参謀長が、焚火のまわりに隊士を集めた。

「皆に申し渡す、このような事態が頻発しては士気が乱れる。脱退したい者は

申し出よ、凌霜隊発足の精紳を理解した者だけで会津に向かう」

  焚火の炎をうけた速水参謀長が、眼光鋭く一同に申し渡した。茂吉は沈黙し

戦闘の苛烈さと非情に思いを馳せていた。去るも残るも非情と感じていた。

「去る者は去れですか?」  武井砲術士官が訊ねた。

「そうじゃ、止めだてはせぬ」  この一言で隊士の動揺が治まり脱走者もなくなっ

た。 「思いきったことを申されたの」  坂田副長が後日尋ねた。

「隊が瓦解する心配もござったが、命が助かりほっといたした」

  速水小三郎が腹を斬る真似をして述べたという。速水は命を賭けていたの

だ。そんな重苦しい空気の澱むなか、行方不明の矢野原与七が百姓姿で戻って

きた。  「悪い悪い、心配をかけ申した」  陽気な一言が可笑しく全員が心から

笑い声をあげた。  「無事でなによりじゃ」

  坂田副長と速水参謀長が肩をたたきあって喜びを表している。信念を貫き

隊を去る者がおり、矢野原与七のように復帰する者もいる、凌霜隊に本来の士

気が漲った。そうしたなかで茂吉は思案していた、大鳥隊と別れ一隊となり会津

に向かおうと結論を下した。これ以上行動を共にすると更に犠牲者がでるだろ

う。それを恐れたのだ。なんとしても早い時期に会津若松に着きたかった。


 一方の幕軍の先鋒隊一千名は秋月登之助、土方歳三の両将に率いられ、四

月十九日の早朝、大鳥圭介の本軍を待たず単独で宇都宮城攻撃を敢行した。

  宇都宮は関東有数の交通の要衝である。北は奥州、会津。西は日光、鹿

沼。南は栃木、例弊使(れいへいし)。東は水戸へと縦横に街道が広がってい

た。先鋒軍の土方軍は水戸、真岡(もおか)の二街道から宇都宮に襲いかかっ

た。土方歳三は苛烈極まる指揮で戦闘に耐え切れない、自軍の兵卒を斬り捨

ててまで凄まじい攻撃を繰りかえし、わずか半日で宇都宮城を攻略した。

  政府軍の幹部の香川敬三、平川和太郎等は宇都宮城を脱出し、小山方面で

軍の建て直しをはじめた。

秘録 凌霜隊始末記(1)へ





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Last updated  May 22, 2007 09:45:46 AM
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