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長編時代小説コーナ

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龍5777

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Jun 14, 2007
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カテゴリ:暗闘
「菅沼隊士は駄目でしょうな」  速水参謀長が暗い眼差しを見せた。

初陣で負傷した膝の傷が悪化して菅沼は、高熱で喘いでいた。軍医の小野は

膝下から切断せねば助からぬと云う。

「敵に身柄をあずけますか」  坂田副長が茂吉に聞いた。

「置き捨てにせよと言われますか?」  「敵に慈悲があれば助かりましょう」

「坂田さん、一人にして下さい」  十七才の茂吉には荷の重い判断であった。

  茂吉は苦悶していた、隊長として弱気は見せられない。鬼となっても任務は

遂行する、これが課せられた務めなのだ。

「敵の攻撃はないでしょう、しばらく休まれたらいかがです。指揮は拙者と副長と

でやります」  速水参謀長が労わりの言葉をかけてくれる。 「お願いします」

  素直に茂吉は本陣にもどって行った。全身が綿のょうに疲れていた。

  陣中で坂田副長と速水参謀長が密談している。隊士たちは胸壁に身を隠し

街道を監視している。  「隊長はだいぶ疲れているょうだ」

「中岡の戦死が堪えたようですな」  二人が煙草を吸いながら語り合っている。

「副長、菅沼は何としても連れて行きましょう」

「参謀長、わしも同感じゃ、これ以上の心労はかけれまいな」

  この夜はなにも心配せず凌霜隊士は熟睡し、久しぶりの実戦の疲れを癒し

た。唐木隊長の計らいで遊撃隊が警戒をしてくれたお蔭である。

  翌朝の六時頃、芸州藩は雪辱を期し宇都宮藩の応援をえて攻勢に転じてき

た。 「来ましたな」  一晩熟睡した茂吉が精悍な顔を取り戻している。

  宇都宮藩兵が正面を担当し、芸州藩は左右の高地に兵を配している。

  芸州藩の砲撃から戦端がきられた。山頂から砲弾が降り注ぎ土砂が吹きあ

がる。会津遊撃隊の砲も応射をはじめ、凌霜隊も胸壁から猛射を開始した。

  戦闘は三時間ほど続いたが、敵の兵力が勝り徐々に後退を余儀なくされてい

た。茂吉が遊撃隊に駆けつけた。 「朝比奈隊長、今朝の敵は手強いですな」

  唐木隊長が顔色も変えずに平然とした態度で兵を指揮している。

「この小勢では守りきることは困難です。田島まで撤退しましょう、そこには

小山田さまが居られる筈」

  日光口軍事奉行となった小山田伝四郎は、田島に本営を構えている筈であ

る。  「そうしますか」  「殿軍は凌霜隊で引き受けます」

「さらば撤退の命を下します。応援として歩兵を十名残しましょう」

「それは助かります。・・・唐木隊長、お願いがありますが聞いて頂けますか」

「何なりと」  「我が隊の重傷の隊士をお連れ願いませんか」

「お引きうけいたす」  慌しい遣り取りの後、会津遊撃隊が砲撃をぬって撤退

を開始した。  「援護射撃ー」 凌霜隊の胸壁からスペンサー銃の猛射が

始まり、敵の攻撃がゆるんだ。  「撤退じゃ」  坂田副長の下知で全員が銃を

腰だめとて後退をはじめた。それを見た敵兵が喚声をあげ攻め寄せてくる。

「撃てー」  七連発の猛射で敵兵が悲鳴をあげ薙ぎ倒された。

「今じゃ」  速水参謀長が潮時とみて撤退の命令を下した。

  隊士たちが雄叫びをあげ猛烈な勢いで山頂から駆け下る、応援の遊撃隊士

もそれに続き、全員一丸となって要衝の山王峠を越え、会津領内の田島に引き

上げた。田島は横川から三里半で会津領内五万石の城下町である。

  野州との国境、山王峠を南にのぞむ最前線基地であった。

「朝比奈隊長、ご苦労でした」  本営前で小山田伝四郎が出迎えていた。

「小山田隊長、敵兵力は驚異です。ここの兵力はいかほどです?」

「全てあわせ四百名ほどです。清龍寄合組二番隊と清龍足軽組四番中隊が主

力です」  「我等を含め五百名ですか」  「どうか成されたか?」

  小山田が不審そうに訊ねた。  「この田島では守りきれません」

「馬鹿な、この田島は日光口方面での会津藩の入口ですぞ。ここを破られたら

会津の士気に影響いたす」  小山田伝四郎が顔色を変えて息巻いた。

「地形が平坦で何の遮蔽物もありません、小勢で大軍にあたる場所とは考えられ

ません」  茂吉の答えに小山田伝四郎が唐木隊長に問うた。 「敵の兵力は」

「先鋒隊が約七百、主力は一千五百名から二千名ほどかと思います」

「何と」 小山田が絶句した。そのような大軍とは夢にも思っていなかった。

「鶴ヶ城は敵の包囲下にあり、日光口からは大軍が迫り来るか」

  豪放磊落な会津武士の小山田伝四郎が、思わず天を仰ぎ見た。

「小山田隊長、凌霜隊は一日も早く鶴ヶ城に入城したいと思っております。もし

田島に固執されるなら、我等はここで失礼いたす」

  速水参謀長が剽悍な風貌をみせ断言した。

秘録 凌霜隊始末記(1)へ





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Last updated  Jun 14, 2007 09:02:26 AM
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