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Nov 22, 2007
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カテゴリ:武田家二代の野望
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「わし一人では何かと不便じゃ、誰ぞ一人あずけては貰いまいかな」

「小十郎はいかがにございます」  どうだと言わんばかりに河野がにやりとし

た。 「なにっ、小十郎が居るか」  「今は暇を持て余しておりまする」

「三月末には石山本願寺を去ることになる、それまでに参るよう伝えてくれえ」

「承知いたしました。ところで金子はお持ちにございますか?」

「それが無くて困っておる」  勘助が無精髭をさすって隻眼を瞬かせた。

 河野晋作が懐中から巾着を引き出した。

「半分だけ置いて行きます、あとは小十郎にあずけましょう」

「有り難い、拝借いたす」  勘助が珍しく剽軽(ひょうきん)な仕草で金子をしまっ

た。  「武田の軍師殿が無一文にござるか」

「仕方があるまい、己の蒔いた種じゃ」

「山本さま、御屋形さまは何で本願寺と軍事同盟を為されます」

 河野晋作には全国規模の戦略が理解できないのだ。

「わしは今の戦国大名で天下に号令する一番乗りは、織田信長ではないかと感

じておる。勿論、御屋形の力量は抜きん出ておられるが、なんせ地の利が悪い。

西に上杉輝虎、南に向かえば駿河、三河と尾張が控えておる」

「そうですな、北には北条家がございますな」

「北条家は関東制圧が目標で直接は我が武田家の脅威ではない。むしろ上杉勢

を押さえ込んでくるれる味方じゃ。しかし上杉勢が関東に進攻せねば積極的な

味方とはなりえぬ、武田家が上洛するためには本願寺との軍事同盟が必要不可

欠なのじゃ」  「成程、流石は軍師殿じゃ」

 河野晋作が感心の面持ちで異相な勘助を見つめた。確かに甲斐の四方は有

力大名がひしめき、何時、敵に廻るやも判らない情勢下にあった。

「信長と申す男は恐ろしい、権威や黴臭い仕来りや神社仏閣なんぞ、はなっから

信じておらぬ。そちにもおいおいと判って参ろうがな」

「判りましたぞ、本願寺もそれが判って参りましたな」

「その為にも、武田家との同盟を歓迎する筈じゃ」

「山本さま、吉報をお待ち申しますぞ」  河野にも勘助の説明で本願寺の思惑と

勘助が遣ろうとしている事が、朧気に判ってきたようだ。

「わしは死人(しびと)じゃ、大手をふって現われる訳にはいかぬ。小十郎が使者

となろう」  「御屋形さまには、そのようにお伝え申しあげます」

「頼むぞ」  「拙者は京に上り大殿にお会いして甲斐にもどります、必ずや

小十郎を本願寺に差し向けまする」  それを聞き勘助が無言で立ち上がった。

「ややっ、その足は可笑しい」  河野が眼を剥いた、勘助の足の引きずりが小さ

い。 「これが本来のわしの足じゃ、武田の軍師の時は大げさに化けておった」

 山本勘助が高笑いを残し姿を消した。

「驚いたお方じゃ、正体が何処にあるのか判らぬお人じゃ」

 河野晋作が驚き顔で勘助の消えた戸口を見つめていた。


 石山本願寺。それ自体が巨大な城郭であり、淀川と大和川に挟まれた要害の

地にあった。門徒衆四万余が籠城できると言われる程の規模を誇っていた。

 一向宗とは浄土真宗のことで本願寺は真宗の本山であった。本願寺第十一代

の法主(ほっす)、顕如(けんにょ)の妻が信玄の正室三条殿の妹であったことは

前にも述べたが、その意味からも武田家と本願寺の関係は深かった、越中の

一向一揆で積極的に関与してきたのもその為でもあった。

 顕如と山本勘助が本願寺で正式に会談をしていた。顕如は二十三才の青年で

紺の法衣をまとって勘助の異相を柔和に見つめている。

「元武田家の軍師、山本勘助入道道鬼にございます」

「貴方は、先年の川中島合戦で亡くなられたと聞いております」

 顕如が柔和な眸を勘助にあてがい不審そうに訊ねた。

「はい、天下静謐(せいひつ)のために偽って討死をいたしました」

「ほうー、生き返ったと申されますか?」

「宗門の敵を討ち果たし、武田家が上洛を果たすまでは道鬼は死ぬる事が出来

ませぬ」 勘助が隻眼を顕如にあてがった。  「宗門の敵とは?」

「今は上杉輝虎、これからは尾張の織田信長と考えておりまする」

 勘助は信玄の置かれた情況を語り、本願寺との軍事同盟を申し出た」

「信玄公は拙僧の義兄上(あにうえ)、よしなにお伝え下され」

 この顕如の一言で全てが決した、ここに強力な軍事同盟の成立が成ったの

だ。「これで武田家は権威の象徴たる、将軍家補佐に傾注できまする。これも、

ひとえに御仏のご加護と法主さまのお蔭と御屋形に申しあげます」

「この度は、本願寺と門徒衆に大層な寄進をなされ、この顕如が喜んでおったと

義兄上にお伝え下され」 

 時に永禄八年三月二十七日の事であった。

 勘助は本願寺あげての歓待をうけ、翌日に城郭のような門前をあとにした。

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Last updated  Nov 22, 2007 04:51:14 PM
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