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       「小栗上野介忠順」 (51)

 
「あの船は商船にござるか」

「あの艦船は全て捕鯨船にございます」

 艦長が潮焼けで赤銅色した顔を綻ばし、笑顔で答えてくれた。

「捕鯨船?」

 上野介が不審そうな顔をした。初めて聞く言葉である。

「鯨を捕獲する船のことです」

「食糧の為に鯨を捕獲いたしますか」

 上野介の執拗な問いに艦長は丁寧に応じた。

「鯨油を獲る為に半年も捕鯨船は海で暮らします。ハワイで鯨油を降ろ

し、再び鯨を追って海に戻ります」

「・・・・」  上野介が捕鯨船を見つめ唸った。

 そんな様子を好意のこもった眼差しで見つめ、艦長は去った。

 上野介はまたひとつ学んだ。

「彼等の盛んなことよ」

「殿、何と申されました」

 塚本がその言葉を理解できず訊ねたが、上野介は微かに顔を崩した。

「米国民の勇気に感動したまでじゃ。塚本、あの船で半年も鯨を追って

海で暮らすなんぞ、我等、日本人に出来るか。彼等には勇気と行動力が

ある。鎖国なんぞを国是としている間に、世界の国は発展し、我が国は

遅れをとってしまったのじゃ」

 上野介の真意は他にあった。

「列国を夷狄なんぞと蔑んでおるが、我等こそ彼等から見たら夷狄以下

じゃ。文明の何たるかを知らず、攘夷や開国なんぞを叫んでおることが

間違いの基じゃ。彼等こそが真の武士じゃ、刀槍を武士の魂なんぞと

言っておる時代ではない」

 塚本真彦は主人の言わんとする意味が、朧げに理解できた。

「左様に御座いますな。半年も我が国の武士が鯨を追って暮らす勇気

なんぞ御座いませぬな」

「葉隠なんぞを尊ぶことが間違いなのじゃ。つまらぬ意地で腹を斬る、

それが勇気と持てはやされておるが、匹夫の勇じゃ。世界を股にかけ、

風雪や嵐なぞを恐れずに行動する、彼等こそが真の勇者じゃな」

「殿、分かりました。死よりも生きる事が数倍も勇気がいることが」

 塚本真彦の顔が輝き、上野介が満足そうに塚本に視線を這わせた。

「我が小栗家の者は死ぬ勇気より、生き延びる勇気を大切に致そう」

 主従は眼を輝かせ、海原に消えゆかんとするハワイ諸島を見つめ、

未だ見ぬ米国に夢を馳せていた。

        (文明との出会い)

 訪米使節団の乗船したポーハタン号が、米国のサンフランシスコ湾に

接岸した時期は、三月九日の早朝であった。

 護衛役の咸臨丸は十三日前に到着していた。

 湾内の台場より礼砲二十発が轟々と唸り、ポーハタン号からも答礼の

砲が鳴り響いた。それに呼応し港内の諸艦からも盛大な礼砲が轟音を

轟かした。使節団は遂に米国本土に着いたのだ。

 ポーハタン号はゴールデンゲートを通過し、所定の埠頭に接岸した。

 早朝というのに埠頭には大勢の見物者が集まり、遠来からの使節団を

興味津々として歓迎してくれた。

 そこには米国海軍の軍楽隊が正装し、出迎えていたが、正使の新見

豊前守正興は、咸臨丸の乗船者との面会を望み、一行は上陸することも

なくサンフランシスコの北に位置する、メーア島に向った。

 そこには米国海軍の艦船の修理を行う造船所があり、咸臨丸は長旅

による、破損個所の修理を行っており、全員がここに宿泊していたのだ。


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Last updated  May 22, 2013 10:35:52 AM
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