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Mar 31, 2015
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「信玄の戦略」(104章)


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   (二股城に山県勢が合流する)

 この辺りは真冬でも遠江で聞こえた温暖な気候の一帯であった。

 武田勢は宿営地の中で特に日当たりの良い場所に信玄の宿舎を建てた。

 わざわざ甲斐から運んだもので、簡単に組み立てられるものである。

 内部は四畳半ほどの広さで、囲炉裏も設えてあった。

 その宿舎で休息した信玄の体調もいくぶん回復した。

 翌日の昼過ぎに、信玄の思惑どおり武田水軍が太田川を遡り、駐屯地の

近くに兵糧、武器弾薬の類を満載した五十艘の軍船が到着し、盛んに物資

の荷揚げを行っている。

 その日、勝頼の使い番が駆けつけ、只来城を陥落させ二俣城を包囲した

との知らせが届いた。

「御屋形、四郎勝頼さま遣りましたな」 

 馬場美濃守が満面に笑みを浮かべている。

「美濃守、浮かれるな。甲斐を出てから九日ぞ、御旗通り速く動かねばな」

 信玄が不機嫌な顔付をしてたしなめた。

『疾きこと風の如く、徐かなること林の如し、侵掠すること火の如く、動かざる

こと山の如し』

 この言葉が武田家の戦訓である。

「御屋形、それがしは合戦で浮かれた事なぞございませぬぞ」

 馬場美濃守が、いつもの厳つい面魂で信玄に噛み付いた。彼は勝頼の緒戦

の勝利が嬉しかったのだ、それは信玄の胸裡を知る、美濃守だけに分る喜びで

あった。それを浮かれるなとお叱りを被とは解せぬ。

「美濃、余が悪かった。許せ」  

 信玄も馬場美濃守の胸中は分る、それ故に率直に詫びた。

「御屋形が、詫びられるなら、なにも含むところはございませぬ」

 馬場美濃守信春が、具足の草摺の音を響かせ足早に宿舎を去った。

「ご免っ」  

 代わって小荷駄奉行の浅利昌種が、箱を抱えて姿を現した。

「何かございましたか?・・馬場さまが顔を赤くされておられました」

「余の軽率な言葉で気を悪くさせた、浅利、何か急用かの」

「水軍は荷を降ろし帰還いたしました。これを、御屋形さにとことづかりました」

 信玄が箱の中を見ると、熊の毛皮で作った羽織であった。  

「これは、有り難い」

 信玄が手にとり眺めている、ご丁寧にも大きな頭巾が付いている。

「浅利、礼を申すぞ、これなら鎧の上からでも羽織れるな」

「滅相な、これは古府中のお麻さまからの、差し入れにございます」

「お麻が余のために縫ってくれたのか」  

 信玄の顔に血色がもどった。

「ささ、羽織ってくだされ」  

 促され羽織った。

「これは暖かい、お麻に礼状を書かねばならぬな」
 
 信玄が上機嫌で熊皮の羽織を纏っている。

 お麻が腹違いの妹であることは、信玄のみが知っていた。

 楚々としたお麻の面立ちと母親似の眸子が懐かしく思いだされた。

(お麻は父上とお弓の娘じゃ)

 かって躑躅ケ崎館で遭った、女忍びのお弓の容貌が過った。

 そこに高坂弾正が緊張した様子で姿をみせた。

「御屋形、家康、動く気配にございます」  

「-・・・動くか?」

「浜松城に不穏な動きがあると、物見より報せがございました」

 高坂弾正が信玄を見つめた。この人物は信濃で越後勢と睨みあいの時期に

海津城城代を務めた、無類の戦上手の武将である。

「今宵は夜襲に気をつけよ、明日は見附まで進出いたす」

 信玄が驚く様子も見せず、明日の戦術を告げた。

「見附にございますか?」

「そうじゃ」

「見附から一言坂を下れば、眼の先に天竜川がございます。それを渡河すれば

家康の本拠、浜松城は直ぐにございます。決戦を成されますか?」

 高坂弾正の眼が生き生きと輝いている。

「浜松城の攻略は、遠江、三河全土を手に入れた後と決めておる。まずは

二俣城を攻略いたす、それが片付かぬと兵糧が続かぬ。余は見附から天龍川

の東を北上し神僧(かんぞう)を経て、合代島(ごうだいじま)に本陣を構える」

 信玄は逸る高坂弾正を制し、自身の戦略を披露した。

 これには信玄自身の考えがあった、二俣城は徳川の本拠、浜松城と支城の

掛川城、高天神城を結ぶ要所で、家康にとって遠江支配の要であった。

 家康は三河への対処などもあって、支城の兵力を集中出来ずにいる。

 故に浜松城防衛の軍勢は八千人余しか動員できずにいたのだ。

 信玄は家康の胸中を知り尽し、このまま二股城を攻撃すれば徳川勢は

我等の動きを眺める以外は、ないと見通していたのだ。

 それ故浜松城を目前にしながらも、二股城の攻略を企んだのだ。

「見附は天龍川を渡河した地点、徳川勢は必ずや、襲ってまいりましょう」

 高坂弾正が厳しい眼差しをみせ断言した。

「余は、それを待っておる。明日は臨戦態勢で進撃いたす」

「見附の西に一言坂がございます。襲いくるには格好な地形にございます。

恐らく徳川勢はその辺りまで押し出して来ましょう」

「一言坂か、覚えておこう」

 信玄が炯々と眼光を光らせ肯いた。

「御屋形、今宵は篝火を増やし警戒を強めまする」

 高坂弾正が足早に立ち去って行った。

「いよいよ、合戦にございまするか、気が昂ぶりますな」

「浅利、二俣城を陥せば、我等はこの地に居座り続けることができる。

甲斐の残存部隊や兵糧、武器も秋葉街道を使えば補給も可能と成る」

 信玄が満々たる自信を示している。

「早く陥さねばなりませぬな。小荷駄奉行の務めは合戦より、気が重い

ものにございます」  

 浅利昌種の言葉は本音であった。

「明日、勝頼に督励の使者を差し向けよう。それまでは気張れ」

「はっー」  

 浅利昌種が強ばった顔つきで宿舎から去った。

 本陣の幔幕の外は、信玄の旗本衆が厳重に警護し、さらに河野晋作配下の

忍びも闇にまぎれ警戒している。

 信玄は囲炉裏に手をかざし、何度も浜松城攻略の図上戦略を練っていた。

 突然、馬蹄の響きと馬の嘶きが聞こえ、

「何者かー」

 と、警護の旗本の誰何(すいか)する声が響いた。

「それがし、山県昌景が配下の海野信高にござる。火急の用で罷りこした」

「馬場美濃守じゃ、火急の用とは何事じゃ」

 馬場美濃守の戦場焼けした声が、宿舎まで聞こえてくる。

「山県勢、先刻、長篠城より戻り、勝頼さまのご陣に加わり申した」

「ご苦労、我等も二俣城付近に出る。それまでに城を陥せと三郎兵衛に申せ」

「判り申した。御屋形さまには、よしなにお伝い下され」

 慌しい、遣り取りが交わされ、馬蹄の音が遠ざかった。

 山県勢は降伏した奥三河の山家三方衆を加え、六千名で勝頼勢と合流した。

 これにより勝頼の軍団は一挙に一万四千名に膨れあがったのだ。


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Last updated  Mar 31, 2015 02:28:35 PM
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