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2017年02月26日

働く女性たち…「ダンプ姉ちゃん理恵」…駆け込み寺居酒屋ポン吉３３話

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働く女性たち…「ダンプ姉ちゃん理恵」…駆け込み寺居酒屋ポン吉３３話

ＪＲ西大路駅前近くにある「洋風居酒屋ポン吉」の店の前の大通りには朝早くから大型ダンプが走っている。そのダンプの車体はピンクに塗装されて運転手はすべて女性だった。このダンプの会社は「田中建設」で社長は４０歳の理恵だった。理恵のダンプ会社は５０台の大型ダンプと４トンダンプを１０台保有して京都府ダンプ協会の会長もしていた。

その理恵が駆け込み寺居酒屋といわれている「ポン吉」のマスターの音吉に会いにきた。音吉と理恵はその田中建設がまだ４トンダンプ３台のころに理恵が大型ダンプを１台買いたいと申し入れていたトラック会社の営業課長だった。そのころも不景気で理恵は京都にあるトラックメーカー４社の内３社から信用がないとローンでの販売は断られていた。その時に唯一営業課長の音吉の全責任として理恵に新車のダンプを売ることを半ばゴリ押しで東京本社に掛け合って理恵にダンプを売っていた。

その理恵が、
「音吉さんにあの時ダンプを売ってもらっていなかったら今の田中建設はありませんでした」
「いえいえ、それは理恵さんの人柄です。それにしても田中建設は大きくなった、いつも店の前を走るピンクのダンプを見ながらいつも理恵さんのことを思い出していました」
「実は今日相談したいのは音吉さんの店のブログや掲示板に女性のダンプ運転手の募集を掲載してほしいのです。特にワケアリの母子家庭や独身女性などです。母子家庭には母子寮、独身にも寮があり家賃は無料でそれこそバック一つで寮に入れます」
「そうですか～それはこの駆け込み寺居酒屋としても幅が増えます。しかし、ダンプというからには中型、大型免許がいるが？」
「その条件は普通免許の経験２年さえあれば中型も大型もこちらの費用で免許を取得できます。その免許取得まではなにかと仕事もあります、それに免許を取るまでは日当８０００円は保障しています」

理恵はさらにこのダンプ業界というのは男女の賃金差別はまったくなく中型免許でも２３万円、大型免許なら３０万円を保障しています。実際には早出、残業代、それに年に２回のボーナスもありこれ以上になります、さらに母子家庭には京都府建設業界が運営している保育園も無料で入れます。

理恵そのものはダンプに乗る前は信用金庫の行員で車は軽四輪しか乗っていなかった。その理恵も前の夫からいじめられて離婚をしていた。２人の子供を抱えて当時日当８０００円の田中建設の社長に拾われてダンプの修行をしていた。その後、この田中建設の社長として活躍してきた。そして、この駆け込み居酒屋のような女性にやさしいダンプ会社を目指して来た。

さらに今の大型ダンプは運転にはなんら筋肉など使わなくてもいいほど楽に運転はできますから女性の仕事にはピッタリなんです。みなさん思い思いのファッションと化粧でバリバリ働いています。音吉は、
「そうですよね～ただ女性のダンプ運転手募集だけでは人は集まりません。こうして理恵さんや母子家庭の運転手さんが元気で働いているという生の情報がなければ…」
「そうです、それで悩んでいる女性に大人気の音吉さんのブログになにかと記事を掲載してほしいと思ったのです」

こうしてポン吉のブログには現在大型ダンプの運転手で働いている母子家庭の生活や仕事の内容が次々紹介されていた。そしてなにより女性が関心がある工事現場のトイレや更衣室、それに休憩所の諸問題も画像付きで紹介されている。それは今まで男の現場では女性には耐えられない不潔なトイレが一般的で当たり前だと思われていたからだ。

理恵はこの問題を２０年に渡って大手ゼネコンや京都の中堅建設業者、それに国交省、労働局まで日参して訴えてきた。その成果はやっと実になってこのほど国交省から「女性が働く工事現場には必ず、女子専用トイレと更衣室及び休憩所を設置するように」と決まっていた。しかし、これは公共工事現場に限るという制約もあるが、理恵は京都府ダンプ協会の会長として女性が一人でも働くすべての工事現場には適用するようにと運動をまだ続けている。

音吉は、
「東京五輪まで後３年、音吉のように団塊世代の工事現場の熟練技術者、職人も７０歳を超えて大量の退職者が予想されている。こうなればどんな工事も女性の手を借りなければそれこそビルも橋もできなくなる」
「そう、音吉さんのいう通りになります。それには女性が元気に働ける環境が一番になります。建設業界はビルも橋も作るのにそこで働く女性たちの母子寮や保育園さえ作らないのは建設業界の自滅になります」

こうしてポン吉のブロクを見た女性たちはダンプ運転手に限らず、重機のオペレーター、鉄筋工、とび職、ガードマンになりたいという人まで現れてその返事に田中建設の理恵は嬉しい悲鳴を上げていた。今、建設業界はこの人手不足にロボットの活用を考えているようだが、女性を活用してその技術を後世に伝えるという考えのほうが正しいと音吉は思っていた。