あなたはなぜチェックリストを使わないのか
仕事の出来栄えが、よかったり悪かったり、ばらつきが大きいと感じたことはありませんか。特に仕事を始めてから10年未満の方にはぜひ読んでほしい1冊の紹介。あなたは1日のうち、どれくらいの比率で、まったくやったことのない仕事をしますか?ほとんどの方は、ほぼゼロだと思います。つまり、あなたの仕事は、あなた自身が過去にやったことがあり、それの焼き直しである場合がほとんどなのです。それが徐々に少しだけ仕事内容が複雑になっていたり、短時間での処理を求められるようになるだけです。そのとき、より短時間で、より高度なやり方ができるようになるための唯一の方法が、 経験を活かすということです。経験を活かすためには、過去の土台をきちんと明文化しておくことで、確実に過去やったことを活かせるようになります。この明文化したものをチェックリストと呼びます。本書は米誌「TIME」で2010年の「世界で最も影響力ある100人」に選出された、医師でありジャーナリストでもある著者、アトゥール・ガワンデ(Atul Gawande)が提言する全米ベストセラーとなった「チェックリスト」作成のススメ。本書の殆どの部分は、医療に関するお話ですので、直接的に仕事に役立つノウハウが書いてある本ではありませんが、本書を読むと、「チェックリスト」というのはすべての人に有効なのだ、と心から思えるようになる一冊です。私はこの本を読んでから、作業をするときには、チェックリスト開いてから作業するようになりました。もし該当のチェックリストがなければ、新しく作る。あれば、そのチェックリストを開いて、作業手順をチェックする。現実と合わなければその場で修正するようにしてます。それで書きためてきたチェックリストは、85種類。チェックリストは、 仕事チェックリスト.xlsというファイルにシチュエーションごとにシートを作り、その仕事の作業の時系列順にやるべきことが書いてあるだけのものです。単純にこれを見ながら作業をしていれば、一定の水準の成果が常に出せるようになります。若い人から、設計のレビューを受ける時がありますが、これもそのチェックリストに書いてあることを順番に質問するだけです。毎回同じ事を聞くのに、同じ事で答えに窮するというのは、ちょっとビジネスマンとして「アレ」ですよね。上司は、「こいつには以前にも同じ事を聞いたよな」というのは結構しっかり覚えてます。一度指摘されたことは2度と失敗しないように、ちゃんと記録して、再発防止をしないと、失格者の烙印が待ってますよ。本書の中で、チェックリスト作成の本当のコツが具体例とともに書かれてます。私が読み取れたそのコツとはたった3つ。 一時停止点(ポーズ・ポイント)を決める チェックリストのタイプ、行動のち確認/読むのち行動を決める キラーアイテムに絞る■要約現代医療に欠かせないものにICU(集中治療室)がある。しかし、ここでは複雑極まりない作業が、ひとつの遅れもなく実施されていなければならない。そうでなければ患者は死んでしまう。たとえば中心静脈カテーテルを挿人する際の感染予防の手順は石鹸で手を洗う患者の皮膚をクロルへキシジンで殺菌する滅菌覆布で患者を覆うマスク、滅菌ガウン、滅菌手袋をつけ、カテーテルを挿人する刺入点をガーゼなどで覆うひとつも間違ってはいけない。ただ、たったこれだけのこと、とも言える。しかし、医者は命をあずかっているのだ。ひともミスは許されない。こういった医療現場において、ベテランの医師がちょっとした手順を忘れてしまい、大変なことになった例は枚挙にいとまがない。私はこういった医療ミスをどうにかして防ぐことはできないものかといろいろな活動をしてきた。その中で最も効果のあったものは、チェックリストである。このチェックリストを導入使用と提案した時、多くの医師は「バカにしているのか!」と憤慨した。しかし、ミシガン州病院協会ではこのチェックリスト導入を決断した。2003年のことである。2004年のミシガン州におけるICUの感染率は全米平均をはるかに超えていたが、2006年ミシガン州のICU感染率は66%下がり、全国の90%のICUより少なくなった。これを偶然と言えるだろうか?B17 の飛行、中心静脈カテーテルの挿人、溺死しかけた者の治療など、今まで挙げてきた例を振り返ってみると、どれも根本にあるのは「単純な問題」だった。数々の要素が絡み合っているが、一つ目の例では昇降舵、一一つ目の例では無菌状態を保つこと、三つ目の例では人工心肺の準備だけに注意すればよかった。だからチェックリストのような、必要な行動を確実に行わせる方策がとても有効だった。しかし、私たちの仕事の多くは非常に複雑だ。ICUでの業務は患者一人あたり一日に平均178個あり、中心静脈カテーテルの挿人はその一つでしかない。業務一つ一つにチェックリストを作ることはできるかもしれないが、スタッフに178個のチェックリストを使わせる、というのは果たして現実的と言えるだろうか。さらに人間の体はロケット以上に複雑だ。私はこの答えについて長い間考えてきた。その答えが見つかったのは高層ビルの工事現場を見た時だった。高層ビルを建てるためには非常に複雑な手順や、様々な専門知識が必要である。一人や二人でデキることではない。しかしながら、高層ビルは次々と建てられ、それが第三次を招いたことは殆ど無い。答えは 「人」は誤りやすい。だが、「人々」は誤りにくいのではないだろうかということだった。つまり、複数のひとがチェックすることで、失敗を防ぐことができるのだ。2006年私はWHO(世界保健機関)で手術の安全性を高めるプロジェクトに参加した。そこで閲覧を許可された資料は膨大なものだった。特に手術件数が最近爆発的に増えていることを思い知った。2004年には年間2億3千万件が行われている。近年はもっとすごいだろう。手術の失敗で100万人以上が死亡しているのだ。しかし私は頭を抱えることになった。アメリカの高度な先端医療設備を整えた大病院から、新興国の滅菌室すらない手術現場までをカバーする安全な手術のやりかたというものがあるのだろうか?WHO の目標は、手術の危険性を安価に、大幅に、測定可能な形で低減させることだ。チェックリストがその答えだと証明できるほど完全な研究はなかった。だが、ジュネーブのム云議の参加者たちは、安全な手術のためのチェックリストは大規模に試してみる価値がある、ということに合意した。 チェックリストを作り、それをひとつづつ声にだして確認するたったそれだけのことをする、これが目標だった。チェックリストの文章はシンプルで明確でなくてはいけない。その業界にいる人ならば誰でも知っている言葉のみを使うべきだ。そしてチェックリストの見た目も実は重要だ。理想的には一ページに収まり、余副な装飾や色使いは避け、大文字と小文字を使い分けて読みやすくしてあるものが良い。さらに、ブアマン氏は「へルべチカ」のようなサンセリフ書休を推奨しているそうだ。誤解されがちだが、チェックリストはマニュアルではない。高届ビルの建設用であれ、飛行機のトラブル解決用であれ、全ての手順を詳細に説明するものではない。チェックリストは、熟練者を助けるためのシンブルで使いやすい道具なのだ。素早く使えて、実用的で、用途を絞ってあるという特性こそが肝要だ。そして手術用に作ったチェックリストが出来上がった。世界各国の八つの病院で実験してみることにした。2008年10月、結果が出た。三人揃ってそれを私に見せにきた。「見てください!」とアレックスは言い、統計調査の結果を私に説明してくれた。深刻な合併症の発生率は全体で36%下がり、死亡率は47%下がった。これらはもちろん統計的に有意な差で、私たちの期待をはるかに上回る結果だった。感染症は半分になり、再手術の確率は四分の三になった。3ケ月間で八つの病院で四千人近い患者のデータを取ったが、チェックリスト導入以前だったら、そのうち435人が深刻な合併症にかかっていただろう。だが、実際は277人だけだった。150人以上が重症になるのを防ぎ、そのうち27人の命を救った計算になる。研究チームの全員で病院のデータを一つ一つ精査した。どの病院でも、チェックリストの導入後は合併症率が急低下していた。しかも、八つのうちヒつの病院では、一 slJ 以トも低ドしていた。チェックリストの効果は本物だった。だが、チェックリストを導入したら、勇気、機転、柔軟性などが不要になる、というのは馬鹿げた考えだ。医療は繊細で、患者は多様だから、それらの資質は今後も医者に必要とされ続けるだろう。だからこそチェックリストのような規格や規律の重要性も受け人れるべきだ。投資家のパブライ氏は、過去15年間、四半期ごとに一つか二つ、新しい投資をしてきた。そのためには) 10以上の候補を織密に調査することが必要だ、と彼は言う。チェックリスト導入前は、投資先の選定に何週間もかかることもざらだった。見合わせるのか、それとももっと調査してみるのか、何度もミーティングを重ねて議論していた。選定のプロセスに決まった形式はなく、無秩序で、一ケ月以上検討された投資先にはとりあえず投資してしまうことが多かった。だが、チェックリストを使うようになってからは、吟味すべき投資先と除外してよい投資先を、三日目のチェックでふるい分けられるようになった。私が見てきた中でも、ひときわ洗練されたチェックリストを一つ紹介しよう。単発のセスナ機での飛行中に、エンジンが停止した時のためのチェックリストだ。このチェックリストには、エンジン再始動の方法が六つの手順に凝縮されている。燃料バルブを開く、予備燃料ポンプのスイッチを入れる、などだ。だが、一つ目の手順が最も興味深い。そこには「飛行機を飛ばせ」とだけ書いてあるのだ。パイロットは、エンジンの再始動や原因の分析に一所懸命になり、最も基本的なことを忘れてしまうことがある。「飛行機を飛ばせ」硬直した思考を解きほぐし、生存の確率を少しでも上げるためにそう書いてあるのだ。無論、チェックリストは、業務の邪魔になってしまうような、融通のきかない義務であってはいけない。どんなに単純なチェックリストでも、何度も改訂して洗練していく必要がある。航空機メーカーが作るチェックリストには、必ず作成日が記されている。常に変わっていくものだからだ。チェックリストは私たちを補佐するためのものだから、その目的にそぐわないものは不要だ。だが、私たちを手助けしてくれる良いチェックリストは、受け入れていくべきだ。だから、私たちにもできるはずだ。いや、やらなければならない。複雑化した現代に生きる私たちに他の選択肢はない。少し日を凝らせば、素晴らしい能力とやる気を持った者でさえも、同じミスを何度も何度も繰り返していることに気づくはずだ。ミスは起き続けている。今までのやり方を変えていかなくてはならない。チェックリストを試してみて欲しい。●目次序.外科医の失敗談1.複雑すぎる!2.チェックリストと爆撃機3.高層ビルの建て方4.災害への対処法、美味しい料理の作り方、そして私の仮説5.手術をもっと安全にする方法6.良いチェックリストの作り方7.世界規模のテスト8.投資で成功する方法と、今求められている人材9.助かった!■参考図書☆アマゾンで見る☆楽天で見るアナタはなぜチェックリストを使わないのか?著者:アトゥール・ガワンデ価格:1,680円(税込、送料込)楽天ブックスで詳細を見る■キーポイント★P17−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−彼らは、どうして私たち人間は失敗してしまうのかについて考えた。2人によれば、多くの場合は「無理」が原因だ。私たちは、この世界の大部分を理解することも、それに対して影響を及ぼすこともできない。科学技術の助けを借りても、私たちの肉体と精神には限界がある。人間は全知でも全能でもないので、どうしても無理なこともあるのだ。一方で、高層ビルの建設、大雪の予知、心筋発作や刺し傷の患者の治療など、私たちができることもたくさんある。そして私たちが何かをできる領域では、失敗の原因は二つだけだ、とゴロビッツとマッキンタイアは言う。一つめが「無知」である。科学は発達したが、わかっているのはまだほんの一部分だ。建設できないビル、予知できぬ大雪、治せない心筋梗塞など、私たちが知らないことはまだまだ多い。二つめが「無能」だ。正しい知識はあるのだが、それを正しく活用できない場合を指す。設副ミスで崩落する高層ビル、気象学者が予兆を見落とした大雪、凶器が何だったかを聞き忘れることなどがこれにあたる。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−★★P139−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−彼らはチェックリストを使う人たちは馬鹿だと思い込んでいるから、全ての手順を細かく書き出そうとする。脳を活性化させるのではなく、眠らせてしまうようなチェックリストを作ってしまう。一方、良いチェックリストは明確だ。効率的で、的確で、どんなに厳しい状況でも簡単に使える。全てを説明しようとはせず、重要な手順だけを忘れないようにさせる。なにより実用的であることが良いチェックリストの条件だ。だが、どんなに良いチェックリストにも限界がある、ということをブアマン氏は強調した。熟練者が複雑な工程の管理や複雑な機械の設定をするのを手伝うことはできる。やるべきことの優先順位を付けたり、チームワークを高めるきっかけを作ることもできる。でもチェックリストを渡しただけでは誰も使ってくれない。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−★★P142−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−チェックリストは長すぎてはいけない。原則として項目の数は五個から九個にしておくと良い。人間の脳が一度に保持できるのもそれくらいだと言われている。だが、ブアマン氏によれば、これは絶対に守らなければならないわけではないそうだ。「20秒しかない場合もあれば、数分の猶予がある状況もある。そのチェックリストが使われる状況に合わせて作ればいい」ただし、一つの一時停止点に60秒から90秒かかってしまうと、チェックリストはかえって邪魔になってしまうことが多いそうだ。また、ずるをしたり、手順を省いたりされやすくなる。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−★★P143(72)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−チェックリストの文章はシンプルで明確でなくてはいけない。その業界にいる人ならば誰でも知っている言葉のみを使うべきだ。そしてチェックリストの見た目も実は重要だ。理想的には一ページに収まり、余副な装飾や色使いは避け、大文字と小文字を使い分けて読みやすくしてあるものが良い。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−★■同じテーマの記事●仕事で使える心理学4:ポイント抜粋―ストレスに対応する 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