名作オペラの本質をえぐる、クルレンツィスの新プロジェクト「フラグメンツ」
コロナ禍の今年もあとわずか。 大勢のアーティストが活動を控えざるをえませんでしたが、あのクルレンツィスも蟄居状態でした(今年予定されていたベートーヴェンの第7交響曲は来年に。。。) が、この度、新プロジェクトが始動しました! あるオペラ作品のエッセンスとなる名場面を抜き出して映像化した「フラグメンツ」というシリーズです。「こういう時こそ、一つの作品にじっくり向き合える」と語るクルレンツィス。本当ですよね。こういう時の過ごし方でこの後が決まる。 第一弾は「椿姫」。彼の「椿姫」はロバート・ウィルソンの演出でペテルブルクやルクセンブルクで上演され、評判になっていろいろな賞を取りました。 私は2018年にルクセンブルクで見たのですが、ウィルソン演出は好きになれませんでした。なんだか冷たいし、意味不明(私にとっては)。 今回の「フラグメンツ」、試聴させていただきましたが、私はこの方がずっと作品に迫っていて好きです。 取り上げられた曲は、第3幕の前奏曲からヴィオレッタのアリアまで。20分足らずですが、確かに作品の本質的な部分。ヴィオレッタの死を暗示する悲しい前奏曲、死を口にする医師と女中、ジェルモンの手紙を読み、希望と絶望に翻弄されるヴィオレッタ、そして作品のタイトルである「道を外れた女 La traviata」が入ったアリア。。。凄まじい孤独と透徹した音楽。クルレンツィスの音楽も凄まじいばかりの美しさでした。 ヴィオレッタ役パブロヴァは、彼の「椿姫」です。ルクセンブルクの「椿姫」の主役も彼女でした。素晴らしかった。 以下にソニークラシカルからのプレスリリースを貼り付けます。一番最後に、トレイラーも貼り付けておきますので、ぜひご覧ください。 世界各地がコロナ禍の真っ只中で、今注目の指揮者テオドール・クルレンツィスとムジカエテルナがソニー・クラシカルとの新プロジェクト「フラグメンツ(断章)」を発表。 様々な作曲家による一連のオペラの場面とアリアを録音したオーディオと映像によるシリーズは12月4日にヴェルディ「椿姫」の一場面で幕を開ける! プロジェクト "Fragments(フラグメンツ/断章) "は、サンクトペテルブルクにあるムジカエテルナの本拠地「Dom Radio*」において、コロナによるロックダウン中に録音された象徴的なオペラのシーンの数々を収録したものです。テオドール・クルレンツィスと音楽家たちは、彼らの特徴である完璧主義と献身をもって、演奏された名曲の真の表現力を捉えるために、スタジオでのリハーサルと録音に何時間もの時間を費やしてきました。*ロシア語で「放送会館」の意味。1912-14年に建造され、1932年からはレニングラード放送局が置かれた。録音やリハーサルにも使われる。クルレンツィスとムジカエテルナが2016年にマーラーの交響曲第6番を録音したのはこの放送会館のスタジオであった。録音されたシーンの音楽は、様々な映像作家によって映像化され、音楽の背後にあるコンセプトを反映したショートフィルムが制作されます。 第1弾は、ジュゼッペ・ヴェルディの歌劇「椿姫」からの抜粋で、実験映画やビデオアートを専門とする映像作家チーム「ノワール・フィルムズNOIR Films」(サンクトペテルブルク)とのコラボレーションによるものです。フラグメンツ第1弾「椿姫」は2020年12月4日公開予定。続くシリーズは2021年中に発表されます。 オペラは、観客に与える影響力という点では、音楽のジャンルの中でも最も強力なもののひとつであると同時に、最も脆弱なもののひとつでもあります。現在、世界中のほとんどのオペラハウスのステージは閉鎖されています。今回のコロナ・パンデミックは、多くの人や状況に左右されるこのジャンルの本質的な特徴である脆弱性を浮き彫りにしました。 ムジカエテルナのアーティスティック・ディレクター、テオドール・クルレンツィス:「これは私が長い間夢見てきたプロジェクトです。自分の思いどおりに音楽を作る時間がたっぷりあるときにオペラを作ること、それも3日間でいかに慌ただしく作るかということではなく、作品の本質だけに注意を払って……。だから私は世界中の歌劇場が閉館しているこの時期に、この機会を利用して創造的に音楽を作ることにしたのです。今回のプロジェクトは、アリアではなく、様々なオペラの場面(シーン)をまとめたものになります。音楽のメインストリームや音楽業界という祭壇の上で犠牲にされてきた美しさ、豊かな味わい、色彩を取り戻すことを目指します。」 シリーズ第1回目の録音は、ジュゼッペ・ヴェルディの「椿姫」からのセレクションです。テオドール・クルレンツィス指揮するムジカエテルナは、第三幕の前奏曲とヴィオレッタの有名なアリア「過ぎし日よ、さようなら」を録音しました。このアリアを歌うのは、2016年にペルミ歌劇場でロバート・ウィルソン演出、テオドール・クルレンツィス指揮によって新演出上演された歌劇「椿姫」の公演**でヴィオレッタを演じて国際的な注目を集め、以後、ボリショイ劇場、エルプフィルハーモニー、ルツェルン音楽祭など主要なオペラの舞台に出演しているロシアのソプラノ、ナデージダ・パヴロヴァ。批評家は「歌唱の美しさとプリマドンナの輝き」(オーストリア日刊紙『デア・スタンダード』)を評価し、スイスの有力紙『ノイエ・チューリッヒ・ツァイトゥング』は彼女の「テッシトゥーラの幅広さ」を称賛しています。アンニーナとグランヴィル医師のパートは、ムジカエテルナ合唱団のソリスト、ユリア・サイフルムリュコーヴァとヴィクトル・シャポヴァーロフがつとめます。 **ペルミ歌劇場でのプレミエは2016年6月17日、ディアギレフ・フェスティヴァルにおいて。アンリミテッド・パフォーミング・アーツ(デンマーク)、リンツ州立劇場(オーストリア)、ルクセンブルク・グランド劇場(ルクセンブルク)による共同制作。 ソニー・クラシカルとの専属契約のパートナーシップの下、テオドール・クルレンツィスとムジカエテルナは、モーツァルトの「ダ・ポンテ・オペラ3部作」、チャイコフスキーの『交響曲第6番「悲愴」』、パトリツィア・コパチンスカヤと共演した『ヴァイオリン協奏曲』、マーラーの『交響曲第6番「悲劇的」』とストラヴィンスキーの『春の祭典』、パーセルの『インドの女王』(映像)などを録音しています。2020年春にリリースされたベートーヴェンの『交響曲第5番「運命」』は、ベートーヴェンの生誕250年を記念する重要なアルバムと位置付けられています。ドイツの『ヴェルト・アム・ゾンターク』紙は「21世紀のための第5番」と評し、イギリスの『タイムズ』紙は「親しみやすさを吹き飛ばし、この名曲に込められた革命的な力を新たに示唆するような扇動的なアルバム」と評しています。今回のリリースに続き、2021年にはベートーヴェンの『交響曲第7番』が登場する予定です。 フラグメンツ パート1「椿姫」 ヴェルデイ:歌劇「椿姫」第3幕 前奏曲、シェーナとアリア トラックリスト] 1 前奏曲 Prelude (03:50) 2 アンニーナ?Annina? (02:05) 3 なんて親切なの、よい時に私のことを考えてくれます! Quanta Bontà...Pensate a Me Per Tempo (02:15) 4 元気を出してください Or Fate Core (01:13) 5 貴女には約束を守っていただいた、決闘が行われました! Teneste la Promessa...la Disfida (01:48)6 さようなら、過去の楽しく美しい夢よ Addio, del Passato Bei Sogni Ridenti 05:57) [映像制作]ノワール・フィルムズ(サンクトペテルブルク)[演奏]ナデージダ・パヴロヴァ(ソプラノ/ヴィオレッタ)ユリア・サイフルムリュコーヴァ(メッゾ・ソプラノ/アンニーナ)ヴィクトル・シャポヴァーロフ(バス/グランヴィル医師)ムジカエテルナ指揮:テオドール・クルレンツィス[収録]2020年、サンクトペテルブルク、Dom Radio(放送会館)【リリース(配信)スケジュール】2020年12月4日よりiTunesほか各デジタルストアにて、オーディオアルバムと映像が全世界同時配信予定トレイラーはこちらです。「フラグメンツ」第1弾「椿姫」トレイラー