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カテゴリ:災害・防災
陸前高田市が今月市議会などに示した東日本大震災検証報告書案では、一次避難所全施設の被災状況と犠牲者数をまとめている。
推計犠牲者は303~411人おり、市民会館や市民体育館での多さが改めて浮き彫りに。 111人が犠牲となった市職員の行動も整理している。 案では避難所で多数の犠牲者が出たことに「痛恨の極み」としている中、想定外の状況も視野に入れた避難体制をどう構築するかなど、今後は教訓を生かした防災施策が問われる。 同市の死者は1556人に達し、今も207人の行方が分かっていない。 今回の案では震災前に市が指定した一次避難所の被災状況と犠牲者数を表にまとめている。 市指定の一次避難所67カ所のうち38カ所が被災し、犠牲者は9カ所で計303~411人。 その上で「安全とされていた一次避難所で多数の犠牲者が生じたことは、痛恨の極み」としている。 この犠牲者数は、それぞれの一次避難所で生存した人からのヒアリングによるもの。 市は「複数の証言からまとめたものであり、必ずしも正確な数値を示すものではない」とするほか、数値のない避難所では、現時点で犠牲者が確認されていない。 指定避難所は、県が平成16年度に公表した津波浸水予測図をもとに、18年に地域防災計画の見直しを行って地区ごとに一次避難所を定めた。 津波浸水想定区域内には3カ所(市民会館、市民体育館、県立高田病院)、津波想定区域外に64カ所を指定した。 修正案では、指定経緯も解説。市民会館は1m未満、市民体育館は2m未満など上階は浸水しないと想定され、津波避難ビルの考え方に基づき指定されたとまとめた。 一次避難所で犠牲者が発生した要因は ▽安心感がありさらなる避難を行わなかった、またはさらなる避難開始が遅れた ▽海や津波の状況を目視で確認できず、さらなる避難開始が遅れた ──などと分析。 一方で被災した一次避難所でも避難者が助かった施設があることに関しては、海や津波の状況を目視確認できたことや、裏山・高台がすぐ近くにあった地理的な特性にふれている。 また、修正案では津波襲来時における市職員行動をまとめた記載もある。 震災発生時には443人(嘱託・臨時職員含む)が在籍していたが、111人が犠牲となった。 所在場所別をみると、市庁舎やその周辺での犠牲者は11人で、屋上に逃げた生存者は77人。 犠牲者は情報収集や災害対応にあたっていたと考えられるほか、市民を誘導しようと犠牲になった職員もいるという。 市民会館での犠牲者数は最多の61人で、生存者は5人。 会館内には教育委員会事務局があり、通常時は26人の市職員が勤務していたほか、確定申告業務の従事職員も多くいた。 大津波警報発表とともに近隣の館の沖公園に避難していた市民を誘導しながら市職員も一緒に避難したが、3階建ての施設は完全に水没した。 案では「結果的に市庁舎に逃げた人の多くは助かり、市民会館に逃げた人の多くは犠牲となったが、避難当時そのような結果は誰も予想し得なかった」としている。 また、職員生存者1人、犠牲者23人の市民体育館は屋根近くまで浸水。 市民体育館従事職員2人のほか、高田地区本部が同館に設置されていたことから、同地区本部員に指名されていた4人が駆けつけ、情報収集などを行っていた。 さらに併設の中央公民館と図書館、博物館から各6人が避難していた。 このほかの犠牲者をみると、業務場所や地区本部への移動中が11人。消防団活動場所が3人、出張・勤務外等は2人となっている。 震災後も余震や津波注意報が相次ぐ中、市は24年度に高台避難場所を選定した。 浸水区域外で地震災害に強いかや、避難路に危険個所がないかなどを検討。 想定を超える津波襲来も視野に入れ、さらに高台に移動できる「二度逃げ」が可能かも考慮している。 修正案に関しては22日(火)の市議会復興対策特別委員会での議論をふまえ、庁議で最終内容を決定。報告書は概要版も作成し、8月中をめどに議会、各戸配布を見据えるほか、避難マニュアル作成に向けた地区別の意見交換会も開くことにしている。 (東海新報より) ------------------------------ 報告書案は震災の被害の状況を具体的に分析する重要な記録。 ヒアリングによる一次避難所全施設の被災状況など、今後への教訓となる記述も多い。 一次避難所で犠牲者が発生した要因をしっかりと認識・共有した上で街づくりや防災計画を進めることは多くの犠牲に報いることにもつながるはずだ。 津波襲来時における市職員行動についても分析されている。 特に犠牲となった職員の多くが情報収集や災害対応にあたっていたとされる点、市民を誘導しようと犠牲になった職員もいるという点などは今後の災害の際に職員がとるべき行動に影響を与えることになる。 想定外を想定外で終わらさない努力は、この経験を次世代へ伝える上でも重要なこと。 可能であればニュアルに頼らない「逃げる文化」が根づいていけばいいのだが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.07.19 02:39:56
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