彩球アンプ工房製品 6AK5Wヘッドフォン兼パワーアンプ 設計編
2/3の日記で書いた、彩球アンプ工房の製品である、ヘッドフォンとスピーカー兼用のアンプ製作に取り掛かる。5687SRPPアンプは私用のため、時間がある時に少しずつ進めていくとしよう。設計ポリシーは、世の中に出回っている数が豊富な真空管で、ヘッドフォンとスピーカーの両方で再生音が楽しめる、ミドルクラスのアンプである。再生音は鮮度が高く、変な色付けが少なく、ダイナミックで充実度の高い音質を目指す。聴いていて疲れないのは、やはりシングル・アンプ。プッシュプルのように、DC・ACバランスを整える回路が必要ないのも利点だ。ここで真空管であるが、6AK5W/5654(6AK5,5654,6968,WE403B,CV4010)にする。同等管が豊富で入手も容易、\500-前後で買える手軽さがある。測定器にも使われた真空管なので、ノイズの面でも考慮されているのがポイント高い。データシートを見ると、ヒーターは6.3V175mAと省エネ、gmは5mS前後と使いやすく、出力トランスは10kから15kΩに最適負荷があり使いやすそうである。また、三結時のプレート特性が綺麗なカーブを描いている。後で述べるが、三結で設計を進める。ΔiとΔvの関係から歪が少ないロードラインで、適切だと思われるのを引いてみた。下図の赤線が、14kΩのロードラインである。14kΩとは一般的でないが、一次7kΩのトランス二次側に、2倍の負荷を接続して対処する。一次14kΩのトランスは売ってはいるが、高価だし高域の特性が高い方まで伸びていない。では二次側に倍の負荷を繋げるとどうなるか?低域のレスポンスが低下し、低域カットオフ周波数が上がってしまう。これを終段三結で、低インピーダンスでドライブする事で補う。また、マイナーループのNFBで終段のインピーダンスを更に下げて、低域の拡大を図る。6AK5Wの動作点は、Ep:160V、Eg:-3.5V、Ip:10mA。スクリーングリッドの耐圧を5Vオーバーしているが、スクリーングリッド供給電圧は180Vmaxなので、大きな問題は無かろう。上記負荷でEg:-3.5Vを中心に13Vp-pで振ると、出力は500mWとなる。トランスの損失を加えると、450mWほどであろう。100dBのヘッドフォンなら、鼓膜が痛いほどの大音量。能率90dBのスピーカーなら、BGMに最適な音量である。ここいらで回路をup。初段はカスコードで、次のエミッタフォロワで受け、6AK5WをA2級領域まで強力ドライブ。全段直結である。電源はチョーク・インプットとし、充実度のある濃い再生音を目指している。6AK5Wは傍熱管であるため、ヒーターが暖まるまでIpが流れず、その間回路電流がチョークの臨界電流以下だと、B電圧はコンデンサ・インプットの無負荷時電圧付近まで上昇してしまう。それを防ぐため、シャント・レギュレータから電源供給する構成とした。シャント・レギュレータは、アースに流れる電流が常に一定なので、ノイズにも有利である。クロストーク対策のため、その出力を左右別のチョークに分け、LRに電流を供給する。P-G帰還と、初段ソースへマイナーループのNFを掛け、6AK5Wのインピーダンスを極限まで下げている。入力の音量調整ボリュームは、11ステップのL-PAD式アッテネータ。20kΩと低くする事で、初段FETの入力容量による高域の減衰を防ぐ。ヘッドフォン・アンプでここまでやるのは、彩球アンプ工房だけだろう。明日はトランスの配置を確認する予定だ。