9月28日に、吉良よし子参議院議員の事務所で、ALPS処理水のレクチャーに同席
ALPS処理水に関する「連載」の続きです。 これまでの目次。1.緊急アップ! フクイチのALPS処理水に関する説明・公聴会の情報2. 経産省が「公聴会」を採用した理由と、スリーマイル原発事故の前例3. ALPS処理水の処分に関する「説明・公聴会」の開催決定に至る経緯4. フクイチのALPS処理水の扱い~タンク用地と137万t容量~5. フクイチ・ALPS処理水の扱い~処分方法と準備期間~6. ALPS処理水の最終処分~経産省の考える「落としどころ」と理屈を深堀りする~7. フクイチ・ALPS処理水の扱い~地上保管を継続する具体案~8. 説明・公聴会の前提が変わってきた、フクイチのALPS処理水 9. 緊急アップ! 看過できない経産省の「説明」~ALPS処理水を「汚染水ではない」と断言して良いのか~ 10.ALPS処理水の扱い~私が海洋排水に反対する理由~ 11.ALPS処理水の海洋放出に反対~市場構造の変化も、核災害による被害~ 12.フクイチ・ALPS処理水の扱いに関する公聴会の動画と意見~意見送付締め切りは9月7日まで延長~13.ALPS処理水の含有核種・濃度は、小委員会にどのように知らされていたのか14.場によって、発言と沈黙を使い分ける開沼博准教授のズルさ「説明・公聴会」の開催が決まって以来、公式資料に基づいて様々な情報を追いかけ、公聴会にも意見を送り、イイノホールの公聴会も傍聴しました。 その過程で色々な事が分かり、多くの疑問も生まれました。 ブログやツイッター等では書いていませんでしたが、この間の事情は吉良よし子参議院議員(2013年7月初当選・東京選挙区・日本共産党)に適宜、連絡・お知らせしていました。 それまでの経緯を踏まえて、吉良議員から「9月28日に、ALPS処理水について、レク(レクチャー)を受ける事になった」と連絡を受けました。 そのレクには私も同席させて貰い、自作の資料やまとめに基づいて、約30分間、質問できたので、当記事は、その内容をまとめたものです。 尚、レクに至る経緯等は別記事に書きました。(リンク)9月28日のレクに至る経緯~迅速に動いてくれた吉良よし子参議院議員~ ポンチ絵や写真を含めて、当記事の無断転載・引用は絶対に止めて下さい。レクの概要と参加者日時:9月28日・金曜・10~11時場所:参議院議員会館5階・509号室・吉良よし子事務所事務所側参加者:吉良議員・秘書のO氏・私(春橋)省庁側参加者:経済産業省 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 原子力政策課 原子力発電所事故収束室 課長補佐 W・M氏:原子力規制庁 原子力規制部 東京電力第一原子力発電所事故事故対策室 管理官補佐 K・T氏:同 研究炉等審査部門 管理官補佐(総括担当) K・M氏:同 F氏吉良事務所から、経済産業省宛に提出された質問1.福島第一原発に貯蔵中のトリチウム水について以下●「保管状況と貯蔵の見通し」「ALPSで除去した後の汚染水の検証」「改良型ALPSの検証」「処分における今後の方向性」●公聴会での意見を受け、処分における今後の方向性2.もんじゅの燃料取り出しについて以下●「取り出しの安全性について」「抜き取った後の冷却剤の処理」●今後の方向性、安全性の確保 これらの質問に、経産省だけでは答えられないということで、規制庁も来ることになったそうです。 高速増殖原型炉「もんじゅ」が質問事項に入っているのは、これまでの経緯の結果です。本記事は、これまでの経緯や「もんじゅ」に関する事は省いて、「福島第一原発のALPS処理済み水」について書きます。経産省・規制庁からの回答と、吉良議員の質問 先ずは、経産省と規制庁が、吉良事務所からの質問に回答しました(以下、「」内の文言は全て要旨。録音はしていないので、メモと記憶に頼っています。又、必ずしも、この順番通りに進んだのではなく、遣り取りが何回か続いた場合も有ります)。 青い文章が質問、赤が回答・説明です。規制庁 K・T氏「溶接タンクを順次建設中で、容量に合わせて水処理を行っている。当面は、タンク増設のペースと、水の増加ペースが追いかけっこのような形で続く。タンクの容量の限界は、今のところ、137万tと見積もられている」(別紙を提示しながら説明)。原子力規制庁が提示した資料「ALPS処理水は、出口水をサンプリングし、大まかな傾向を把握している。処理前の水に関しても、様々な濃度が有り、核種を除去する為に必要な吸着塔の交換も一様ではない為、処理水の濃度にある程度のバラつきはある」「ALPSの性能を判断する基準は、告示濃度を越えているか否かで見ている。告示濃度を越えていなければ、性能は確保されていると判断される。既設・増設・高性能ALPSとも、性能は確保されていると判断している」経産省 W・M氏「今後の方向性について、資源エネルギー庁から回答する。タンク毎の処理水の濃度は、今は把握していない。処分方法が決定した時点で、改めて、東電がサンプリングする事になると思う。但し、17・18年度に一部タンクについては計測している」「公聴会での発言や、送付されたもの、合わせて約180の意見を頂いている。ご意見を分類し、小委員会で議論していく。先ずは、最も多くのご意見を頂いた『トリチウム以外の核種』について議論し、順次、その他のテーマについて議論していく事になると思う。 又、ご意見は項目ごとに分類して公開し、意見本文も、個人情報等を除いて公開する予定である。整理に時間がかかっており、次回小委員会では分類の概要程度になると思うが、お示しする予定」吉良議員から質問「処理水の処分方法を決断した後で、タンク内の処理水について調べるのは、順番が違うのではないか。処分方法を判断する際の前提となる大事な情報なのだから、先に調べて公表するべき」経産省 W・M氏「その点は多くのご指摘を頂いたところである。申し上げたように、17・18年度に一部タンクについては東電で分析している。『17・18年度に調べた結果』『タンク群毎の計測結果』『タンク群毎の今後の計測スケジュール』は、10月1日に予定の次回小委員会で東電が説明する予定になっている」 吉良議員からの質問は一つだけではないのですが、記事を分かり易くする為に、まとめています。私(春橋)からの質問と、(主として)経産省の回答 10時半頃から、私の発言の順番になりました。 先ず、自己紹介し「組織ではなく、個人で動いている」「小委員会は全て傍聴している」「公聴会には意見を送付した」「10月1日の小委員会の傍聴登録も済んでいる」(27日の夕方に経産省からメールが来たばかり)事を伝えました。 私は、前日の夜に訊きたいをメモにまとめ、役に立つと思われる資料を持っていったので、適宜、自分で用意した資料を提示しながら質問しました。①「第一回小委員会の資料2-2に掲載の処理水の性状について。処理水の濃度は、1リットルあたり、Sr90で最大1000ベクレル、Cs137で最大100ベクレルと記載されている。Sr90の告示濃度は30ベクレル、Cs137は90ベクレル。処理水の濃度の説明は資料配布のみで、告示濃度との比較も含めて、口頭では説明されていない。公聴会用資料にも未掲載。これで、委員や国民に説明したと言えるのか」②「ヨウ素129について、小委員会や公聴会用資料で全く触れていなかったのは何故か」 私が提示した資料の拡大(第一回・小委員会資料2-2・15ページより、キャプチャ)経産省 W・M氏「資料の作り方については反省している。公聴会でのご意見を踏まえて、トリチウム以外の核種から説明と議論を進めていく予定」③「9月22日付けの河北新報が伝えた記事について確認したい。この記事によると、『東電は今年2月から、タンク群毎に処理水の濃度を調べている』との事だが、小委員会の事務局は、これを把握していて、小委員会でも説明用資料でも触れなかったのか」経産省 W・M氏「繰り返しだが、説明の仕方と資料の作り方については反省している。現時点で分かっている範囲で、タンク群毎の計測結果と、今後の計測スケジュールを、次回の小委員会で東電が説明する予定」私「規制庁は、『2月から、タンク群毎に計測している』ことを把握していたのか」規制庁 K・T氏「把握していない」私「現地の(保安)検査官事務所や、福島第一を担当している田中知委員も知らなかったのか」規制庁 K・T氏「その通りだ」④「2017年3月の三菱総合研究所の報告書『平成28年度発電用原子炉等利環境調査(トリチウム水の処分技術等に関する調査研究)』が小委員会の資料として提出されていないのは何故か。 この報告書の『はじめに』には、『福島第一原発のトリチウム水の長期的な取り扱い方法の決定に向けた今後の検討(多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会における検討)に資するよう、必要な調査を行った』と記載されている。小委員会の検討に資する為の資料なのだから、小委員会に提出するのが当然ではないのか」(リンク)報告書へのリンク私が提示した資料(PC画面よりキャプチャ)経産省 W・M氏「私個人は、この報告書を初めて見たので、どのような扱いになっているのか、今はお答えできないが、委員会や公聴会での説明の仕方や資料の作り方は反省している」私「小委員会用の資料を見た事が無いというのもおかしな話だが、知らない事を追及しても、時間の関係が有るので、先に進む」⑤「三菱総研の報告書を読んで、かなり勉強させて貰った。この報告書には、1リットル当たりのトリチウムの濃度基準に関して、『EUやフランスの飲料水基準が100ベクレル』『カナダの電力事業者は自主的に100ベクレル未満での放出を公約』『カナダのオンタリオ州の飲料水諮問委員会は、20ベクレルを提案』等の記載があった。 公聴会用資料には、『告示濃度6万ベクレル』『サブドレン等の汲み上げ水の放出基準1500ベクレル』等、大きな数値の基準ばかりが記載され、より小さな・厳しい基準が記載されていない。基準値を恣意的に選んでいるように見える」経産省 W・M氏「恣意的に選んでいるのではない。説明の仕方や資料の作り方は反省している。トリチウムの濃度基準についても、公聴会でご意見を頂いており、その点も小委員会で議論する予定」⑥「核災害で発生した放射性廃棄物を、希釈するとは言え環境中に放出する事は、ロンドン条約違反にならないのか。又、違反にならなかったとしても、それとは別に国際世論の反発を招く可能性も有る。外務省は小委員会ではオブザーバー扱いで、プレゼンをしておらず、国際法や国際世論という、海外の視点からの検証がされていない。処理水の扱いについて、国際的な視点からは検証しないのか」経産省 W・M氏「ロンドン条約との関係についても、ご意見を頂いているところであり、ご指摘の点は、今後議論されることになると思う」⑦「小委員会でも。説明用資料でも、タンク容量は最大137万トンという数字が繰り返されていたが、全てを貯留分としては使えない筈。 5月18日に開催された『第60回 特定原子力施設監視・評価検討会』で資料1として東電が提出したタンク使用予定によると、『ALPS処理前に一次貯留するタンクとして2万㎥』『地下水流入量の上振れ等のリスク考慮分として9万㎥』という記載がある。 これらを踏まえると、137万tの内、11万tは貯留分としては見込めず、実質的な貯留可能容量は126万tになる。これらの数値を資料に明示しなかったのは何故か。それとも、エネ庁はリスク考慮分の9万tも通常の貯留容量として見込んでいるのか」経産省 W・M氏「137万t容量が本当の上限かどうかも、検証が必要なところ。必ずしも、137万tが絶対の数値だと決まっているものではないと理解している」(春橋私見→ 経産省の担当者は、私が提示した資料を一生懸命に読んでから回答しており、監視・評価検討会で説明された数値を知らないようでした。もっと突っ込みたかったのですが、レクは追及の場ではないので、先に進みました)。⑧「山本委員長は、『除去できる核種は可能な限り除去するのが、処分の前提』である旨をぶら下がり取材で発言していた。とは言え、ALPS処理待ち水(ストロンチウム処理水)の処理は完了しておらず、又、2020年度以降、スラリーの処理が始まり、ALPSで処理すべき新たな汚染水の発生も見込まれる(資料を提示)。ALPS処理水を可能な限り綺麗にすることは必要だが、現状のALPS処理水を更に綺麗にしていくスケジュール感を示せるのか」私が提示した資料 「第7回 特定原子力施設放射性廃棄物規制検討会」(18年7月23日)の資料2をキャプチャ https://www.nsr.go.jp/data/000240019.pdf経産省 W・M氏「再浄化に関する考え方は、10月1日の小委員会で東電が示す予定になっている」⑨「これは、私が個人的に作っているグラフだが、9月半ば時点で、現状のタンク貯留量は約111万。先程の126万tを上限として考えると、残り容量は15万t程度。今年は月間7000t弱のペースで増加しているから、このままのペースで進むと、2020年の夏から秋頃には計画上の貯留容量上限に達する。エネ庁は、『小委員会で議論できる期間』がどのくらいあると考えているのか」経産省 W・M氏「私どもは議論に期限を区切る事は考えていない。繰り返しだが、先ずはトリチウム以外の核種について議論し、その後、他の点について議論していく。議論は、出来るだけ急ぐ」私「確認だが、『期限は設けないが、出来るだけ急ぐ』という事で良いのか」経産省 W・M氏「その通りだ」⑩「小委員会の結論は汚染水処理対策委員会で了承される事になると思うが、その後はどうなるのか。関係閣僚等会議で決定されるのか。それとも、東電の判断になるのか。処理水の扱いを最終的に判断する責任は何処にあると考えているのか」経産省 W・M氏「汚染水処理対策委員会で承認されるのはその通りだが、その後の事については、検討が必要なところ。何れにしても、国の方針を示すことが必要だと考えている」私「その『国』とは、具体的に何を指すのか。汚染水処理対策委員会で承認された後、経産大臣が示すのか。それとも、関係閣僚等会議で示すのか。或いは、原子力災害対策本部長、つまり、内閣総理大臣の名前で示すのか」経産省 W・M氏「それも検討が必要で、決まっていない」私「国策として、東電が従うという事か」経産省 W・M氏「国策と言うのではないが、国の方針を示すことが必要と考えている」⑪「敷地を確保してのタンク貯留に関して確認したい。 このポンチ絵は、私が送付した意見をまとめたもの。フクイチの敷地南側に敷地を拡張し、タンクを設置するのが、既設タンクとの接続の容易であるし、時間的にも建設のリソースも最も少なくて済むと思う。このような考え方も一つの案になるのか」私が提示した資料経産省 W・M氏「一つの案だと思う。敷地の確保も、第一原発周辺だけではなく、他の場所についても意見を頂いている。ご意見の一つとして承る」⑫「第4回小委員会での北海学園大学の濱田教授のプレゼンや、関谷准教授の風評被害に関するプレゼン、水産庁提出の資料等、小委員会で行われた経済的影響に関する説明が、公聴会用説明資料からはごっそりと抜け落ちているのは何故か」経産省 W・M氏「経済的影響については、どのような方法でも免れない事は記載させて頂いている。今後、より丁寧に分かり易い形で示していく」三つの要望と、改めての確認 時間が迫っていたので、再質問したい事はありましたが、最低限、確認したい事は確認できたので、最後に、以下の三つをエネ庁に要望しました。 ●今後の小委員会はネット中継を入れ、録画も残してフルオープンにして頂きたい。国民がプロセスを共有できる形にして欲しい。●2回目の公聴会は是非、開いて欲しい。夜間の開催までは求めないが、週末昼間に開催して欲しい。●三菱総研の報告書は、小委員会に資料として提出するべき。 「以上の三点は、国民の一人として、強く要望します」と発言して、吉良議員にお返ししました。 この後、吉良議員からは、エネ庁・規制庁の担当者に以下の発言が有りました。吉良議員「今の3つの要望には確りと応えて欲しいと思います。私は先日、福島県に行きました。現地の人達からお話を伺う中で、特に漁業関係の方から、切実な訴えが有りました。試験操業を続けてきて、少しずつ信用や売り上げが回復してきている。この時期に、海洋放出が決められてしまえば、今迄の努力が全て水の泡になる。これは風評ではなく、実害だ。海洋放出は絶対にしないで欲しいと、強く訴えておられました。 また、漁協の方達が仰っていたのは、地元だけの判断にしないで欲しいということです。『地元漁協がOKしたから』というような話にはしないで欲しい。福島だけではなく、全国の問題として考えて欲しいということでした。 小委員会での検討は、結論ありきではないということで間違いないですね」経産省 W・M氏「私どもも、地元だけの問題ではないという認識は強く持っています。委員会での検討は結論ありきではなく、処分方法は決まっていません」 この確認を取ったところで、時間切れとなりました。 既に応接室兼会議室の扉がノックされて時間切れの催促がされていましたが、その中でも、吉良議員は急いで切り上げようとせず、最後までエネ庁の担当者に確認し、私には「もんじゅの件は良いですか?」と気を遣ってくれました。 規制庁・経産省の担当者が退出すると(私もお辞儀をして見送りました。経産省や規制庁の役人にお礼を言って頭を下げるとは! でも、礼儀ですからね)、吉良議員も「私、次に行く所が。今日、金曜行動に行きますから」と言うと、握手をして直ぐに出て行きました。 その後、同席した秘書さんと若干お話しし、「10月1日の小委員会が、次の注目点だ。規制庁がタンク群毎の計測を知らなかったのには、驚いた」というような話をして、私も事務所を辞去しました。 その日の夕刻、このレクの事は、金曜行動の議事堂前と希望のエリアでお話ししました。議事堂前では、吉良議員とも一緒になったので、スピーチには吉良議員へのお礼も織り込みました。 吉良事務所でフクイチ関係のレクを行うのは2度目でした(前回は16年の6・7月)。改めて、金曜行動で吉良よし子さんと知り合えた事は値千金だったと思います。 最後に、吉良事務所内と、吉良さんの写真です。レク当日は、本当に時間ギリギリで、写真を撮っている時間は有りませんでした。↓ 吉良事務所の応接室兼会議室の片隅のコーナー。↓ 街宣準備中の吉良さん(9月27日の夕刻に恵比寿で撮影) 春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)※ 10/12 別記事「9月28日のレクに至る経緯~迅速に動いてくれた吉良よし子参議院議員~」へのリンクを追加。