|
カテゴリ:Essay
そういうワケで、1年間1万円の会費を払う高島屋ゴールドカードを作ることにしたMizumizu。 手続きは新宿店舗で行ったのだが、ポイントの仕組みや付帯サービス――例えば旅行保険など――の説明も丁寧だった。保険サービスは、高島屋がダイレクトにやっているサービスではいから、こちらが質問してすぐに担当者が分からない場合もある。そういう時は電話で詳細を熟知している担当者に聞いてくれる。 海外旅行時の保険が付くといっても、それはこのカードでチケット代を買ったときに限るという条件のあるケースも多い。そういった見落としがちな部分についてもしっかりチェックするMizumizu。 「リボ払いはどうなさいますか?」と聞かれて、即効「不要です。すべて一括で」と言えば、カードを(そこには存在しない)秤にのせるマネをしながら、「だいぶ(口座に)入っていらっしゃいますね」などとユーモアをまじえた嬉しがらせを言う営業の男性。 別に口座残高が多いんじゃなく、「ローン」だの「キャッシング」だの「リボ」だの、カタカナ語をくっつけても、それは結局、「100万のモノを120万(場合によっては130万だろうか?)」にする商売だとしか思ってないMizumizuは、その手の「金融商品」は自分にとって損だし、嫌いだから利用しないというだけだ。 これは、簡単な掛け算と引き算の問題で、Mizumizuが重視するのは「総額で」いくら払うかということ。「月々で」いくら払うという思考はまったくゼロ。分割払いにしないと買えないようなものは、初めから買わないのがポリシーで、そもそもそういうものは欲しくならない。 申し込みから少し時間を置いて、カード到着。 さ~、使い倒すぞ~。トクしちゃうぞ~と、カードを携え高島屋へ。 するとカードを持つ前は、関係ないから目にも入らなかった「ポイント優待」の表示がやたらに目につく。実はこのポイント優待――つまり日頃は8%なのを10%にするとか――のイベントを、高島屋はしょっちゅうやっている。 そして、つぶさに見て回ると、三越より断然自分の趣味に合うデザインのファッションが多いではないか。それに20万、40万というレベルの衣類を見ていた後だと、5万、7万という価格帯が、とても「お手頃」に見える。「三越より立ち止まる頻度が多いね」とは、Mizumizu連れ合いの観察(笑)だが、あっちで引っかかり、こっちで引っかかり、気がつくと、トップスだとかスカートだとかを、「今なら10%ポイントが付きますので」のダメ押し営業トークにのせられ買っている。 ゴールドカード会員専用のラウンジは、新宿店ではかなり期待外れだった。土日はあまりに利用者が多く、座れないほどだし、コーヒー、お茶、オレンジジュースが飲めるとはいえ、それは高速道路のサービスエリアにあるドリンクの自販機が、種類が少なくなって置いてあるのと同じような感じで、味もよくない。違うのはサービスエリアのベンダーマシンにはお金を入れないといけないが、高島屋新宿店ではその必要がない、ということ。 日本橋店のほうのラウンジは、もっとスペースもゆったりしていて、注文を聞いてから担当者が運んでくれる。味も新宿店より明らかに上。ただし、ここも土日は混みあって、待たされることもしばしば。とはいえ、待ちスペースにも椅子が置いてあるから、新宿店のように、混んでいたら立ち飲み状態で空席を待つなんていう、駅の待合室状態になることはない。 駐車券はもちろんくれるのだが、よく考えると、行くたびに、5万、7万と使っていたら、別にゴールドカードなんて持ってなくても同じことだ。万まで行かなくても、数千円でカワイイものがあれば、ついつい買ってしまい、「タダで停めさせてもらって使い倒す」はずが、明らかにこちらの持ち出し(という言葉が正しいかとうかはともかく)のが増えている。 ポイントを積み立てたあとにもらえるお買い物券にも、実はしたたかな高島屋の戦略が隠れている。 というのは、このお買い物券、1枚が2000円で、おつりが出ない。そして使えるのは高島屋だけなのだ。2000円というのが物凄く絶妙な(売り手にとって)ライン。というのは、例えば一番気軽に利用できる地下の食料品コーナーでは、案外一店舗2000円は超えないのだ。ただ、ちょっと高めの商品なら2000円を超えてくるから、その手の商品を買うか買わないか迷った時、「そうだお買い物券あるし」というのが背中を押すことになる。 お買い物券には使用期限はない――というのはカード作成時には、「わ~、良心的ぃ」とお客の心をキャッチする役割をうまく果たすわけなのだが、ポイントの積立期間には制限があり、あと何ポイントでお買い物券が出る…なんてことも、ラウンジの機械でチェックできるから、その分じゃあ早めにまた何か買うか、ということにもなる。これで積立期間にも制限がなかったら、そういう「追い立て」効果はないだろう。 恐るべし、高島屋。本当に、実によく考えられているではないか。 で、楽天のほう。 楽天と高島屋は、一見すると別に直接の競合相手には思えない。楽天は通販モールだし、高島屋は直販百貨店(もちろん通販サービスもあるが)だ。前者はどちらかというと手軽さと安さが売りで、後者は明らかに手厚いサービスと質の良さが売り。 だが、買い手にとっては、特に何でも「総額」で考えるMizumizuにとっては、買う場所がどこであれ、そこで出してる金額が増えれば、その分別の場所での出費は控えるようになる。 気が付けば、楽天で買うのは明らかに街中の店より安く買える量販品に限られるようになってきて、買い物頻度が極端に減ってきた。 だから、Mizumizuに起こったこの現象は、充分に「楽天から高島屋に取り込まれた」と言っていいと思う。 戦略だけではなく、高島屋の現場の努力もたいしたものだと思う。特に日本橋店の駐車場サービスの人員配置は、かなりのもの。駐車場だけに、これだけ人を置いたら人件費はいくら? などと思うが、シニア層を雇用することで、明らかに1人頭の人件費は抑えている。どのスタッフも対応は非常に丁寧で、「おもてなし」されている気分にさせてくれる。 繁忙期は人が足りず、スタッフもカッコだけは一人前だが、対応はまるで不慣れなド素人のような長崎ハウステンボスにも見習ってほしいもの。こういうスタッフ1人1人の仕事ぶりを見ていると、「さすが華のお江戸の高島屋」だと褒めたくなる。 百貨店業界に逆風が吹くネット時代だからこそ、いろいろと工夫して生き残りを図る。カードでの優待で人を誘い、仮想空間のモールでの買い物では味わえない、リアルの愉楽で囲い込む。高島屋も頑張っているなあと思う。 皆がネットで買い物をし、デパートがなくなってしまったとしたら、それは誰にとってもあまりに寂しい。いったん取り込まれた仮想空間から、現実空間に戻ってきたMizumizuは、人が人と直接コミュニケーションを取る対面販売の良さを見直したのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.07.07 10:14:14
[Essay] カテゴリの最新記事
|