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投資の余白に。。。

投資の余白に。。。

September 15, 2010
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登山ガイドはルポルタージュであるべきだ。山の状況は日々変わる。徹底的に個人的な観察や印象や体験こそが重要なのに、コースタイムにしてもどういう人のものかわからなければ参考にならない。

腰椎椎間板ヘルニアの心配があったが、運試しのつもりで日本で最も早い紅葉ポイントとして知られる大雪山に行ってきた。これは2010年9月15日の記録である。

このコースは15年ぶり。15年前の9月15日はもう寒く、すっかり紅葉していたが今年は遅い。あと数日はかかりそうだ。

このあたりは標高1600メートルで森林限界に近い。ここから上のナナカマドの紅葉が最も美しいのだが、その紅葉を見るためのポイントまでは2時間ほど歩く。

駅を出ると正面に旭岳が姿を見せる。北海道最高峰のこの山は秀麗な山容で、いつまで見ても飽きない。今年は火山活動が活発だ。噴煙の勢いが強く範囲も広い。噴煙が小さいときは近くまで行って眺めたりしたものだが、そういうことをする気にならないほど。

6時の始発に乗り遅れ6時30分のロープウェイに乗る。歩き始めたのは6時40分だった。この30分の遅れは致命傷になりかねない。日没の早い秋の登山は早発ちが鉄則である。遅くても17時、山によっては16時には下山していなければならない。この山は運行時刻に縛られるので6時以前には動けないが、日の出には行動を開始するのが鉄則だ。

R0011544.jpg花は終わっているがリンドウが少し残っていた。年によっては雪融けが遅く花と紅葉と初雪が、つまり四季が同時にやってくることがある。この20年で2回あった。そういうときは万難を排してでも行く価値がある。

裾合平分岐まではかなりのアップダウンがある。8時10分に分岐着。2時間弱かかるところ90分で着いたのは朝なので涼しく休憩の必要がなかったからだ。

この分岐から当麻乗越という小ピークまでは小一時間。当麻乗越こそ、180度以上の広がりで紅葉と点在する湖沼の見られる絶景ポイントだ。ここまでなら、健康でさえあれば70代の人でも来られる。

分岐から当麻乗越まではいったんピウケナイという沢に降りる。ところが、簡単に渡れるはずが、増水していて渡る場所を見つけられない。

諦めかけたころ、やや下流の方で渡っている人を見つけた。あわててそちらに走っていくと、その人は向こう岸からどの石がいいか教えてくれた。少し濡れたが渡ることができた。あの人がいなかったら諦めていた。

この沢をこの方向で渡ったのはこの日は4人、反対から渡ったのはひとりだった。いかにひと気のない静かな山行かわかると思う。
R0011420.JPG
R0011427.jpg実は、久しぶりの本格登山でもあるし、このあたりのどこかで引き返そうと思っていた。しかし、もう一度あの沢を渡ると思うと恐怖心がわいた。上部の雪渓がどんどん融けているのだから水は増えているかもしれない。川に落ちるとかなり悲惨なことになる。子どものころ川で泳いだことがあり水の流れの抗いがたい強さはよく知っている。

しかしこの先、長い登りをやるのも気が滅入る。待っている尾根歩きは楽しいが、危険な場所があるのも知っていた。

戻るのも進むのも恐怖。水の恐怖と断崖の恐怖を比べて、水への恐怖が勝った。

前へ進むことにした。

15年前に来たときは、69歳の母も一緒だった。そのときは母の荷物も背負ったので、今回より荷物は重かったと思うが、荷物が重く感じられてしかたがない。気温のせいだ。だんだん気温が上がってきて、ゆっくり登ってもぐっしょり汗をかいてしまう。この当麻岳への登りはひたすら急な坂を登り、登るほどに傾斜がきつく岩が多くなってくる。ここを登るのは7回目だと思うが、いちばんきつく感じる。こんなきつい山はもう二度とごめんだと思いながら、1時間程度で稜線に出ることはわかっていたので何とか耐えられた。1990年の9月19日には85分かかったが、今回は70分。ロープウェイの最終に遅れてはたいへんと急ぐ意識があったためだ。

当麻乗越から当麻岳の稜線、それから稜線に出てから何と言っても慰められるのはウラシマツツジの真紅と言っていい草紅葉。場所によっては真っ赤な絨毯の中を歩いているようだ。こんな贅沢な経験は、この稜線以外ではできないのではと思う。しかも旭岳や裾合平の大パノラマを見ながらの天上散歩。ついさっきまでの苦しい登りを忘れてしまうほどだ。

R0011455.jpg左右が崖、という稜線を危険を感じながらも行くと広がりのある尾根になる。2200メートルの安足間岳への登りで、当麻岳の尾根のとりつきが1800メートルだから400メートルの標高差。400メートルというとかなりの落差だ。写真を撮ったりしているうちに時間を食い、安足間岳には11時15分に着いた。当麻岳からはちょうど一時間かかった。

ここまでは、どちらかというと日本画のような風景。ハイマツの緑の中に紅葉が点在する深い色合いで、奇岩や湿性植物やハイマツがおりなす風景は日本庭園に通じるおもむきがある。しかし安足間岳を過ぎると風景は一変する。草木のまったくない、地肌むきだしの崖で、ちょうど噴煙こそ上がっていないものの地獄谷のような風景が広がる。

R0011464.jpg休まずに安足間岳を出発。この地獄谷の尾根部分を20分歩いて比布岳に着いたのは11時35分だったが、この20分は緊張した。というのは、稜線のすぐ下をトラバースするのだが、以前はしっかりとあった登山道が風化し、崖のしみのようになってしまっているのである。斜面をただ歩くという感じに近い。左側は大覗きと呼ばれる絶壁、すぐ足元から右は、絶壁というほどではないにしても滑落したら骨折程度では済まないという斜面である。今回、はじめて登山用のストックを持っていったが、これが役に立った。これより危険な斜面を歩いたことは何度もあるが、なぜか今回は緊張した。加齢のせいでバランスが悪くなっているのかもしれないし、体重が減ると重心が高くなるので、よけいにバランスがとれないのかもしれない。こういう場所はあんがい女性は強い。母もここは2回通ったがスラスラ歩いた。

R0011483.jpg冷や汗をかくほど緊張して着いた比布岳には大岩がある。ふと見るとリスがいる。近くの人にリスがいると教えると写真を撮り始めた。少し話すと、この先一時間くらいは同じ道を行くことがわかったので同行することにした。60代なかばくらいの写真趣味の女性である。

気温が高いせいかガスが出ては晴れる、その繰り返しで、山岳美を誇る愛別岳は見えなかったが、一日でいちばん気温の高くなる時間帯に暑い思いをしないで済んだ。歩くときは汗ばんでも止まるとセーターやウィンドブレーカーがいる、そんな季節だが、薄着でも歩いていれば寒くもなく暑くもない、そんな状態で北海道第2の高峰、北鎮岳を目指した。

この女性は少し太っていて少し歩くのが遅い。おかげで疲れずに歩くことができた。比布岳から北鎮岳までの標高差は50メートルだが、一度下るので登り返しがけっこうある。感覚としては標高差200メートルくらいと感じる。それでも、比布岳発12時で北鎮岳着12時55分なので、低山ひとつ分くらいの登山である。

特筆すべきは当麻岳からこの北鎮岳に至るまでの、わずかな「地獄谷」部分を除いての広大なお花畑。チングルマの紅葉がピークだったが、何度も来ているところなのに、こんなところにこんなに大きなお花畑がと驚かされた。一度だけ、このお花畑を見に6月下旬に来たことがあるが、ついさっきまでの苦しい登りや恐怖のトラバースを忘れ、次は花の時期に来てみようとさえ思ってしまった。

実は、地図をクルマに忘れてしまったので、地図なしの山行だった。ただ、何度も来ているので地図はなくても大丈夫という自信があった。 しかし北鎮岳から先のルートははっきりしない。記憶では、ただ下り、標識に従えばいいと思っていた。もう登りはないので何の心配もいらないとさえ思った。しかし、目の前の雄大な景色を見ていると不安になった。晴れてはいるが、ときどきガスが出て視界がなくなることもある。そんな変な天候では、標識を見落としたりしてルートを間違うかもしれない。

比布岳から同行した女性がこちらのルートもよく知っていたのであらためて教えてもらい、確信を持てた。彼女は北鎮岳から下ったすぐのところの分岐から左に折れて黒岳へ向かう。丁重に礼を言って別れた。わたしはそのまま直進し、中岳の小さなピークを越えて下り、分岐から右に折れて中岳温泉へ向かった。

完全にひとりだったら景色を楽しむ余裕もなく、不安にかられて先を急いだだけで終わってしまったかもしれない。

北鎮岳12時55分、中岳分岐13時55分。記憶ではすぐと思っていたが1時間かかった。このように記憶とはあいまいなものなので、地図やそれに類するもの、過去の登山記録などは重要だ。

この時間になるとすでに夕方の気配が漂う。お鉢平の紅葉はピーク。ただいちばん大きな紅葉は日陰になっている。これを見るには午前中に、反対側(黒岳側)から見た方がいい。

R0011510.jpgこのお鉢平を見るのは15年ぶりだ。あまりに雄大で、絵にならないというか、写真に撮る気さえ起こらない。このお鉢平は一周したことがあるのでだいたいの距離感はあるが、それでも自分がここを一周したことが信じられないほど広大だ。「大雪山に登って山の大きさを語れ」と大町桂月は言ったらしいが、こんなに雄大な景色は大雪山国立公園全体でも屈指だろうと思う。

ガスが晴れ、ルートを教えてもらえたので、日本ではここでしか見られない、お鉢平の雄大な景色をゆっくり楽しみながら、中岳を越え中岳分岐に向かうことができた。
R0011518.jpg分岐からはひたすら下る。30分ほどで中岳温泉に。先客3人が足湯を終えたところで、ひとりになったので、少し砂や石をかきだして入浴。もう少しゆっくりしたかったが、17時30分がロープウェイの最終。温泉からロープウェイ駅までは約2時間。15時には出発しなければならない。だから入浴は10分で切り上げ、14時50分に出発。朝の30分の遅れが悔やまれた。

あとは迷う心配のない下りがメーンの道である。緊張感から解放されたためか、逆に強い疲れを感じる。それでも夕暮れの太陽の光線に照らされる旭岳や秋の気配が深まる景色を見ながら、ほぼコースタイムで駅に着いた。16時35分に着き、16時45分のロープウェイで下山。さらにふもとには大雪山の湧水を汲める場所があり、そこへ向かった。この湧水は硬度が高いが柔らかい味のおいしい水で、特に珈琲に使ったりパスタをゆでたりするのに使うのに向く。

今回は左回りに回ったが、右回りの方が2割くらい楽なようだ。数年に一度はこのルートの右回りをやって自分の体力の確認をする基準にしようかと考えている。





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最終更新日  September 17, 2010 02:55:03 PM
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