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長編時代小説コーナ

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Jul 10, 2006
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おぼろげながらも、ようやくからくりが分ったのだ。

「まして博打に負け、借金でも出来ようものなら石崎家は終りとなる」

 それはお咲にも分ることであった。

「お由紀さまは、泣き泣き躯を檜垣屋に任せたのですね」「わしにはそう思える」

「何故、あのような酷い殺されかたをされたのでしょうか?」

「それは、わしにも判らぬ」

 家名存続は藩士の命。それを餌に藩士の妻女を狙い、町人達に高値で売り渡

すとは許せぬ。謂れもない憤りが新弥の躯を駈け巡った。

 二人は暗い顔でお互いを見つめあった。

「お咲、そちに願いがある」「何でございましょう」新弥の様子がただ事でない。

「馬廻役の加藤鍬次郎殿を知っておるの」「加藤さまが、なにか」

「鍬次郎殿は上府中の身じゃ。誰が訪ねて参るか見張って欲しいのじゃ」

「お糸さまを訪れる方が居られるのですか?」

 お咲は自分の言葉を飲み込んだ。もう少しで不義密通と訊ねるところであっ

た。次は加藤鍬次郎の妻女かも知れぬ、そんな勘が新弥の脳裡を掠め一之進

の陰湿な顔が浮かんだ。新弥はお咲をみつめ黙して首肯した。


 翌日は久しぶりの非番であった、新弥は秘かに磯辺伝三郎の屋敷を訪れた。

 磯辺も非番で寛いでいた。歳に似合わず庭で鉢植えの松をしげしげと眺め悦

に入っていたが、「斉藤、いかがいたした」と棒縞の単衣姿で庭下駄を鳴らし、

気軽に座敷にあがってきた。

「少し気になることがございましてな」

 妻女が茶を置いて去った。目付としての役職柄、常に誰かが訪れ内々の

密談をする。妻女は心得ていた。

 新弥は昨夜、夫婦で語り合った会話の一部始終を報告した。磯辺伝三郎は

腕組みをして聞いていたが、徐々に頬が紅潮をみせてきた。

「流石はご内儀、お主より鋭い。出来すぎた推量じゃが悪くはない。石崎夫婦

が死亡いたし手がかりもない情況じゃが、孫兵衛が何も語らず切腹いたして

果てたのが納得出来ずにいたが、今の話で筋道が通った」

 磯辺伝三郎が常の剽悍な顔つきとなっていた。

「石崎家のご処置は決まりましたか?」「家名断絶」

 新弥の問いに磯辺が短く答えた。「次席家老の裁決ですな」

「左様、妻女の忌まわしい死にざまと孫兵衛の切腹。これに立腹された

結果じゃが、石崎家の血筋が途絶えたことが原因じゃ。少々のお勤めの

過ちでは閉門蟄居が最高の罪じゃが、いかに今回のご処置が厳罰か判ろう」

 新弥は黙しているが眼光が鋭くなっている。

「お主の指摘どおり賭場を開帳しておるのは檜垣屋じゃ。さらに女郎屋まで

も奴のものじゃ、その後ろ盾が石垣家。出来すぎた狂言じゃな」

 磯辺伝三郎がニヤリと破顔した。「貴方さまも博打とお考えですか?」

「お主に知らされたのじゃ。ところでお主がその立場ならどういたす」

「拙者はやりません」新弥が怒りで顔を赤らめた。

「例え話じゃ。藩にも内緒にいたす、借金も棒引きとする。だが妻女を

一定期間あずかり町人に春をひさがせると言われたら、お主ならどうい

たす」流石は目付である、核心をずばりとついた。

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Last updated  Jul 10, 2006 08:35:44 AM
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