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長編時代小説コーナ

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龍5777

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Oct 21, 2006
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カテゴリ:暗闘
「誰じゃ、わしに楯突く者は」  あの時の遠山左衛門尉の対応も今になって

思いおこせば不審であった。大奥の思惑を無視し、御年寄お千代の方と売僧の

晒しを見てみぬふりをとおした。

「水野忠邦。貴様かー」  思わず鳥居甲斐守忠耀が独語した。


 内与力の前川孫八は臨時廻り同心の須藤半右衛門を引きつれ、越前堀の

現場に駆けつけた。そこは八丁堀のすぐ前である。与力、同心の家族が心配

そうに眺めていた。

「ほう、これは珍しい、南の内与力殿のお出ましにござるか」

 北町奉行所の年番与力、島崎一郎兵が皮肉な笑みをみせ出迎えた。

「島崎さん、このヤマは当方に任せていただく」

「それは可笑しいことを申される、今月は我が北町の月番」

 揶揄われた前川孫八の視線の先に、大橋新兵衛と井上一馬の二人が映っ

た。二人は手下の岡っ引きと共に手持ち無沙汰の様子で現場に佇んでいた。

 北町の同心が死骸に筵をかけている。

「島崎さん、我が奉行より遠山さまにご依頼がある筈。是非にも曲げてお願い

いたす、犠牲者は我が南の中岡藤次です」

 日頃、傲慢な前川孫八が無念そうに頭を下げた。

「南町奉行所の内与力殿の願いでは仕方がござらぬな。我が奉行もそれがしに

任せるとの仰せでござった。この事件は南で探索なされ、じゃが凄腕の下手人

じゃ。凶行は昨夜の早い時刻ですな、では我等はこれにて失礼いたす」

 島崎一郎兵の合図で北町全員が引き上げて行った。

 年番与力とは奉行所の最古参の与力で、事件に関しては最も奉行に信頼され

る存在であった。彼等は奉行所の老中格で財政から、人事まで一切合切を取り

しきっていた。北町奉行所が年番与力を派遣したのは、この事件を鳥居甲斐守

が、どう裁くかみたかったのだ。これが遠山左衛門尉の考えであった。

「大橋、井上、なにを致しておる、さっそく死骸の検分をいたせ」

 前川孫八の怒声をうけ、南町奉行所の者が死骸の検分をはじめた。

 前川孫八と臨時廻り同心の須藤半右衛門が、死骸をみて眼を疑った。

中岡藤次の頭蓋が一刀のもとで斬り割られている、凄腕の犯行に思えた。

 死骸は水にさらされ血も脳漿もすっかり流れ、頭蓋の中が顕に見えた。

小名木の亀は、背後から心臓を一突きとされていた。

「前川さま、犯行はここではありませんな」

 臨時廻り同心の須藤が冷静な声でつげた。

「そのようじゃ、大橋、そちは越前堀から新堀一帯の探索じゃ」 「分りました」

 大橋新兵衛が岡っ引きとともに猪牙船で探索にむかった。

「井上、二人の死体を奉行所に運ぶのじゃ」

 奉行所で死骸を検分した鳥居甲斐守は、斬り口の凄さに舌をまいた。彼は

目付時代から、血腥い事件を何度となく見てきたが、このような凄い斬り口は

初めてみた。同時に己の敵が容易ならざる者達と肌身で感じた。


 季節はゆったりと確実にうつろいでゆく、梅と桜が散り紫陽花の花が鮮やかさ

を見せ始めた。江戸の町は梅雨を迎え、鈍色の空が上空を覆っている。

 時折、霧雨のような小雨がさっと軒下を濡らしてゆく。人々はその度に番傘を

開いたり閉じたりしていた。  「じめじめした嫌な季節だね」

 道行く人々が恨めしそうに空を仰いでいた。 

 そうしたなか宗匠頭巾の武士が馬喰町から、神田川に架かる柳橋の船宿の

一軒に入った。この辺りは柳橋芸者で有名である。船宿は吉原かよいの山谷船

で賑わっていた。

 武士を乗せた猪牙船が神田川から大川に出て上流に遡った。

「香の迷う梅が軒端匂い鳥 花に逢瀬の待つと瀬の あけて嬉しき懸想文

開く初音のはずかしく まだ解けかぬる薄氷 雪に想いを深草の 百夜も通う恋

の闇 君が情けの仮寝の床の 枕片敷く夜もすがら」

 低いがしっとりとした声が大川の川面に響いた。

「お侍さま、粋な文句にございやすな」  船頭が棹を操り感心している。 

「御所車という恋の唄じゃ」  「左様で」

 やがて猪牙船は山谷堀に入り船着場に着いた。武士はそのまま土手八丁と

呼ばれる堤から、見返り柳をおれ衣紋坂を下った。

 ここから五十間道を進むと、吉原遊郭唯一の出入口の大門に辿り着くのだ。

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Last updated  Oct 21, 2006 09:18:23 AM
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