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May 25, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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      「騒乱江戸湊(38)

 地獄の龍が御用船に影法師のように飛びうつり、絶叫がこだました。

 瞬くまに三名が血煙をあげ水飛沫をあげた。

 接近する御用船も結果は同じである。まさに鬼神のような働きを示している。

「屋形船から離れるよう命じて下され」

 天野監物が危険を察知し叫び声をあげた。

 お頭の合図で御用船が一斉に後退し距離をおいた。

 それを待っていたかのように、屋形船が舳先を転じ新大橋へと逃走を

始めた。

「奴等はどこに向かうのじゃ」

 天野監物と若山豊後が歯がみをして眺めている。

 屋形船の二丁櫓がますます快調に水をかいている。

 屋形船は新大橋を潜り抜け直進している。大川最後の橋、永代橋が朧に

見えてきた。そこを越えると江戸湾である。

 追跡する火付盗賊改方の面々に闇公方の行動が不自然に感じられた。

 屋形船は船足を早め、ついに永代橋をも潜り抜けたのだ。

「お頭、奴等は江戸湾に向かうつもりです」

 若山豊後は闇公方の魂胆を見抜き、河野権一郎に声をかけた。

「そのようじゃな、逃してはならぬ」

 お頭の合図で御用船が船足を早め距離をちぢめはじめた。

 右手に霊岸島を見え、前方には石川島、佃島が霞んで見える。

 江戸湾は穏やかな光景を見せつけ、薄暗い海上は凪いで、湾内には

桧垣廻船や樽廻船が帆をおろし停泊している、それも数十艘の数である。

 この時代の江戸は物資の一大消費地であり、物流はすべて江戸を中心とし

て廻っていた。大阪商人はそれに眼をつけ、桧垣廻船や樽廻船で米、醤油、

塩、砂糖、紙、木綿、材木、陶器、酒などありとあらゆる生活物資を運び込ん

でいた。

 こうした船は弁財船と呼ばれる木船で全長約三十メートル、幅は約七、四

メートルの日本最大の大船で所謂、千石船である。

 松右衛門帆と呼ばれる一枚帆が特徴であった。

「奴等、何処に行くのじゃ」

 追跡する御用船の船頭までが不思議そうにしている。

 双方の距離は二町(二百メートル)ほど離れている。屋形船は追跡の

御用船を嘲笑うかのように、弁財船の間を巧みにぬって逃走を続けている。

「お頭、品川に向かっているようです」

 天野監物に河野権一郎が無言で肯いた。品川に逃走されたら厄介極まり

ない事態となる。

「接近いたせ」

 采配が振られ猛然と波をきって追跡を始めた、海上がいくぶん荒れ模様と

なってきた。 軽量小型の猪牙船は波に翻弄され追跡が困難となってきた。

「畜生」  若山豊後が罵り声をあげた。

「お頭、大きな船が停泊しておりますな」

 天野監物が眼を凝らし呟いた。

 視線の先に一艘の巨大な大船の停泊する様子が見えた。そこは佃島

と品川灯台の延長線上の位置で、西には増上寺が見えるはずである。

 弁財船は通常は千石船で知られていたが、まれに八百石の小型船もあった。

 前方に停泊している巨船は千五百石か二千石船には見える。黒々とした翳

を見せ、舳先には白い波飛沫があがっている。

「どこの船かの?」  お頭が不審そうに眺めている。

 屋形船は悠々と波をかき分け進んでいる、既に五町ほど距離が離れていた。

「お頭、あの巨船は帆をあげておりますぞ」  「なにっ」

 若山豊後の叫びで河野権一郎が手をかざして見た、豊後の言うとおり帆が

一本柱にするすると引き上げられている。

「あの船に逃げ込む魂胆か」  「そのようですな」


騒乱江戸湊(1)へ






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Last updated  May 25, 2011 12:01:40 PM
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