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Jun 1, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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      「騒乱江戸湊(45)

「話が決まれば夜まで寝かしてくれ」

 求馬が肘枕で横になった。

「旦那、臭いが風を入れやすぜ」

 猪の吉が障子を開けた、風とともに厠とドブの臭いが漂ってきた。


 浅草寺の境内をぬけ観音堂から、奥山にむかう小道にふたつの影が現れた。

 求馬と猪の吉の二人である。

「あの灯りが水茶屋ですよ、そうは言っても淫売宿ですがね」

「五軒なら妓は何名くらいじゃ」

「百人てえところでしょうな」

「大金が動くな」

「阿漕な商売ですよ」

 二人が喋りあい小道を歩んでいると、前方の暗闇に人の気配がし、草叢を

掻き分ける音とともに三人の男が道を塞いだ。

「何処に行きなさる?」

 三人とも長脇差を腰にぶちこんでいる。

「ここは関所かえ、通るのにおめえ等の許しがいるのかえ」

 猪の吉が三人を圧倒する声をかけた。横の求馬の痩身から凄まじい気迫が

湧き上がっている。

「おれ達は浅草の由蔵親分の手下だ」

「賭場があると聞いたが本当かえ、ちょいっと運だめしがしてえ」

「客人かえ、ここから二町ほど先だよ」

 三人のやくざ者が猪の吉に圧倒され、賭場のある方向を指さした。

 言われるままに進むと、新築の立派な一軒屋に辿りついた。猪の吉が

手慣れた態度で博打場に入り込んだ。

「旦那、この辺りに座りましょうや」

 求馬が無表情な顔つきをみせ盆脇に痩身を進めた。

「兄さん、二両ほどコマ札にかえてくんな」

 猪の吉がコマ札を手にし腰を下し、その横に求馬がうっそりと腰を据えた。

 賭場は満員盛況のありさまで熱気に満ちている。

 奥の隅に長羽織の男が、チビチビと杯を嘗めている姿が見えた。

「旦那、奴が由蔵のようですぜ」

 猪の吉が低い声でささやいた、求馬が由蔵らしき男を乾いた眼で見つめた。

「客人、張っておくんなせえよ」

 盆をあずかるツボ振りが二人に声をかけた。

「さて、おいらは半といくぜ」

 猪の吉がコマ札を押しだした、その様子を求馬が半眼で眺めている。

「五、六の半」  賭場から吐息が洩れた。

「幸先がいいね―」  猪の吉がご機嫌である。

 求馬は客筋を見ていた。大店の旦那衆や裕福そうな町人にまじり、身形の

立派な武士まで勝負に熱中している。

「旦那、勝負に入っておくんなせえよ」

 求馬が無造作にコマ札全部を半目に賭けた。一座の視線が集まり、猪の吉

が見物にまわっている。

「コマ揃いやした。勝負っ」

「グニの半」  「旦那、遣りやしたね」

 グニの半とは、賽子の目が二と五を出したことを意味する。

 猪の吉がニンマリした、求馬のコマ札が倍になっている。

「旦那、景気よく張っておくんなせえ」

 求馬がまたもや持ちコマを全て半に張った。客達が一呼吸おいている。

「これじゃあ勝負になんねえよ、どなたか受けて下せえよ」

 それを見た由蔵がのっそりと盆に座り丁目にコマを張った。

「盆が受けやした。勝負っ」

 またもや賽の目が半と出た。

「皆さん、悪いね。旦那は今夜が初めてなんだ」

 猪の吉が詫びを言って一息いれるように勧めたが、求馬は無造作に全ての

持ちコマを張った。

「さあ、張っておくんなせえ」

 代貸しの金兵衛が由蔵の顔を覗き見て声を張り上げた。賭場の客は手を

休め勝負の行方を眺めている。

「今夜は勝負になんねえよ」  ツボ振りがぼやいた。

「おいらが受けるぜ」

 由蔵が獰猛な顔をみせ顎をしゃくった。手下がコマ札の入った箱を由蔵の横

に置いた。

「今回も盆が受けやすが、旦那は丁か半のどちらですかえ」

 ツボ振りの男が愛想笑いを浮かべて求馬に訊ねた。

「半じゃ」   「それじゃあ、おいらは丁だな」

 由蔵が顔を真っ赤にし、コマ札を取り出した。

「勝負っ-」

 ツボ振りの声と同時に求馬の愛刀、村正が蝋燭の灯りを受けて煌めいた。

「おう―」  賭場の客から声にならない溜息が洩れた。

 村正特有の刃紋が蒼みをおび、その刃の上に両断された賽子が四個となっ

て、ぴったりと吸い付いたように乗っている。

「おい、この賭場はイカサマをやるのかえ」

 猪の吉が大声をあげて凄んだ。両断された賽子には顕かにイカサマと分かる

証拠が鮮明に残っている。

 由蔵の獰猛な顔が歪み怒声があがった。

「馬鹿野郎、なぜこんな賽子を使う。お客人、あしがこの賭場の胴元の由蔵と

申しやす。今晩の勝負はなかったことにしておくんなせえ、これまでの負けは

全て倍返しといたしゃす。この馬鹿野郎を簀巻きして大川に投げ込んでこい」


騒乱江戸湊(1)へ






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Last updated  Jun 1, 2011 06:02:43 PM
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