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Jun 4, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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      「騒乱江戸湊(47)

 お波の全身を心地よい川風が吹き抜けている、艫(とも)で櫓を操る留吉に

お波の体臭と化粧の匂いが、心地よく漂っている。

 留吉がお波の後れ毛に視線を這わせ、幸福感に浸っていた。

 彼は掛け値なしにお波に惚れていた。それは男女の生々しい感情を超えた

無垢のもので、お波と一緒にいることのみで満足していた。

 留吉にとりお波は天女そのものであった、女将さんの為なら命を捧げる、

これが留吉の生きがいであった。

 猪牙船は薩摩藩上屋敷のある三田四国町を抜け、とある屋敷裏の船着き

場に止まった。松、欅、杉の古木が鬱蒼と葉を繁らせ、無人の屋敷のように

人の気配をまったく感じさせなく、静寂につつまれている。

 お波は手慣れた態度で裏門の横にある脇門に身を入れた。

 そこからは豪華な庭が見通せた。見事な庭石の間の小径をお波は進み、

青黒い水をたたえた池に辿り着いた。

 その池の真ん中にひと目を忍ぶように、詫びた茶室がひっそりと建てられ、

苔むした石橋が架けられていた。お波は茶室の前で足を止めた。

「お波さまか?・・・お入り下され」

 中年の男の声に促され、お波が嫋(たお)やかな躰を茶室に入れた。

 茶室には五十年配の武士が茶を喫していた。

「いかが成されました?」

「五十嵐次郎兵さま、野暮用で参りました」

「面倒な事件でも起こりましたかな?」

 柔和な顔つきの武士は俊敏そんな長身の体躯をみせ、座るように促し、

お波の言葉を待っている。

 お波が今朝、由蔵から依頼された内容を告げた。五十嵐次郎兵と名乗る

武士は、見事な手つきで茶をたてお波に勧め、何事か思案をしている。

 その顔は柔和ながらも、意志の強い顔をしている。

「これは見事な茶器ですね」  お波が感嘆の声をあげた。

「関白秀吉が愛用したと聴いております」

「関白秀吉」  お波が驚いた顔をした。

 ずっしりとした碗は割れ目に、黄金が流し込まれた逸品である。

「たかが器です。お波さま由蔵は痩身の凄腕の浪人と言いましたか?」

「何者かご存知にございますか」

「一人だけ恐るべき男が居ります」

 お波がじっと五十嵐次郎兵の顔を見つめた。

「元公儀隠密の生き残り、伊庭求馬と申す男にございます」

「間違いありません、由蔵がその名前を申しておりました」

 驚いたお波の様子を眺め、五十嵐次郎兵が肯き言葉を継いだ。

「厄介な男が首を突っ込んできたものです。早速、御前にお知らせいたす。

暫時、お待ち下され」

 五十嵐次郎兵が足音もたてず茶室を辞していった。暫くすると鳥の羽音が

聞こえ、五十嵐次郎兵がもどり、亭主の座に腰を据えた。

「ただ今、鳩を放ちました。鳳凰丸は下田沖のさる小島に停泊しております。

一刻半(三時間)ほどで返事が参りましょう」

「伊庭求馬とはそのように恐ろしい相手ですか?」

 お波が美しい眸を凝らし五十嵐次郎兵を見つめた。

「厄病神ですな」

 五十嵐次郎兵が口調を強め吐き捨てるように言い放った。

「奴は己で編み出した秘剣、逆飛燕流の遣い手として知られ、そのうえに

忍びの業まで備えた男にございます」

「橋口龍五郎でも叶いませぬか?」  「まずは勝てまぬな」

 五十嵐次郎兵が断言した。ジ―ンと耳が痛いほどの静寂の中で二人は

待った。微かな羽音が茶室まで聞こえてきた。

「戻って参ったようです」

 五十嵐次郎が茶室から出て、直ぐに引き返してきた。

「お波さま、今宵、鳳凰丸が江戸湊に侵入いたします。禁制の荷物を降ろし、

御前さまに橋口龍五郎に塩屋茂兵衛、ならびに斉藤浅右衛門の三人がこの

屋敷に戻ります。その後に鳳凰丸は浜御殿に砲撃を加え帰路につきます」


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Last updated  Jun 4, 2011 11:15:03 AM
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