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Nov 27, 2013
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「小栗上野介忠順」(203)


「皆の衆、出陣のお下知じゃ。さらば準備を致そうぞ」

 各人が勇んで持ち場に散って行った。

 城内は沸きに沸いている。

「上様が陣頭に立たれれば、薩長なんぞ一蹴せん。緒戦の借りを返すなり」

 特に会津藩と桑名藩の将兵の士気は高く、将兵は必勝を期して勇みたって

いる。伏見口の戦闘では勇戦したが、敵の新式銃器の前に多大な犠牲者を

出し、敗退したのだ。

 幕臣の松平太郎は洋式軍服に身を包み、足早に部隊に戻った。

「いよいよ我等の出番が参ったぞ、幕軍にも洋式部隊の在ることを薩長の

田舎侍に思い知らせるのじゃ」

 各兵士に激を飛ばし、更に、

「明日の合戦は幕軍洋式隊の晴れの舞台と心得よ」

 部隊の将兵を見廻し意気軒昂と成っている。

 城内の各所には篝火が焚かれ、一月の寒風をうけ火花が舞い上がっている。

 そうした光景を横目に見つつ、慶喜は長廊下を伝って自室に戻り軍服を脱ぎ

捨てた。暫く腰掛に深々と身を沈め、暗い目つきを光らせ思案している。

 先刻の各将等の意気込んだ顔が、次々と走馬灯のように脳裡を過っている。

「致し方あるまい」

 低く呟きを洩らした。彼は沸騰した城内を抜ける方策を巡らしていたが、

考えが纏まったのだ。彼は大阪城に将兵を置き捨て東帰を決意したのだ。

 慶喜の胸には錦旗、朝敵、足利尊氏の事で一杯と成っていた。

 朝敵に成ると思うと恐怖で身が強張る、彼は卓上の葡萄酒の瓶に手を伸ば

し、グラスに注ぎ一気に飲み干し気を鎮めた。

 彼は廊下に控える小姓に、板倉勝静を呼ぶように命じた。

 直ぐに板倉勝静が姿を現した。

「余は東帰いたす。会津肥後守殿と桑名越中守殿を秘かにお呼びいたせ」

 そう命じ、更に数名の名前を指示した。

「上様、先刻のお言葉に嘘は御座いませぬな」

 板倉勝静が低いが鋭い口調で念を押し、慶喜が蒼白な顔で無言で肯いた。

「さらば仰せの如くに致しまする」

 板倉勝静が素早く立ち去った。

 廊下の足音を聞き慶喜は再び思案に耽った。城内で意気軒昂とする者は、

会津、桑名の藩兵達である。これを思うと理由の如何を問わず、一緒に連れ

出さねばと決意した。

 藩主が秘かに城内から退去したと知ったら、激高する藩士も鎮静し、国許に

帰る道しかあるまい、慶喜はそこまで考えていたのだ。

 忍びやかな足音ともに会津藩主の松平肥後守容保と、桑名藩主の松平越中

守定敬が姿を見せた。

 この二人は兄弟で会津容保が兄である。

「何事にございますか」

 容保が不審そうな顔付で訊ねた。

「両侯にお願いがあってお呼びいたした」

「・・・・」

「余は今夜、この大阪を退去いたし東帰を致す」

「何と申されました」

 両侯は腰の抜けるような言葉を聞き、言葉を失った。

「錦旗が薩長に掲げられては、余は朝敵に成り果てる。よって東帰再挙を計る

積りにござる」

「何を仰せにございます。先刻のお言葉は将兵を騙したのでございますか」

 松平定敬が若々しい頬を染めて迫った。

「今はこれ以上、朝廷にご迷惑は懸けては成らぬと思っての事にござる」

 この慶喜の言葉に両侯は反論できずにいる。二人とも尊王の志の厚い大名

であった。特に会津容保は亡き孝明天皇の信任を得た人物である。

 慶喜にこう言われては返す言葉を失った。

 慶応四年一月六日、午後十時頃、世にも奇怪な出来事が勃発した。

 交戦中の陣中より将兵を置き捨てにし、総大将が敵前逃亡を企てるという、

古今東西、聞いた事もない不祥事が起こったのだ。

 それを成した人物が十五代徳川将軍の慶喜であった。


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Last updated  Nov 27, 2013 12:23:53 PM
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