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Dec 1, 2013
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「小栗上野介忠順」(205)


「副艦長、英艦二隻が接近中・・・・」

「何と」

 沢太郎左衛門が素早く船室をぬけ甲板に駆けあがった。

 彼の視線に英艦二隻が見えた、顕かに不穏な行動を示し開陽丸の周囲を

旋回しつつ、艦内を偵察していると感じられた。

「蒸気を挙げよ」

 沢が機敏に命じ、更に戦闘体勢をとるように下知を下した。

「大砲の標準を定め、何時でも砲撃できるように持ち場に就け」

 そう命令を発し、英艦の動きを注意深く観察したが、英艦は何事もなく

去っていった。沢太郎左衛門は双眼鏡で去って行く英艦を眺め、

「見張りは厳重にせよ。何時でも抜錨が出来るよに準備を成せ」

 入念に命令を下し、船室に戻り一行に今の出来事を報告した。

「薩長に気脈を通ずる英艦が不審に感じ、偵察に現れたものと推測いたします」

 沢の報告で慶喜はじめ全員が安堵の色を浮かべた。

「副艦長、沢太郎左衛門に命ずる。速やかに艦を品川に向け出航させよ」

 目付の戸川伊豆守が命令したが、沢太郎左衛門が不敵な面魂を見せ、

「それは出来ませぬ。軍艦は艦長の命令で動くもの、特に海軍での命令は

厳正に御座います。艦長の榎本和泉守は上陸中、出航は出来かねます」

 恐れる様子も見せずに言いきった。それを見た慶喜が下知を下した。

「副艦長の沢太郎左衛門、海軍の規律の厳正は分かった。余が命令を下す。

艦長代理として艦を江戸に向けよ」

 こう上様から命令されれば仕方がない、彼は渋々命令を受諾した。

 開陽丸が大阪湾を出航したのは、慶喜が大阪城から敵前逃亡した二日後

の八日の夜半のことであった。

 なんとも間の抜けた時間の浪費を慶喜一行はした事になる。

 船室では会津、桑名の両侯と慶喜の間に論争が続いている。

 二君はあくまでも徹底抗戦を主張し、慶喜は非戦を主張した。

 艦内が荒れると同様に、海上も時化に襲われ烈風が強まり操艦に難儀した。

  十日には艦は八丈島の北まで流され、一行は生きた心地もせず船室に閉じ

こもっていた。


 七日の早朝に総大将たる慶喜の姿が忽然と大阪城から消え去った。

 各将達は懸命に探索したが、ようとして行方が知れずに苛立っていた。

 会津、桑名藩も同様に藩主の姿が上様と共に姿を消していた。

 大阪城の大広間で置き捨てられた松平豊前守、塚原但馬守、大久保主膳正、

滝川播磨守、竹中丹後守等が、今後の策を練っている。

 既に彼等は慶喜の逃亡を知っていた。老中二名と会津、桑名藩主も姿を

消している事実が、何よりも明白にこの事を物語っている。

 大久保主膳正が険しい顔で吐き捨てた。

「我等は上様に置き捨てられたのじゃ。所詮は水戸の御生まれじゃ、錦旗が

薩長に翻ったことで気が動転されたのじゃ」

 彼等が語り合っている間にも、気の早い将兵が続々と城から去って江戸に

潰走している。

「上様に捨てられた」

 この思いが彼等を臆病にしていたのだ。

 大広間に幕府洋式軍の松平太郎が姿を見せた。腰に大刀を佩び眼を炯々

と光らせ、不敵な面魂で一同に声を懸けた。

「親分が逃げ去っては戦に成りませんな、わたしは隊を纏め江戸に戻ります。

この大阪城で薩長と戦っても勝機は去り、到底勝ち目は御座らん。皆さんも

退散したほうが宜しい」

 仏国士官服姿の彼は一同に挨拶し、足音も荒く退席して行った。

 城内の各所で将兵が焚火の前で酒を飲み、すさんだ声をあげ騒然とした空気

が漂っている。松平太郎はそうした様子を横目にして足を急がせた。

「松平君」

 聞いたことのある声で振り向いた。

 そこには海軍の重鎮である榎本和泉守武揚と矢田堀讃岐守の姿があった。

「おう、お二人に御座るか、上様はここにはお居られぬよ」

「何と・・・」

 矢田堀讃岐守が驚きの声を発した。

「錦旗に腰が抜けたのさ」

 松平太郎が不敬な言葉を発した。榎本武揚が精悍な顔で訊ねた。

「あんたは江戸に戻られるのか」

「左様、親分なしで戦は出来んよ。隊を率いて江戸に帰る、併し榎本さん、

幕府海軍は張り子の虎かえ、何故、艦砲射撃で援護をしなかった」

 その言葉が海軍の二人の胸にずっしりと重く響いた。


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Last updated  Dec 2, 2013 11:21:59 AM
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