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Dec 13, 2013
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「小栗上野介忠順」(209)


 江戸城の大広間に閣僚、重臣達が声を殺して居並んでいる。

 会津藩主、桑名藩主の兄弟藩主もその中に居た。

 列座の中に小栗上野介が着座し、例の底光りする眼を光らせ、傍らに肥満し

た体躯の大鳥圭介が控えていた。

「上様の御成りにございまする」

 その声を合図に慶喜が平伏する一座の前に姿を現した。

 常の颯爽とした風采は影を潜め、悄然と肩を落とし憔悴した顔付で上座に

腰を据え、落ち着かない態度で一座に視線を這わせている。

 鳥羽伏見の戦闘に敗れ大阪城に置き捨てられた敗軍の将達が、眼光を鋭く

させ、慶喜を見据え怒りの炎を燃えたたせている。

 満座には重苦しく張りつめた空気が漂い、慶喜が成す事もなく無言でいる。

 そんな雰囲気を破るような上野介の叱責の声で激論が始まった。

「上様、何ゆえの御東帰に御座います。交戦中の将兵を置き捨て逃げ帰ると

は、武門の頭領として不覚後に御座いまするぞ」

 静まりかえった大広間に上野介の声が響き渡った。慶喜は顔色をなくし顔を

伏せている。同行した者達も一様に声なく黙している。

 上野介が眼を据え一座を見廻し、更に叱責した。

「たとえ緒戦に敗れたとしても、大阪城には一万の精兵が居り、江戸には洋式

陸軍と旗本直参が予備隊として満を持しておりました」

「・・・・」

 慶喜は蒼白な顔を伏せている。

「それがしは仏国士官と五千の洋式軍を率い西上せんと、急使を発し大阪城

にて鎮静ありたいとお知らせ申した筈。五千にも満たない敵兵なんぞ一瞬のう

ちに鎮圧出来る状況に御座いました。それを待たずに部下を欺き、極秘裏に

お一人で逃亡されるなんぞは、古今東西聞いたこともない醜態に御座います」

 上野介の剽悍な眼が剥かれ、益々、舌鋒が鋭くなっている。

 主戦派の面々は内心で快哉を叫んでいる。

「ご老中も然りにござる。何故、一命を賭けて御引止め成されなんだ」

 今度は板倉勝静に咬み付いた、慶喜が弱々しく言いわけをした。

「余は朝敵と成ることを恐れた」

 その言葉に上野介が不思議な生き物を見るように慶喜を眺め、一座の将達

が呆れ顔をしている。上野介が声を低めた。

「ご返答に成ってはおりませぬ。卑しくも聡明で聞こえられた上様の御答とは

思われませぬ。此の時節に錦旗なんぞ御信じ成されることこそ笑止。錦旗なん

ぞが存在する事が摩訶不思議に御座います。冷静に考えれば分別がつき申

す、たかが錦旗が揚がった事で、朝廷を恐れ敵前逃亡は解しかねます」

「上野介殿、お言葉が過ぎ申すぞ」

 見兼ねた板倉勝静が低い声で注意を与えた。

「黙られよ、我等は徳川譜代の臣下に御座る。どの面を下げて東照神君さまに

お目にかかれましょぅや。薩長土の三藩を叩き潰せば、朝廷は昔日の姿に戻り

ます。我等は其のことに意を注いで参った」

 上野介の言葉は説得力に溢れている。列座の者は彼が幕府再建の為に金策

から、製鉄所建設、最新の洋式軍の養成と次々と改革を推し進めて来たことを

見て来た。其れだけに彼の言い分と勝利への執念は充分に分かっていた。

 その日から翌日まで喧々諤々と議論が交わされ、小田原評定の呈と成り、

休息を挟んで延々と激論空論が交わされたのだ。

 会津、桑名の両侯は上野介の進言に大いに共感した。幕府は強力な陸軍と

海軍を擁している、更に両藩の将兵の戦意は旺盛で、東北諸藩は全てが幕府

寄りの姿勢を示していた。今が勝機じゃ、両侯は直感として感じた。


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Last updated  Dec 13, 2013 11:14:36 AM
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