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Dec 21, 2013
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「小栗上野介忠順」(212)


「上様は政治事を朝廷にお返し申しましたな。・・・今度の戦いで勝利すれば、

政権は再び上様の肩にかかって参ります。それをお望みに御座いますか」

「・・・・・」

 勝海舟の言葉に慶喜の眼差しが暗く変貌した。勝は煽るように言葉を掛けた。

「上様は徳川家の藩主のみの政治を成されませ、それがしは上様のご苦労を

思うと、日本国の政治事に関与されない事が上様の御為と考えます」

 勝海舟の囁きは、慶喜にとり暗に再戦を中止せよと聞こえた。

「勝、上野介は余に薩長は全ての旧体制を灰燼に帰すと申しよった」

「左様、彼等の狙いは古い体制を打ち壊し、新しい国体を作ることが目的です」

 勝海舟はおうむ返しに応じた。

「・・・ならば余に残された道は再戦しかないの」

 慶喜が端正な顔を歪め苦渋の声を挙げた。

 勝海舟はそんな慶喜を見つめ、口を閉ざしていたが思いもせぬ言葉を発した。

「恐れ大いことをお訊ねいたします」

「何が知りたい」

「上様には恭順の御心はございまするか、もしおありとすればそれがしが一命を

懸け、薩長と掛け合い申しますが」

 と言いつのり慶喜の反応を盗み見ている。

「余は鳥羽伏見の戦闘も本意ではなかった。大阪から東帰と決めた時より恭順

と覚悟を決めておったのじゃ」

 勝海舟が威儀を正し、低い声を発した。

「ならば恭順なされませ。後の処置はそれがしが行いまする。恭順成されば

朝敵の汚名から逃れる事が出来申す」

 二人の間に重苦しい空気が充満している。

「恭順か、・・・余は明日の軍議に臨み如何致したら良い」

「再戦の取り止めを宣言なされませ。この件はそれがしもお手伝いは叶いませ

ぬ、飽く迄も上様の御考えとし閣僚、重臣の方々を納得させる事が肝要に御座

います」

 勝海舟の脳裡に上野介の剽悍な顔が浮かんだ。幕閣での最強の相手である。

 今回の動機は列国の思惑を心配し慶喜に面会したのだが、慶喜と話すうちに

思いもせぬ方向に話しが逸れていった。勝海舟はそれならばそれでよしとの考

えになった。

「余はこの後もそなたを頼りに致す」

 慶喜が縋るような目付きをしている、勝海舟は大きく肯いた。

「それがしにお任せ下され」

 二人の極秘会談から、慶喜の行動が再び蛇行して行くのであった。

 翌朝、江戸城に三々五々と閣僚、重臣が登城して来た。

 何れも意気軒昂とし、再戦への強い思いを胸に秘めている。

 各人は定めの座で慶喜の現れる時を待ち受けている。暫くし慶喜が姿を

みせ、一同の前に座った。全員が固唾をのんで彼の言葉を待っている。

 痰を切るように空咳をした慶喜の顔色が冴えない。上野介は素早く主の

変化に気付いた。傍らの大鳥圭介が低い声で囁いた。

「上様の様子が優れませぬな」

 上野介は妙な胸騒ぎを覚えつつ、慶喜に言葉を懸けた。

「上様、再戦の軍議をお願い仕ります」

 その声で一座の者が息を殺し、慶喜を見上げた。

「軍議は無用じゃ、再戦は中止と致す」

 擦れ声で慶喜が驚嘆すべき言葉を発した。突然の再戦中止宣言に一瞬

大広間に静寂が支配し、事態の深刻を悟った面々が喚き声を挙げはじめた。

 上野介も瞬間、呆然としたが無意識に立ち上がり一座を静止した。

「お静かに成されよ」

 上野介が剽悍に眼を炯々とさせ慶喜を凝視している。それは不遜ともとれる

態度である、老中の板倉勝静がすかさず忠告した。

「小栗殿、上様の御前じゃ、お座りなされ」

「黙られよ。如何に上様とて今のお言葉は聞き捨てがたし、上様は何と仰せに

成られました。それがしの聞き違いに御座いますか、再戦中止と聞こえ申した

が、真に御座いますか」

 慶喜の顔から血の気が引き蒼白と成っているが、眼だけが狡猾に動いてい

る。それは武門の頭領たる武人の目ではなかった。


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Last updated  Dec 21, 2013 12:45:44 PM
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