1177996 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

アーモンドチョコレ… New! 千菊丸2151さん

寿司とうなぎ! New! 韓国の達人!さん

フリマとかPayPayの… New! Pearunさん

^-^◆ あか・あお・… New! 和活喜さん

リュウちゃんの日記… flamenco22さん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Oct 17, 2014
XML
「武田三将vs上杉政虎」(66章)

にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ



 勘助が居ずまいを正した。氏真は信虎の娘孫であり、信玄には従弟となる。

「御屋形、まことの事を申しても宜しゅうござるか?」   

 勘助が隻眼を光らせ、信玄の顔を見つめた。

「許す」

「亡くなられた義元さまに似ぬ腰抜け、忍びの知らせでは弔い合戦を行う

気概もなく蹴鞠に現を抜かし、酒と女子に溺れておるそうにございます」

「余にも聞こえておる。このままでは父上の身に危険が迫ろう」

 信玄の言葉の裏は読みとれる。大殿が駿府に止まり、今迄通りに謀略を

続け今川に洩れたら、大殿自身が危うくなると信玄は心配しているのだ。

「御屋形の心配は的を得ております。いかが為されます?」  

 勘助が信玄の髭跡の濃い顔を仰ぎみた。

「京に隠遁を勧めるつもりじゃ、そちに何か思案はあるか?」

「我等と今川家の関係が悪化いたせば、大殿が真っ先に狙われます」

「そうじゃ、京は父上の夢でもあった。公家とも親しいお方も居られる」

 信玄が扇子で肩を叩いて応じた。

「拙者が手をうちまする」   

「遣ってくれるか?」

「今のうちから手をうてば、大殿は安全に駿府城から退去できましょう」

「策は?」  

「武田の忍びも力をつけました、彼等を使いまする」

「うむ、手段はそちに任せる」  

 信玄が満足そうに肯いた。

「御屋形、お耳の痛い話にございますが、お聞き頂けますか?」

「なんじゃ」  

 勘助の言葉に信玄が不審そうな眼差しをした。

「板垣信憲(のぶのり)殿の事にございます」  

「信憲がいかがいたした」

「亡き信方さまには申し訳ありませぬが、信憲殿には将器が欠けております」

「そちも心配しておったか?」  

 信玄が勘助の言葉に即答した。

「御屋形もご存じにございましたか?」  

「・・・-」

 信玄は無言でいる。重臣であっても家臣の欠点を話してはならぬ。

 信玄は、そう信じて来たのだ。

「きたる大戦を控え赤備えの将としては心許なく感じておりました。山県殿

に赤備えの将を命じ、信憲殿には上原城郡代にと思案いたしておりました」

「将器なき者が将では将兵の不幸、余から信憲に申し伝える」

「有り難き仰せにございます」

 勘助は信玄の成長に感激した、すでに堂々たる武将である。これで心置きな

く越後勢と戦える。

 暫く二人は今後の相談をし、勘助は館を辞し屋敷に戻った。

 屋敷にはお弓の姿が消えていた、勘助の登城を見送り旅発ったという。

「さても、早きことじゃ」 

 勘助は昨夜のお弓の膚の感触を思いだしながら自室に籠もった。

 今の勘助には思案する事がいくらでもある。

 先刻、御屋形に語った越後勢との勝負は、五分でよいと勘助は見極めていた。

 政虎の置かれた立場を冷静に分析すれば、彼等には勝敗を度外視した名分が

必要であるが、我等は負けない戦いで充分である。この合戦を境に上杉家は

本格的な関東攻めを始めるとよんでいた。

 信憲殿の件もしかりである。彼は今まで赤備えを率い無難にこなしてきたが、

この度の合戦では信憲の勢から味方が崩れる、そんな予感を感じていたのだ。

 それは最近、赤備えの将兵から不満の声が洩れていたのだ。将兵の不満は

信憲の消極的な戦法にあった。

 武田勢の中で赤備え、黒備えの将兵は特に信念と誇りが一番に強くあった。

 合戦になれば真っ先に先鋒とし敵勢に突撃する。それが将兵の誇りであった。

 その赤備えの将兵が不満を漏らすと言う事は、見逃せぬ問題であった。

 これでは来る越後勢との合戦では勝てぬ。信憲は武将ではなく官吏として

の資質があり、領内治世なれば安心して任せられる。

 そこに着目した進言であった。

 あとは自分の問題である。御屋形がどう仰せになろうとも、来る合戦を機に

世間から消えなくてはならない。

 これは信虎と勘助両人の了解ごとであった。

「討死いたせ」  

 この言葉の意味は、信虎の跡を継ぎ甲斐の捨石となれとの、伝言である。

 武田家の御旗を京に翻すには、謀略につぐ謀略が必要である。

 身を斬られるよりも淋しい事であるが、自分以外これを遣れる者は居ない。

 信玄公と別れる辛さが身を苛んだ、それが数ヶ月後と知ると心が震えた。

 勘助は秘かに影武者の用意も整え、来るべき合戦で討死を偽装する計画を

練っていたのだ。もう、大殿は若くはないのだ。  

「あと二ヶ月か三ヶ月後か」  

 勘助が隻眼を潤ませ低く呟いた。


 関東管領の名跡を継いだ上杉政虎率いる、一万七千名が春日山城を出たと

の知らせが、海津城代の高坂弾正昌信にもたらされたのは七月の末である。

 直ちにその知らせは躑躅ケ崎館に狼煙でもって伝えられた。

「出おったか、越後のいくさ気狂い」

 信玄は馬場美濃守信春、飯富兵部小輔虎昌の二将を先鋒として差し向けた。

 これは勘助と以前より話し合った結論である。海津城に武田家の誇る名将

三名が詰めた事になる。本隊が不測の事態で遅延しても、なんら心配のない

態勢をとったのだ。

 八月下旬に越後勢は新井宿からと富倉峠を越え、善光寺に着陣し、兵の部署

割りを行っている。この越後勢の動きは、逐一、武田の忍びの頭領河野晋作よ

り、古府中の躑躅ケ崎館に知らされていた。

「いつも同じ手口じゃな」  

 信玄の顔に皮肉な笑みが浮かんだ。

 勘助は彼我の兵力に思いを馳せていた。多分、我等は総勢二万余であろう。

 敵に対し数で上廻る兵力と海津城がある。既に馬場勢と飯富勢五千が入城を

果たし、総勢八千名が満を持して籠城している。

「御屋形、いっそ海津城のみで越後勢と戦いますか?」

 勘助が自信たっぷりの冗談を言っている。

「それも面白いの」  

 信玄にもその気持ちがあるようだ。

 越後勢の一万七千の大軍に八千の籠城兵、一度戦ってみたい誘惑にかられた。

「毘沙門天の化身と武田家の名将三名の合戦はいかがなりますかな」

「余も一度、見たいものじゃ」  

「さぞや猛烈な合戦となりましょうな」

 勘助が異相な顔付で信玄の肉太い顔を見つめた。

「じゃが駄目じゃ。此度の合戦は有無の一戦じゃ。余と政虎でなければならぬ」

 信玄、この時四十一才であった。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Oct 18, 2014 04:10:09 PM
コメント(53) | コメントを書く
[武田信玄上洛の道。] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.