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Jan 22, 2015
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「駿府城攻略)」(90章)


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        (侵略すること火の如く)

 武田勢の攻撃が始まるや、前衛に大鎧の将が現れ采配を揮っている。

「怯むでない。相手は騎馬武者じゃ。鉄砲で射とめよ、配置に就け」

 野太くしわ深い声を張りあげている。

 その下知で今川勢の鉄砲足軽が狭い峠道の柵内に、散開し筒先を揃えた。

「まだ早いが、流石に今川家じゃ。まだあのような男が居ったか」  

 信玄が鋭い眼差しで今川勢の様子を眺め、低く呟いた。

 信玄は鉄砲を重視しない武将であった。当時の火縄銃は音だけが大きく、

命中精度は極めて悪い武器であった。

 武田勢には鉄砲隊に代わって礫隊があった、投石で鉄砲に対抗したのだ。

 山県三郎兵衛が鉄砲隊をものともせずに、猛然と騎馬を駆けさせている。

 恐れを知らぬ猛将の性(さが)である。

 喊声と蹄の音が轟き天地が揺れ、赤備えの騎馬軍団が後続している。

 今川勢の鉄砲が一斉に轟音を響かせ火蓋が切られた、銃声が峠に木霊した。

 その硝煙の中を物ともせず、赤備えが猛進し、敵の前衛に衝きかかった。

 一瞬に敵の前衛が砕け散り、山県勢の騎馬武者が裂け目を広げた。

「今ぞ、騎馬隊に続くのじゃ」

 その命で長柄槍隊が一団となって敵の前衛に砂塵を巻き上げ突撃した。

 混戦の中、三郎兵衛を頂点とし騎馬武者が遮二無二、敵勢に突き進んで行く。

 悲鳴をあげ峠から崖下に転がり落ちる敵兵の姿が見える。

 百足衆が猛然と駆け戻り大声で戦況を報告した。  

「敵勢、退いております」

 真っ先に総大将の庵原安房守が逃げ去る姿が望見される。

「突撃の法螺貝を吹け」  

 信玄の下知で冬空に法螺貝が鳴り響き、二陣の黒備えの甘利昌忠の勢が

動きだした。武田菱の指物を背に足軽勢も一斉に喚声をあげ、追撃に移った。

 本陣より乱れ太鼓が打ち鳴らされ、武田勢が小山のように進撃を開始した。

 峠の中ほどで怒号と悲鳴、喚声と地鳴りの音が聞こえてくる。

 峠を下れば駿府城は目と鼻の先である。

「御屋形さま、あれをご覧下され」  

 陣場奉行の原隼人が驚きの声をあげ指をさした。今川勢は駿府城に入らず、

素通りして潰走している。

「駿府城を奪うのじゃ」  

 信玄が鋭い声で命じ、百足衆が各陣営に駆けて行く。

「おうっー」  

 雄叫びをあげた武田勢が駿府城の大手門に急行している。

 城門はわけなく十文字に開けられ、一斉に将兵が突入しているが

干戈の音が聞こえてこない。 

 (氏真、逃亡を計ったな)と信玄は悟った。 

「各勢は城を包囲いたせ」

 信玄の下知で武田勢が駿府城を包囲した、その勢一万八千名の旗指物が

冬空に翻っている。  

「これが音に聞こえた今川勢か」

 信玄を囲んで馬場美濃守信春と内藤修理助昌豊の両将か唖然としている。

 既に駿府城は無人と化していたのだ。

 国主の今川氏真は緒戦の報告を聴くや、二千の兵を伴い裏手の搦め手より

逃亡していたのだ。戦う意地も勇気もない男であった。

 このような男が名門、今川家の当主であることが悲劇であった。

 氏真は大井川を渡河し、遠江の掛川城に向かって逃走していた。

 掛川城の守将は、今川家で猛将の誉れの高い朝比奈泰朝(やすとも)であり、

三千の兵力で守りを固めていた。

 氏真が駿府城を逃亡した時には二千の兵が付き従っていたが、途中で逃亡

離散し、掛川城に着いた時には、百名ほどに減っていたといわれる。

 この逃亡時、氏真の正室早川殿(北条氏康の娘)や侍女らは輿の用意もなく、

徒歩で逃げるという悲惨なものであったと伝えられている。

 こうして今川勢は本格的な合戦を行わずに敗れ、十二月十三日に武田勢は

駿府城に入城した。

  
 さらに駿府城の支城である愛宕山城や八幡城も武田勢に落とされた。

 信玄は北条家に対し、「上杉と今川が示し合わせ武田家を滅亡させようと

したことが明らかになったので今川家を討つ」と説明していたが、娘が徒歩で

逃げる羽目になったことに激怒した隠居の、北条氏康は武田家との同盟破棄を

決意した。北条氏政は氏真の援軍要請を受けて十二月十二日に駿河の援軍に

向かったが、時遅くなり伊豆三島に対陣するに留まった。

 信玄は念願の駿河を手に入れ、直ちに塩を確保し岩淵より富士川を利して

甲斐に運び入れた。時に永禄十一年十二月のことであった。

「御屋形さま」  

 駿府城の信玄の許に、河野晋作が緊迫した顔をみせたのは、年も押し迫った

晩の事であった。  

「北条勢、動きよったか?」

 信玄が驚きもせずに訊ねた、これは予期したことであった。

「はい、氏真殿の要請を受けた北条氏政殿、軍勢を繰り出した模様にございます」  

「氏真め、妻の実家に助けを求めたか」

 信玄にとり驚くことではなかった、武田家の駿河進攻で長年に渡る三国同盟が、

これで破却をみたのだ。  

「掛川城はいかがじゃ?」

「流石に朝比奈泰朝、老練にございます。徳川勢五千名に対し、一歩も引かず

籠城いたしております」

「ご苦労であった。引き続き北条勢から目を離すなよ」

 信玄は一人となって今後のことを熟慮していた。下手をうてば北条勢と徳川勢

を敵に廻すことになる、補給路も伸びきっている。まずは塩を確保したことで

上出来か、ここは一旦、軍勢を引くか。

 併し、徳川家康め、若いが遣ることが早い。信玄が感心している。

 信玄が駿河攻略に出るや、徳川勢はすかさず浜名湖と天龍川の中間地点に

ある引馬城を陥し、掛川城を包囲した。

 掛川城が陥ちたとしたら、遠江一帯が徳川家康の支配地となる確率が高い。

「五月蝿い男が尾張の前に居る」  

 信玄が思わず独り言を呟いた。

 上洛は信玄の夢である。その最強の敵となる人物は織田信長に成ろうと信虎と

勘助からも、知らせがもたらされている。その信長の盟友である三河の徳川家康

が、遠江まで押さえる勢いで東進しているのだ。

「何か手を打たねばなるまいな」

 信玄は徳川対策を思案していた。

 信玄が再び北条家と仲直りをし上洛を目指す、西上作戦の開始は甲相同盟を

回復した後の、元亀三年年(一五七二年)十月まで大きく遅れることになる。

 この事が信玄を苦難に貶める原因と成るとは、誰も知る由もないことであった。


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Last updated  Jan 22, 2015 02:28:02 PM
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