1178001 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

レディ・ファントム… New! 千菊丸2151さん

寿司とうなぎ! New! 韓国の達人!さん

フリマとかPayPayの… New! Pearunさん

^-^◆ あか・あお・… New! 和活喜さん

リュウちゃんの日記… flamenco22さん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Mar 17, 2015
XML
「上洛軍出撃す」(102章)


にほんブログ村

にほんブログ村

   (武田勢、秋葉街道を南下する)

「御屋形、ご本陣の配置はいかように成されます?」

「馬場美濃守、心配はいらぬ。余の本陣は旗本に守らせ変幻自在といたす」

 信玄が珍しく巨眼を和ませている。

「そうなりますと先鋒は、矢張り山県殿にございますな」

 代わって高坂弾正昌信が訊ね、甘利昌忠が興味深く聞き入っている。

「いや、途中で三郎兵衛には別命を与える積りじゃ」  

「はて合点が参りませぬな」  

 馬場美濃守信春ともあろう武将が首をひねっている。

「本隊の出陣は基本通り高遠城といたす。全軍は秋葉街道を南下いたし、

青崩峠の犬居城に向う。犬居城の天野景貫(かげつら)が我家に降った」

「何とあの天野景貫が味方と成りましたか?」

 秋山信友が驚いた顔付をした。

「犬居城から三郎兵衛は三河の東を狙うのじや。長篠城、野田城が当面の

目標となろうが、無理は禁物じゃ。三河の豪族を牽制する事が目的じゃ」

 信玄が床几を廻し、肘を載せ一座を見廻している。

「これは壮大な戦略ですな」  

 高坂弾正が唸った。

 この天野景貫と言う武将は今川家に属していたが、義元の死を契機とし、

徳川家康に属し、武田家の信濃の押さえとして犬居城で睨みを利かせていた。

 併し、武田勢の上洛の噂を聞き、景貫は武田家に与力をし三河侵略の先導

役として活躍する事に成るのだ。

 まさに信玄の戦略は壮大で巧緻なものであった。

 当面の攻略地の遠江を視野に入れながら、三河、美濃までも含めた信玄の

上洛戦略を、初めてこの場の武将は知らされたのだ。

元亀三年(一五七二年)十月三日、仏法の庇護者でもある信玄は将軍、

足利義昭の信長討伐令の呼びかけに応じ、甲斐の躑躅ケ崎館を出陣した。  

 諏訪の高遠城に入り、各地の軍勢の集結を待って西上の征途に就くのだ。

 黒鹿毛の駿馬に跨り諏訪法性の兜をかむり、鎧の上から緋の法衣を纏って

の出陣であった。

 十月の冷気が信玄の身内を引き締め尊厳な想いがする。

 信玄の本陣は軍勢の最先端に位置し、諏訪法性の御旗と孫子の御旗が強い

風をうけ靡いている。

 本陣には旗本の今井信昌や真田昌輝、岩手信盛等の猛者が守りを固めている。

 後続する軍勢は甲斐の躑躅ケ崎館の直属部隊で、旗、幟、旌旗が威風堂々と

翻っている。

 これが甲斐を見る最後かも知れぬ、信玄は兜を深く被り眼庇より、見慣れた

風景に惜別の視線を這わせた。

 長い合戦の場面が蘇ってくると同時に、病魔への恐れが胸中を過った。

 これからは寒気で震える真冬の季節に向うのだ。

 己が病魔に打ち勝ち、家康、信長を蹴散らし上洛できるか、それは疑問で

あるが、成し遂げねばならない。

 信玄が無意識に館にむかって片腕を突き上げた。

 これは己自身を鼓舞する無感覚の動きであった。

「御屋形さまが手を振っておられるぞ」

 躑躅ケ崎館に残る留守部隊と行軍の将兵が雄叫びを挙げた。

 館の門前には留守居の者に交じり、煌びやかな衣装姿の女衆も見送っている。

 そこには信玄の愛妾達の姿も見えるが、正室の三条の方は見えない。

 彼女は三年前の元亀元年に病没していた。

 信玄は万感の思いを振り払い愛馬を急がせた。

 百足衆も代替わりし、若い精悍な面魂をもった武者に代わっていた。

「笠井頼重」  

「はっ」  

 百足の指物を背負った黒具足の武者が、見事な手綱さばきで寄ってきた。

 彼が百足衆の組頭である。

「しばらく皆の疾走する英姿が見たい、騎馬を駆けさせよ」

「心得ました」  

 笠井頼重が大きく騎馬を旋回させるや、百足衆が猛然と疾走を始めた。

 背の武田菱の指物が折れんばかりに風を受け撓(いな)っている。

「見事じゃ」  

 信玄が遠ざかる六騎の英姿を眺め満足そうに呟いた。

 軍勢は棒道に入った。この道は若い時期に信玄が信濃攻略の為に

作った軍事道路で、信玄の棒道と云われていた。

 紅葉真っ盛りの道を進み佐久に向かった。諏訪、高遠城は甲斐から最も

近い場所に位置している。

「見事な紅葉じゃ」

「左様にございますな」

 旗本の一人が目を細め紅葉を愛でている。

 信玄は高遠城を上洛の為の兵站基地として使う考えであった。

 城代の秋山伯耆守信友は、信玄が入城すると直ちに配下の伊那衆を主力に、

東美濃に軍勢を進めていった。目指すは信長の膝元、東美濃にある岩村城と

明智城の攻略である。

 続々と各地から上洛の将兵が集まり、二千名の北条家の援兵も到着した。

 夕刻と同時に無数の炊飯の煙が高遠城の上空を漂っている。

 信玄は各将を大広間に集め上洛の意義を語り、檄をとばした。

 翌朝、山県三郎兵衛昌景率いる、赤備え勢五千が粛々と出陣した。

 この軍勢は先遣部隊とし、降った遠江の犬居城を一路目指しているのだ。

 遅れて信玄率いる本隊二万七千名が高遠城から出陣した。

 軍勢は基本方針通り秋葉街道を南下した。先鋒は小山田信茂勢が当たった。

 秋葉山は紅葉の盛りであった、信玄は輿に乗って中陣にいる。

 出来るだけ躯を休める、寿命と時の経過との鬩ぎ合いと信玄は考えていた。

 延々と武田軍団は山間の街道を進んでいる、甲斐と遠江の国境を越え目的の

犬居城の天守が樹木の間から見えてきた。

 ここから浜松城までは約二十里の距離である。

 前方に平服姿で騎乗した一人の武士が武田軍団を出迎えていた。

 犬居城主の天野景貫であった。

「お初にお目にかかります。天野景貫にございます」 

 中年の武将が緊張した様子で丁重に挨拶を述べた。

「ご苦労じゃ」  

 信玄が声をかけた。

 天野景貫の案内で信玄をはじめとする、武将連が犬居城に入城した。

「余に与力いたし感謝しておる」  

 信玄が緋の法衣を纏い天野景貫に労いの言葉をかけた。  

「恐れいりまする。これより遠江、三河の領土をご案内仕ります」

「天野殿、馬場美濃守にござる。ご助勢かたじけない、数日休息いたし、

軍勢を分けます。一軍は四郎勝頼さまが指揮いたし只来城を陥とし二俣城

に向かいます。ご貴殿には先導をお願いいたす」

「畏まりました。ご貴殿が鬼美濃と異名される、馬場殿ございますか?」  

 天野景貫が慌てて平伏した。

 信玄は無言で座布団に腰を据えているが、圧倒する気迫を漲らせている。

 天野景貫は信玄や馬場美濃守の前で、自分の器量の小ささを思い知らされた。

「山県昌景の軍勢がここを発ったのは何日にござる?」

 馬場美濃守が戦場焼けした野太い声で糺した。 

「五日前にございます」  

「何か申し残した事は御座らぬか?」

「間者の報告によれば長篠城は、徳川から離脱した由にございます。山県さま

は長篠城に押し入り、真偽をお知らせ致すとのお言葉に御座いました」

「左様か」  

「いかにも三郎兵衛らしき言葉よな」  

 信玄が笑みを浮かべた。



PVアクセスランキング にほんブログ村





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Mar 17, 2015 05:18:16 PM
コメント(80) | コメントを書く
[武田信玄上洛の道。] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.