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カテゴリ:我が良き虫の世かな
ミヤマクワガタは温かい腐葉土に包まれて夢見がてら去年の夏の昆虫大相撲の事を考えていた。 西の正横綱でありながら東の正横綱カブトムシに297連勝を許し、連勝ストップは小兵のゲンゴロウに譲り、自分の横綱としての責任や価値について考えていた。
「悔しい。」
その一言だったが、結果は結果だ。受け入れるしかない。
ゲンゴロウごときに負けたショックで戦意を無くしたカブトムシに勝って、今年の夏場所は晴れて東の正横綱だが、今度は堂々とさすがと言われる様な、見事な勝ちっぷりで勝ちたいものだと思った。 こうして考えていると、自然と体が動き、気持ちは高ぶり、息遣いが荒くなる。今はまだ冬。こんな事をしていては冬眠には良くないのは分かっている。出来るだけ体力を温存しなければならないのだ。 しかし、20年余りカブトムシに独走を許したのは事実だ。 昆虫の場合短命なため、年ごとに種族別の代表を決めて戦うのだから、自分ひとりの責任ではないのだが。 ミヤマクワガタはいつしかカブトムシとの対決に備えてイメージトレーニングを始めた。 がっぷりよつに来たら、右に交わして得意のクワではさみ投げ。 突きで来たら下からクワをあてがい、下から差し込みクワすくい。 あの角でつりだしに来たら、4本の足を絡めてどうにかしのいで、頃合いを見計って逆に大技クワばさみだ。 足を狙って倒しに来たら、カブトムシより重心が低いのを活かして、胸に頭をつけて腰を寄せて一気の寄り倒し。 そんな事に構わず、ただやみくもに押し出しに来たら。
来たら・・・・・・・
その時は下に潜って後に出て、このまま反対に突き抜ければゲンゴロウだが、グッと堪えて背中に回り込み送り出しだ。
イメージの中ではいつも東の正横綱のクワガタの長い冬はまだまだ続く。
人間の世界では、もう直ぐ初場所の頃だろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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