山岡淳一郎著「後藤新平 日本の羅針盤となった男」前半読了
今日何気なく銀行口座をみたら、覚えのない金額が入金されている。???と思ったら、ブッシュ政権の景気刺激策の税金還元、一人頭600ドルが入金されていたのでした。さてさて、今日は一日天気がよくないので、友人とお茶する以外は家で読書です。(傍らでボスからの仕事待ちを利用してです。)今日の本は、後藤新平の本。学者ではなくノンフィクション作家が書いているので、肩がこらずに面白く読めます。後藤新平といえば、明治期の台湾統治(民政長官)、初代満鉄総裁、東京市長が思い浮かぶが、今日は台湾統治までの話。全然知りませんでしたが、もともとお医者さん。しかも、有名な高野長英の子孫。そして、社会人になって出世する糸口を与えてくれたのが、横井小楠の弟子。優秀な人は優秀な人に出会います。もともと型破りな野人だった後藤をみて、医学を志すように導いてくれて、とんとん拍子に出世していき、内務省の役人にまでなるのだが、超頑固でうそをつくのが大嫌いなところが災いして刑務所行き。それでも、またもや恩師などの働きかけにより出獄。西南戦争のときに兵隊たちの伝染病などが蔓延しないように検疫事業をやった経験を買われて、日清戦争後の兵隊たちの検疫事業を児玉源太郎の庇護の下一任されて、大成功を収める。(まあ、死者は当然でてるけど、かなり水際でがんばった)面白いことに、そのときの報告書を政府が英訳、欧米諸国に配布して、絶賛されている。ここで児玉・後藤コンビができあがった。児玉という人は肝っ玉の座った人で、後藤を信じたら、何が何でもかばいにかばった。検疫事業が終わったあと、後藤が児玉に挨拶にいったら、月桂冠だといって桐箱をくれてあとで開けてみろという。で、後藤が開けてみたら、後藤への不平不満を書いた電報や手紙など数千通がぎっしり入っていた。これだけのものが送りつけられてもびくともせずに後藤に好きなだけやらせたのはすごい。その後児玉が台湾総督になると、民政長官として呼ばれて、アヘン撲滅運動、製糖事業、衛生事業、反日勢力の平定、治水事業、土地台帳整備、台湾銀行設立、など台湾開発インフラをほぼ一手に整備する。ここでよくいうのが、全部日本の制度を台湾に押し付けても、ひらめの目を鯛のようにできないのと同じように、無理があるから、現地制度を活用していく。でも、後藤新平の何が面白いって、決してめげない。そして、建白書を片手に猛烈に政治家などにアタック。しかも一件ではない。片っ端から建白書を作りまくる。まあ、明治という近代国家・日本を作る段階だったから、まだ制度そのものが存在してなくて、元老たちも何をやったらいいのかよくわかっていないころでもあるので、案外若者の案は大物政治家にも聞いてもらえたのかもしれない。そのエネルギーたるや凄まじい。一日3時間程度しか寝てなくて、後は猛然と仕事に対してのめりこんでいる。いまどきのやる気のない日本人たちにつめの垢でもせんじて飲ませたいくらい。ではこのエネルギーの元は何か?著者は、こう説明する。「後藤新平の人生が華麗な輝きを放つのは、人間の群れが生き続けるために必要な「公共(パブリック、コモン)」の「経綸(国家の統治策)」という発光体を持っていたからだ。それは、権力者が民衆に忠誠を強いる滅私奉公の公ではなく、為政者自身が「私」を捨てて、大衆とともに生きようとする思考の基盤であった。」なかなかいい言葉だと思いませんか?経綸ということばにすでに説明をつけなきゃいけない今日の常識の低さを嘆くのは別にして、いまどきの言葉で言えば、「グッドガバナンス」という言葉が一番近いのではなかろうか。いまこういう政治家っていないですねえ。逆に正反対の政治家として、安倍元首相、ブッシュなど山のようにを思いつけるのに。場が読めないなんていわれたけれど、そもそも大衆とともに生きようなんて発想がかけらもなかったのではないだろうか?年金問題?そんなの自分の蓄財があるでしょう、一応国民の前では謝るけどさ、俺のせいじゃないし。なんて思っているから、ああいうことになる。もっと国民とともに生きるつもりでいたら、年金庁の役人いったん全員即くびでしょう。政治生命をかける場が最初っから間違ってる。ブッシュの約束を守るために小沢と話そうとして一度くらい断られたら辞めちゃう?おいおい、何かボタンを掛け違っていないかい?って国民につっこまれるだろうに。ブッシュもまた同じ。イラクで勝ってる、勝ってるなんて言っておきながら、治安は全然よくならないし、内乱まで起きる始末。そしてまた経済が悪くなっているのに、ブッシュ政権のレガシー(遺産)は経済成長だよん、なんて寝言を最近までほざいている。みんなに、あんた大丈夫?なんてこき下ろされている。まあ、昔からアホな発言ばかりしてましたが。(NASAは宇宙事業をやります、とか輸出のほとんどは外国からきます、とか。本気でこいつMBAとったんか?イエール大学の大いなる汚点ですね)後藤新平なんて人を見てると、これを実現したいから役人になるんだとか、政治家にアプローチするんだとか、意気込みってものがあります。実現したいことが自分の栄達ではなくて、みんなにとっていいこと。社会保障制度を作らなきゃ、社会の基盤が作れない、と強烈に思うから、そしてそれに絶対の自信があるから、どんな政治家でも説得できると絶対的に信じ込めるから、魅力的に見えるんでしょうね。まあ、一種の夢をみんなで共有させられる力、というべきだろうか。晩年の写真を見ても、どこか少年がそのまま大人になっちゃった感じがどことなくする。さて、最後に大学時代の教授が言っていた、素敵な言葉で締めくくろう。「人生は夢に日付を入れること」そういう人生を後藤新平は生きたんだと思います。