ハロイ法について
普通森田理論の講話を頼むと、講師が用意した原稿を時間の大部分を使って説明される。その後、わずかな残り時間を使って質問に答えるパターンが多い。これだと1週間もすれば講師がどんな話をされたのかほとんど頭に残らない。ノートにメモしていないと、忘却の彼方へと消えてしまうことが多い。そうならないために「ハロイ法」(CBA method)がある。どうするのか。まず相手に、そのことに対する質問を用意させることからスタートする。それが疑問であっても意見であってもかまわない。質問を考え始めると、人びとには自ずと問題意識がちょっと芽生えてくる。具体的には次のように進行する。1、 話す側は、話す内容の見当がつく程度のレジメを、出来れば数日まえ、やむをえなければ当日の早めに聞く側に渡しておく。レジメにするのができない場合は、同じ程度の話をしてそれに代える。2、 聞く側は、それを見聞きして質問を用意する。この時いくつ以上などと質問の数を指定するとよい。3、 次に、聞く側を4,5人の小グループに分ける。各グループは、一人ひとりの質問をまとめて、みんなで一覧一望し、それに基づいて、グループとしての質問を作る。質問の数は、全体の人数や時間にもよるが、一グループ3つか4つに絞っていく。この時質問内容が観念化や抽象化にならないように、また個々の質問の足し算にならないように気をつけたい。それが難しければ、グループとしての代表的な質問を選ぶとよい。4、 各グループは互いに、グループとしての質問内容を全員に発表し合う。5、 他グループから1質問でたら、自分たちのグループの中にあるそれと似た質問を、同時にその場に出すことにする。6、 話す側は、その質問の一つひとつに答えていく。7、 その途中で、質問する側と答える側が、その内容を往復し合う。普通の講話では講師が主役である。聞く人は頭を垂れてありがたく拝聴する脇役である。講話は、主役から脇役に一方的に内容説明されることになる。その方法は相互のやり取りを重視しないので、独りよがりにならざるを得ない。脇役が話の内容に関心があろうがなかろうが、頓着しない。自分がしゃべりたいことのみをしゃべっているので、時として一人相撲を取っている場合がある。聞き手は積極的にその内容にかかわることができないので上の空になってしまうことがある。それに対して「ハロイ法」では、脇役が主役である。講師は主役の質問内容を中心にして話す内容を変えなければならない。質問にないことを用意していても、そのことは特に説明しなくてもかまわない。ところが質問されたことについては、準備していなくても時間を割いて、丁寧に分かりやすく説明する必要がある。聞き手はその質問に対する回答に対して、積極的に関わることが格段に増加する。さらに互いの意見を交換することによって、双方ともテーマに対する見解が深まっていく。この手法は森田理論学習を行う、集談会で応用できないだろうか。例えば「純な心」の学習である。講師の簡単なレジメを参加者に渡す。しばらく時間をとって一人ひとり疑問や質問を考えてもらう。それを3,4人のグループで話してもらう。その疑問や質問を発表する。次にその疑問や質問を踏まえて、講師に講話をしてもらう。こうすれば、ありきたりの講話では得られない学習の成果がもたらせるのではなかろうか。(人間力をフリーズさせているものの正体 藤田英夫 シンポジオン321ページより引用)