カテゴリ:村上春樹
レイモンド・カーヴァーの短編集"What We Talk About When We Talk About Love."のタイトルを意識してつけた題名だそうだ。いかにも村上春樹らしいタイトルのつけ方だ。 この本には、作家としての彼独自のモノの見方・考え方、物書きでありながら何故今まで走り続けてきたか等が淡々と書いてある。 「走ること」を生活に上手く組み込み日常的に継続することで、彼の創作活動をより活性化させ、彼自身の精神&肉体面を支えてきたのがよく分かる。 最近、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉をよく耳にする。 仕事と生活の調和を図っていくという意味の言葉であるが、この意味で、彼は仕事と生活のバランスを器用に保てる人なのだと思う。 物書きの仕事で消耗したものを、走ることで補い、癒す。 走ることで鍛えた集中力と持続力は、そのまま長編作品を生み出す筋力・原動力となる。 仕事と趣味が、静と動が、バランスよく暮らしの中で調和し、何年もの間崩れることなく彼の生活の中で安定して組み込まれている。 彼は、多くの人が認める才能にも恵まれ、時代を味方につけた幸運な作家である。でも、それだけでない。外からは見えにくい地道で継続的な努力によって、後天的に獲得した多くのものが彼を支えてきたのだろう。 マラソンを走ることは、人生を走ることに似ている。 山あり谷あり、楽に走れる時もあれば、目の前の大きな壁にぶつかり苦しい思いをする時もある。心強い伴走者がいる時もあれば、たった一人で苦しい坂を登らないといけない時もある。 人生の後半期に入り体力的なピークを過ぎ肉体的後退感が彼を襲った時、自身の「老い」と真正面に向き合い、その先の「死」までも視野に入れるような文章も目に付いた。 自分の墓碑銘に、刻んで欲しい言葉があるなんて、またその言葉自体も、やっぱり村上春樹らしい、と思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 19, 2007 02:53:53 PM
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