4月21日の金曜行動・トリチウム水海洋排水に関する私見を紹介
4月21日に金曜行動に参加し、希望のエリアと議事堂前でスピーチさせて貰いました。希望のエリアの動画を貼りつけておきます(三輪さん撮影/私の発言は33分20秒~)。開催場所は下の図面。 スピーチでは、フクイチの水の最新情報と、負傷事故の情報、経産省の会議でのプレゼンを紹介しました。福島第一原発/17年4月第三週の汚染水貯留量・滞留量 負傷事故の情報は4月19日付東電の日報から引用します。読み易くするため、段落を付けました。年齢は、記者会見でおしどりマコさんが訊いていたものです。ご本人の、ご快癒をお祈り致します。====負傷事故、引用ここから====※4月19日午前9時8分頃、福島第一原子力発電所構内H1東エリア付近において、大型トラックの荷台の上で鋼材の積み下ろし作業をしていた協力企業作業員(男性・40代)が、足の付け根部を負傷。 午前9時15分に入退域管理棟救急医療室に入室し、医師の診察を受けたところ、緊急搬送の必要があると判断されたため、午前9時25分に救急車を要請。当該作業員は意識があり、身体汚染はなし。 午前9時57分に救急車にて福島第一原子力発電所を出発し、いわき市内の病院へ搬送。病院にて診察を受けた結果、「陰部打撲、会陰部血腫(1週間程度の入院治療を要する)」と診断。====引用、ここまで==== この日の午前中に経産省で行われた会議の名称は「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第4回)」です。資料はこちら(ペーパーレスで、配布されず)。 この会議で行われた、北海学園大学経済学部・濱田武士教授のプレゼンは傾聴に値するものでした。資料へのリンクを貼った上で、「5 ALPS処理水の希釈後に仮に海洋放出した場合の私見」(原文ママ)と、「おわりに」を引用します。====引用ここから====「5 ALPS処理水の希釈後に仮に海洋放出した場合の私見」(5-1)社会的影響は福島県だけに限らない□太平洋側の全漁業者を説得する必要がある。□卸業や小売消費者に対しても説得が必要。それが無けば叩かるのは漁業者。 □影響する全範囲を想定すれば、説得に膨大な時間とコストがかる。(5-2)福島県では緩やかな販路回復モードから一転して「買い控え」モードに□いつまで続くかは想像がつかない。□全国で「買い控え」被害への賠償の発生の可能性。(5-3)買い手側に買いたたく材料を与えることに□産地銘柄劣後の固定化□産地銘柄のアウトレッ化をより強める。 (5-4)海外 ・輸出に与えるインパクト□非関税障壁の材料にされる。□敏感な消費者団体は海外にも存在。(5-5)リスクコミュニケーションでの「買い控え」払拭は無理□魚は大丈夫でも、1Fの過酷事故と海洋汚染の事実は消えない。 □いくら科学的に安全だと言っても心が閉ざされている人には通じない 。□閉ざされている人を無視するというのは、社会的コミュニケーションではない。おわりに□漁業は、獲る人だけでなく魚を流通させ、食べる人が連なって成り立っている。 □食べる人たちには買う自由がある。□少しでも不安のある消費者や流通業はゼロリスクが一番安全だと判断する。(消費者庁が行っている『風評被害に関する意識の実態調査(第9回)』の結果を見ると、「基準値以内であっても少しでもリスクが高まる可能性があり、受け入れられない」が20%程度。→ 「ALPS処理水の放水」となると、より固定化されるか、拡大する恐れ)□放水がなくても福島産の消費回復にはまだまだ時間がかる。 とにかく待つし無い。 □解決策ではないが、 風評対策としては、 検査継続と、 PR活動、 問い合わせの対応、消費者との交流を活発化させ、現状への理解を深めてもらうことなどしかない 。春橋注:「風評被害に関する意識の実態調査(第9回)」の結果(PDF)====引用ここまで==== プレゼン後は質疑応答となり、濱田教授からは以下の発言がありました(記憶とメモに頼っているので、要旨)。「殺人事件があったアパートの部屋は安く貸さざるを得ないし、床に落ちた食べ物を拾っても素直に食べようという気にはなれない。それと同じ感覚」「似たような事例で水俣の例がある。水俣で獲れる魚は、地元の市場で売られて、地魚として流通しているが、今でも、極めて微量だが水銀は検出されている。水俣が50年経っても、この状態」「地元で、漁協の方達も交えた会議体に参加させて頂いているが、地元の雰囲気としては『(回復には)100年かかるのではないか』という感じ」「地元では、東電に対して、『放水・排水に向けた努力よりも、出さない事・貯める事に向けた努力を』という雰囲気・考え方が根強い」 この質疑応答の中で、ある有識者から「貯める努力と言っても、タンク設置には限界があるのではないか。東電は、その点、どのように説明されますか」という発言が有りました。 この質問に対して、小委員会の出席者でもある東電廃炉推進カンパニーの松本純バイスプレジデントは、「現在は、古いタンクのリプレースを行って、容量を確保している。又、タンク内の水の日量増加量も最近は200t程度に抑制できている。ただ、敷地内では固体廃棄物が屋外保管になっているので、それを屋内保管に切り替える施設も作っている。それとの兼ね合いもあるが、タンク増設は自転車操業的に続けている」旨を回答していました。東電の担当者が経産省の会議で「自転車操業」という表現を使ったので、私は聞いていて「珍しく率直だな」と思いました。 この後、別の有識者から、「福島の現地での会議に参加させて頂いているが、新たに設置されるタンクは敷地をできるだけ合理的に使うように配置されているし、リプレース前に比べて容量は増加する。凍土壁が完全閉合されれば、地下水の流入量も劇的に減ると期待されている」と、東電を援護射撃するような発言がありました。 濱田教授の後に、JA全農福島の本部長もプレゼンを行いました。そのプレゼンは、「ネガティブ報道・ネガティブ発信に繋がる事は止めて頂きたい。ポジティブ報道・ポジティブ発信となる事をお願いしたい」との発言で締め括られました。前回・小委員会の第三回のプレゼン内容も合わせて、私には「被災地元からの悲鳴」のように聞こえました。経産省は原発を推進し、東電の責任を免責しようとする意図がありありです。その経産省の会議を傍聴してすら、このように感じるのですから、市場の構造が変わったことや、噂されるトリチウム水の海洋排水への地元の怒り・怯え・苦しみは、言葉では表現しようがないくらい、深いものがあるでしょう。 このような話が原発推進の経産省が聞けるとは思っていませんでした。もっと多くの方に聞いて貰いたい内容ですし、原発推進・東電免責というタガがはまっていない場で、自由闊達なプレゼン・意見交換が必要だと痛感しました。 誤解を恐れずに書けば、市民運動の側も、単なる「脱原発・反原発」、単なる「政権批判・東電批判」だけではなく、もっと幅と深みのある議論の場を作っていくべきだと思います。 最後に、私のわがままにも関わらず、急遽、休みをくれた私の勤務先に感謝いたします。勤務先の配慮が無ければ、今回の小委員会・第4回会合は傍聴できなかったでしょう。春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)※ 4/24 脱字を修正し、JA全農福島の本部長のプレゼンでの発言を追加。消費者庁の調査結果へのリンクを追加。