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投資の余白に。。。

投資の余白に。。。

August 7, 2010
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カテゴリ:自叙伝
蛇口をひねれば水はおろかお湯が出る。このことをあたりまえに思い、その便利さに感謝する心を持っていない人間を、わたしは友人にしないことにしている。都市インフラのうち最も重要なのが水道のシステムであり、古代ローマが偉大であるゆえんだ。

20世紀初頭、日本の水道普及率は数%だったらしいが、わたしが生まれた1957年でもまだ30%程度だった。日本人の3人にひとりしか、水道の恩恵にあずかってはいなかったのだ。

1960年になって普及率は50%を超えてくる。しかしそれでも、90%を超えるのは1980年代を待たなければならない。現在50歳以上の人の半数は、産湯は水道水ではなかったということになる。

新千歳空港は世界で最も乗降客の多い空港として知られている。それ以前も、米軍が駐屯していたり、空港の騒音対策などもあって、昭和30年代の千歳は日本で最も生活インフラが整っていた都市のひとつだったと思う。

その証拠に、上水道だけでなく、都市ガスさえひかれていた。ちなみに、札幌ではまだ都市ガスの敷設されていない地域がたくさんある。50年前の千歳より遅れているのだ。

水道も札幌は遅れていた。1968年にいまの場所に移り住んだとき、水道はなく、地下水を汲み上げて使っていた。最初は手動のポンプ、すぐに電動のポンプを使うようになったが、いちいち外に水を汲みに行くわずらわしさは今思い出してもうんざりする。上水道が来たのは1970年代なかば、下水道が来たのは1980年ごろだったように記憶している。

千歳の水道水は「名水百選」に選ばれているナイベツ川の水である。この川は湧水が集まってできた川で、ダム湖などの水とはまったくちがう。真夏でも冷たい水が蛇口からあふれるので、「水道水とは冷たいもの」とずっと思っていた。

それに比べると札幌の水道水は冬冷たく、夏は生温く、味も少し落ちると感じた。

いまの家で汲み上げていたのは泥炭地の地下水なので、金属臭がしてお世辞にもおいしい水とはいえなかったが、温度は一定していた。冬は暖かく、夏は冷たく感じた。新品のタオルがすぐ褐色になったので、植物性モール泉のような水質だったのではと思う。風呂用の水としてはなかなかよかったかもしれない。たしかに、水道水でわかす風呂というのは肌触りが悪く、湯冷めしやすい。

千歳の家は小さな公園のすぐそばだったので、夏の暑い日などは、のどのかわいた子どもが水をもらいに行列を作った。ブリキのコップで何十杯もの水をふるまったものだった。

いろいろな水を飲み比べるようになって思ったのは、温度が同じであれば、硬度の低い水ほどおいしく感じるということだ。いちばん顕著なのはお茶を入れたり、みそ汁やお吸い物を作るときで、硬度の低い水だとまろやかな味になる。

調べてみると千歳の水道水の硬度は23、札幌は39なので実感にほぼ近い。水道水でも硬度が100を超えるような、中硬水レベルのものもある一方、バラエティ番組でソムリエらが日本一に選んだ鳴子の水は硬度20以下、浄水場によっては11というのもあるようだ。

1年ちょっと住んだことのある愛知県も水道水のおいしいところだった。調べてみると、県別の平均硬度では最下位、つまり最も硬度の低い水が多い地域らしい。

水道水や地下水以外の水で、最もおいしいと感じたのは利尻山登山口に湧出する通称「甘露水」である。甘露水に限らず、おいしさが鮮烈な記憶となっている水は、羅臼岳頂上直下にある羅臼平の石清水、夕張岳の冷水沢の水など高山の湧水が多い。それが登山の途中で手つかずの自然の中で味わうからおいしく感じるのか、ほんとうにおいしい水なのかどうかは下界に持って降りてみないとわからない。ただ、たぶんこれらの水はすべて硬度の低い水だと思う。

しかし最もおいしかった水は、もう飲むことはできない。それは千歳市あずさに1990年代初めまであった通称「わきみず」である。ある年代以上の千歳市民なら、知らない者はいない。原野の中に数メートルの段差があり、木が生い茂る崖の底から大量の水が湧き出ていて直径10メートルくらいの天然の池になっていた。

千歳は樽前山の火山灰が降り注いだので、土地はやせていた。しかしその「わきみず」のあたりは植物が生い茂り、明るくも神秘的な、ちょうど砂漠のオアシスのようなスポットになっていた。

しかしそれも周辺の宅地化によって水は涸れ、わきみずのあった場所は武道場になってしまった。

あんなに美しい場所は、もう世界のどこにも残っていないのではないか。

そんな場所が、家からわずか2キロ足らずのところにあったというのに、訪れたのは夏の暑い日、たった数回だったから悔やまれるし、環境よく保存しておけば一大観光スポットになったと思う。

また、もう飲むことも、その水でわかした風呂に入ることもできないが、紅葉の名所として知られる銀泉台にあったヒュッテの水もすばらしくおいしかった。森林限界近くの湧水だったと思うが、その水でわかした風呂に入ると角質がポロポロととれるのだ。強アルカリ性の水ということであり、石鹸など不必要なくらいだった。

手に入りやすい水で最も硬度が高いのはコントレックスである。鎖骨を骨折したとき、口に入る水すべてをコントレックスにしたが、あの水は泣きたくなるほどまずかった。

しかしそんなコントレックスも、ウィスキーに使うといけた。

料理に人一倍関心はあるが、まだ料理によって水を使い分けるところまではいかない。しゃぶしゃぶには硬水を使うといいと聞いたことがあるが、まだ試したことはない。

沖縄、九州、関東の水道水は硬度が高く、東北や北海道、山陰などは低い。硬度の高い水は肌や髪に悪いことが知られている。化粧品や化粧水に凝っても水に無頓着な人が多いのは不思議だ。沖縄や九州に行くと肌の荒れた人が目につくのは気候のせいと思っていたが、水も関係しているのかもしれない。





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最終更新日  August 8, 2010 03:21:11 AM
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