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つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

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2005.01.20
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カテゴリ:百人一詩
「大白道」(だいびやくだう)
草野 心平

歩いてゐる。
歩いてゐる。
音なくしはぶきひとつなく。
歩いてゐる。
何千人か何万人かわからないが。
歩いてゐる。
音なくしはぶきひとつなく。
歩いてゐる。
天のおくがの大白道を。

血のりのついたまんまの顔や。
頸から上のないものや。
足一本や。
弾痕のある鉄兜。
銃をもつものや銃をもつ手のないものも。
音なく。
声なく。
片眼だけしかないものも。
しずかにほほゑみ。
歩いてゐる。
夜にはひれば夜はくらく。
あしたになれば天はあかるく。
青いおくがにひとすぢ白く。
無限の天の大白道を。
しづかにふらふら。
歩いてゐる。
もう疲れることもなく。
眠ることも飲むことも。
飯盒もいらなく。
しづかにほほゑみ。
あの瞬間の無念さも。
あの瞬間の地団太も。
あの瞬間の。天皇陛下万歳も。
すべてとほくにかすんで消え。
日本(ニッポン)の無数の将兵たちが。
しづかにほほゑみ。
歩いてゐる。

ああ突如。
遠くかすかに。
闇の向うに。
小さな小さな蛍の光。
それがだんだん大きくなり。
横に流れて。
まぶしい光の棒になり。
今まで無言の一列の。
その先頭に。
日の丸の旗さつとたち。
そのまま光の棒のなかに呑まれてゆく。
はらからの名の書かれてる。
日の丸次々にさつとたち。
足だけの者。
手のない者は。
旗もなく。そのまま。
まぶしい光に呑まれてゆく。
天の岩戸に呑まれてゆく。














昭和十九年に書かれたこの詩は、戦争(協力)詩として長い間遇されてきました。確かにそのように読むことも可能なのですが、逆の見方も可能です。傷病兵たちは天照大神に癒されるために天の岩戸に呑まれてゆくのではなく、天照大神に喰われるために呑み込まれてゆくのだと。

あるいはハメルンの笛吹き。吹いていたのは誰であったか?

自分は高村光太郎の「十二月八日」を読んで、そこに「九月十一日」に通じる今日性を見出す者ですが、すぐれた戦争詩は「左」から読んでも素晴らしい作品である、というひとつのサンプルとしてご紹介いたしました。





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Last updated  2005.02.26 12:47:11
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