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カテゴリ:近代日本文学
骨子が似ている二つの中編。というより、「防雪林」をもとにして書かれたのが「不在地主」である。田舎娘が都会にあこがれて村を出て、男に捨てられて首をくくる、とか、主人公の弟のかわいい「朝顔の蕾」がアチチチとなるところとか、随所に共通するエピソードが見られる。
では「防雪林」は「不在地主」の習作かというとそうでもない。「不在地主」の迷える健と違って、源吉は歯に衣着せずものをいう。行動力もある。いわゆる男らしい男であり、古典的な小説によくあるタイプの、日本では珍しい英雄型の人間である。その源吉がなぜ反社会的な行動をとるに至ったか、そのまた反社会的な行動なるものは正義に反する行為なのか、そのあたりがこの小説を鑑賞する上でのミソであろう。 「不在地主」は労働運動の勝利を描いたものである。資本家ー労働者、都会ー村落という構造は現在でも変わらないものの、生産者ー消費者という構造が世界規模になっているために、今日では一見、ここまでひどい搾取は行われていないようにみえる。しかし実際のところ、日本をはじめ先進国は経済的・人的・資源的に他国を搾取している。ただ、「地主」ならぬアフリカ等各国の為政者がその国の表の顔なので、ストレートには伝わりにくい構造になっているだけだ。 あらすじは書かない。読んでいただきたいからである。擱筆。 防雪林・不在地主 / 文庫緑 88- 3 (文庫) / 小林 多喜二 作 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.08.22 08:11:35
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