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つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

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2019.06.08
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カテゴリ:百人一詩
「悲歌」
金子光晴

恋愛が手術であらうとは
おもひもかけないことだつた。
すつ裸で、僕は
手術台の上に横たはる。

水銀のやうな冷たさが
僕のからだをはしる。
恋愛が熱いなどとは
なんたるたはごとぞ。

白いきものをきて
メスをもつてるのも僕の分身。
しやがの花のやうに蒼ざめてふるへて、
ねてゐる方も、僕なのだ。

レントゲン写真には
恋人の姿がうつすりでてゐた。
ガラス板にのつてるのは
盲腸に似た血のかたまり。

不幸にも、僕にとつては
恋愛とは一つの腫瘤なのだ。
それを剔出しなければ
僕のからだは保てないのだ。

覆面の看護婦たちが
僕の血でたぷたぷゆれる
重さうなバケツを提げて
廊下を、どこかへ捨てにゆく。

------------------

これも​『大人になるまでに読みたい15歳の詩① 愛する』​からですが、​黒田喜夫​に劣らず異色です。作者の恋愛観が述べられているとはいえ、これはどう見ても病院です。面白いのは、すべての連が起承転結になっていることでしょう。最後の二連が、この詩の白眉であります。


大人になるまでに読みたい15歳の詩 1





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Last updated  2019.08.13 20:55:07
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