大阪の方言の抑揚
大阪に来てだいぶたつけど、いまだに言葉が聞き取れなくて困ることがある。 そりゃ私だって東か西かといわれれば、西日本の生まれ育ち。 だいぶなまっております。 ところが、イントネーションは地域によって少しずつ微妙に違っており、大阪のはとくに独特のように思う。 なかでも、単語。 たとえば「弁当」。 頭にアクセントがあり、「べんと」と聞こえるくらい「う」は軽く発音するのが大阪っぽい感じです。 いちいち話題にしないけど、ネイティブの発音を聞くたびにほほぅと思う。 もっとも困ったのは「袋」。 こんな感じで抑揚をつける人が多い。 真ん中にアクセントがあり、音も真ん中が高いんだよね。 これが四国→広島と暮らしてきた私にとっては、まったく奇想天外な、思いもよらないイントネーションのため、急に言われるとさっぱりわからぬ。 コンビニやスーパーのレジで 「袋、お入れしていいですか」 的なことをたずねてもらうでしょう。 取るに足らぬ、ささいなやりとりですよ。 ところが私の場合、まず出だしの「フクロ」が聞き取れないものだから、あとのフレーズはふにゃふにゃと脳みそをうわすべりし、もう、まさしく呪文にしか思われない。 あまりの理解のできなさにびっくりしちゃって、 えっなんですって! と、妙に反応してしまう。 「袋に入れるか、入れないか」 という定型文を、真剣に何回も聞き返してくる私に、店員さんも戸惑い気味。 (京都では外国人観光客の相手ですれているのか、店員さんは見事に聞き返す私を無視) 結構最近までこうだった。 でも、もう聞き取れる。 「フクロ」と店員さんが言うのを待ち構えて、袋でしょ、待ってましたわかってますよ!と思う。 ちなみに、「袋」と同じイントネーションの単語として、「鏡」がある。 歯医者さんにて、大口をあけて横たわらされているとき、女性の助手さんから 「鏡持ってください」 と声をかけられたが、あちらはマスクをしているし、距離が近いせいかささやくような小声だし、なにより突然、脈絡もなく言われたもんで、 内容はふにゃふにゃと脳みそをうわすべり。 さっぱり理解できぬ。 助手さんは反応のない私にイライラし、ぐっと鏡を押し付けて有無を言わせず私に持たせた。 用が済んだらまた呪文をとなえたが、私が反応しないのでまたイライラし、私の手から鏡をもぎ取った。 意味がわからなくとも、そんなんされたら傷つく。 しょんぼりとして帰る道すがら、ふと気づいたんだよ。 「あれは『鏡』って言ってたんじゃないか」と。 てなことから、自分は「袋」「鏡」のイントネーションにとくに弱いんだな、ってことを自覚できました。