カナブン、茶色、大きめ(写真なし)
夜、共用廊下にカナブンがいて、とても静かな様子であった。 茶色、大きめ。 カブトムシのような触角に親しみを覚え、なんとなく鑑賞してからうちのベランダに逃そうと考え、連れ帰ることにした。 カナブンに触れると、少し時間をおいて「ハッ」とした様子。 大きめの甲虫はこういうところが人間臭くておもしろいなぁといつも思う。 足をふんばって、ちょっと背が高く見えるように力を込め、私の攻撃を受けて立つ姿勢を見せた。 けど、それは一瞬で、あとはワシワシ歩いていこうとする。 そっとチラシの紙の上に乗せて移動。 家に入って、いったん机の上にチラシごと置き、大丈夫かなとは思ったが、手は洗いたい。 ちょっと場を離れるじゃん。 うがいもするじゃん。 それらを終えてもどったら、もういないわけですよ。 カナブンが。 どこにも見当たらんわけですよ。 これがクモやゴキブリなら、私の恐怖センサーが働いて見つけられる確率が高いのだが、カナブンは好きなのでさっぱりだめだ。わからない。 というわけで、うちのどこかにカナブンがいる状態で、どこかで死んだらどうしよう、本当に申し訳ないことをした、と考えておったのです。 しかしパソコン作業などを終え、電気を消してお風呂から出てきたら、ものっすご羽音がする。 めっちゃ飛んでるわ。 電気をつけたらまた隠れるかも、と思ったので暗闇の部屋の真ん中に立ち、再度、羽音が聞こえるのを待つ。 いた! 窓の方だ。 ケータイで照らして場所を確認。 カナブンはカーテンにひっついていた。 やんわりと左手のなかにつつんでカーテンと窓を開けるまでの間に、カナブンはもうワシワシワシと指を伝い、腕まであがってくる。 超元気じゃん。 しかし、この、「虫がワシワシと6本の足を繰り出す感触」が、気持ちが悪い。 おかしいな。 子どものころはなんとも思わなかったんだけど。 外に出すとブイーンと飛んだ。 あぁ、飛んで行くのか、さようなら、と思ったら、ブイーンと戻ってきてカーテンにとまる。 いやいや、あなた逆ですよ。 再度、左手でやんわりつつんでワイヤープランツに移すのだが、テントウムシと同じで、高いところにのぼる習性なのか、何度トライしてもカナブンは私の指をのぼる。 ワシワシワシ。 いやいや、6本足。 本能で振り払いそうになるのをぐっとこらえ、腕までのぼりつつあるカナブンを、我慢の限界が見えてくるのを感じながら、結構必死の思いでユッカの幹に近づける。 うまく移動した。 ふぅ。 カナブンは、幹で足場を確保するのと同時くらいにブイーンと飛んでいった。 いろいろ折り畳んでるのに、飛ぶのにさほど準備はいらないのだなぁ、と思った。 あとで調べたら、コフキコガネという種類であることがわかった。