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長編時代小説コーナ

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龍5777

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Oct 26, 2006
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カテゴリ:暗闘
 老中首座の水野忠邦は、このことを憂慮し天保の改革を実施した。

主な施策は奢侈の禁止、財政緊縮策であったが。彼は旗本、御家人の借金を

棒引きとする策を行ったり、商人に多額の税を課したり、貨幣の改鋳を実施し、

さらに粗悪な貨幣を作ったので、彼の意に反し物価は高騰をつづけた。

 百姓は農地の荒廃で農作業を捨て、江戸で職を探そうと出稼ぎにきた。

 米を経済の基礎とする幕府の財政は、こうしたことで更に苦しくなり、水野忠邦

は「人返しの法」を発し、強制的に百姓を国許に帰した。

 最早、天保の改革も末期的情況となっていた。

 この情況をみた鳥居甲斐守が動き出した、水野忠邦の政権は終末に近いと鋭

い観察眼で見極めたのだ。彼は大奥に人気の高い阿部正弘に接近をはじめ

た。しかし阿部正弘は開明的な人物で、固陋な攘夷論者の鳥居甲斐守を重用

する気持ちはなかった。

 季節は七月を迎えていた。六月の豪雨を忘れたような真夏日が連日続いた。

 そんな日に、小伝馬町牢屋敷に異変が生じた。突然、南町奉行所の内与力、

前川孫八と従目付の新藤三郎兵衛が訪れて来たのだ。

 これ自体は異常なことではない、牢屋敷は一種の暗黒世界で取締の両奉行所

の同心が、変事を見極めることはしごく困難を極めていた。

 それ故に、月四回の総牢改めが行われていたのだ。町奉行所与力二名に、牢

奉行の石出帯刀と鍵役同心が立会い、牢獄から囚人を外に出し、牢獄の内部を

仔細に検分した。

 牢屋下男が囚人等の躯から下帯の中まで仔細に検査した。しかし囚人達は

先刻承知の行事でボロを出すようなへまはしなかった。

 その代わりとして従目付の突然の立ち入り検査が行われた。彼等の目的は

牢内の腐敗摘発であった。

 牢屋敷の大牢は、ツル(銭)さい在れば、酒、煙草、菓子など何でも手に

入った。こうしたツルは、囚人が腹中に飲み込み牢屋敷に持ち込んだもので

ある。それが牢名主や牢屋下男の腐敗のもとであった。

「これはご苦労に存じあげます」  牢屋奉行の石出帯刀が正装で出迎えた。

 月番の南町奉行所の与力が付き添うことは分るが、内与力の前川孫八の存在

に違和感をもった。

「この度は、従目付の新藤三郎兵衛殿の初の立会いじゃ」

 前川孫八が傲慢な顔をみせ説明した。

「牢奉行の石出帯刀にございます」   「新藤三郎兵衛じゃ、宜しく頼む」

 大兵の男で風貌じたい造作の大きな憎めない感じの男であった。

「石出殿、さらば立会いに参る」

 それを耳にし鍵役同心が牢内にむかって声を振り絞った。

「ただいま従目付殿のお出ましであるぞ、なんぞ言い分のある者は戸口まで

出ませい」  一瞬、牢内が静まり戦慄が奔りぬけた。

「隠しだてはためにならぬ、言い分のある者は遠慮はいらぬ」

 新藤三郎兵衛が巨眼を光らせ野太い声をあげた。

「体調の悪い物はおらぬか? 風呂はきちっと入っておるか?」

 付き添いの同心が声をかけた。

「恐れながら申しあげます、お蔭さまで不自由はございませぬ」

 牢名主の声である。  「皆の者、相違ないか?」  「へい」全員が声を揃えた。

 ここで異議を唱えたら牢名主の報復が恐い、よほど度胸の据わった者でないと

出来ないことである。

「左様か、本日の立会いはこれにて終了いたす」

 新藤三郎兵衛が、立会いの終了を告げ牢内より去った。

 表に石出帯刀と前川孫八が待ち受けていた。

「ご苦労に存じました、まずは番所で茶なぞお飲み下され」

 一行は番所で茶菓子の供応を受ける仕来りとなっていた。

 帯刀は一行を表門の左手にある番所に案内した。番所の右手には同心長屋

がならび、その奥に高い塀をめぐらした石出家の屋敷があった。

「石出殿、立派な屋敷ですな、新築の座敷は今はどうなってござる」

「お上からの借家にござる」  帯刀がさり気なく応じた。

「石出殿、新藤殿への回答になっておらん」  前川孫八が語気を強めた。

「新築の揚がり座敷は、未だ使われておりませぬ」  帯刀が温和に答えた。

「いかがじゃ、一度内部をお見せ頂けないか」  新藤が物静かに訊ねた。

「まことにもって申し訳ございません、老中首座の水野忠邦さまのご許可を

賜りませぬと出来ぬ相談にございます」

「左様か」  新藤三郎兵衛があっさり答え、ずずっと茶を啜った。

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Last updated  Oct 26, 2006 11:07:58 AM
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