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Apr 4, 2007
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カテゴリ:小説 上杉景勝
  伊達勢の白石城攻撃の、この日、下野小山の東軍陣営でである。

  家康は肥満した体躯を運んでいた。陣屋には家康に従ったきた諸侯が全員

顔を揃えている筈である。  「福島正則は大事ないか?」

「黒田長政の篭絡(ろうらく)が功を奏しております」

  傍らの本多正信のしわがれ声に、満足げに肯いた。

「歳を経ると暑さがことのほか堪える」  家康は平服で大広間に一歩踏み込ん

だ。すでに諸侯たちが全員うち揃っている、福島正則、池田輝政、細川忠興、

黒田長政、浅野幸長、加藤嘉明等の荒大名に、海道筋の諸侯等である。

  家康が上段の席に腰をすえ、かたわらに本多正信と本多平八郎が並んで

座した。あとはすべて豊臣家恩顧の大名ばかりである。

「方々、すでに聞きおよびのこととは存ずるが、大阪表で奉行どもが秀頼公を

あざむき、内府を討たんとする暴挙が出立いたした」

  本多正信が、しわがれ声を張り上げた。

「おおかた佐和山の治部少の差し金でありましょう」

  福島正則が大声をあげた。家康は黙然と態度も変えずに座している。

(この分では巧くいきそうじゃな) と、内心ほくそ笑んでいる。

「妻子を大阪城に人質として捕らえられておられる方々も居られよう、また豊臣家

の恩顧を大切に為されようと思われる方々も居られよう。そのようなお人は去就

を自儘(じまま)に為され、今から陣を払い領国にお帰りなされよ。遺恨には感じも

うさぬ」 本多正信が声を張り上げている。

「あいや、待たれよ」  一同を制するごとく福島正則が進みでた。

「余人は知らず、この左衛門大夫は治部少輔に加担する謂れはござらん。拙者

は内府にお見方つかまつり、そのご先鋒を賜りたい」

  一瞬、一座が沈黙したが、時の勢いで次々と全員が賛意を示した。

「拙者、内府殿に掛け合いがござる」  見ると遠州掛川六万石の山内一豊であ

る。  「何事かな対州殿?」

「お味方としての証といたし、領土も城もすべて内府殿に差し上げまする」

  この凄まじい提案に海道筋の諸将たちも争って同意した。彼等の思惑は別と

して、ことの成行きであった。思ってもみない展開に家康は驚喜した。

「対州殿、かたじけない」  座を降り、山内一豊の手をとり、おし戴いた。

  この海道筋の大名たちは、秀吉生前に家康の備えとし律儀者を揃えていた

のだ。その彼等が秀吉の思惑を無視し、あっさりと家康に寝返ったのだ。

  まさに恩から利へと転換した瞬間であった。

  その後、本多平八郎の音頭で軍議がとり行われた。

「西に石田方が蜂起した今、上杉家を討ち果たすべきか皆さまにお尋ねいたす」

「知れたこと、これを内府は待っていた筈じゃ。これより西上いたし治部少輔と

それに味方する者どもを討ち果たすべきにござる」

  福島正則が、今にも出陣せんばかりの勢いをみせた。

「ご異存はありませぬな、さらば先鋒は一存で決め申した。福島正則殿と池田

輝政殿にお願いつかまつる」  「畏まった」

「お聞きいたす、内府はいかがなされます」

「左衛門大夫殿、上杉勢の動きを牽制いたし、一度、江戸に立ち戻ります」

「我等のみで西上いたしますのか?」  福島正則が不審げに訊ねた。

「時期をみて西上いたす。方々は福島殿の領土尾張清洲にて軍を止められよ。

わしも近々に清洲に出向き、ご一同と合流いたす」

  これが世に名高い「小山評定」であった。

  翌日から諸大名の軍勢がせめぎあって奥州街道を南下して行く。家康は小

山から動かず、上杉勢の動きを観望している。

  わしの反転を待って討ってでるか?、この一念に的を絞っている。そうした中

で最上、伊達と連携を保ち、会津の上杉家、常陸の佐竹家の牽制として中納言

秀忠を下野の宇都宮城にとどめ、下野の領主、結城秀康に増援の軍勢を与え

ている。

  何度も云うが、家康という男は臆病なほど猜疑心が強い男であった。

  人は利に弱い、このことが彼を小心にさせ慎重にさせているのだ。

  こうして万全を期して徳川本隊を率い、八月五日に江戸城に帰城した。

  この間、上杉勢は景勝の命を守り、一兵も国境から足を踏み出さず、去り行

く徳川本隊を無言でみつめていた。


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Last updated  Apr 4, 2007 09:42:00 AM
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