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長編時代小説コーナ

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龍5777

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Jan 5, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 町人たちの不満も頂点に達し、ちょぼくれの一節で天保の改革を強烈に

野次った。

「忠臣めかし倹約沙汰だの、何のかのと天下の政事を、己の気ままに引っかき

廻し。何ぞ云うては寛政々々、倹約するにも程をば知らねえ、どんな目出度い

旦那の祝儀も、献上の鯛さえお金で納める、あまりに賎しい汚い根性、御威光

が薄いぞ潮風喰って、ねじけて浜松」

 さらに贅沢禁止で、大奥の反感は爆発寸前の情況にあった。大奥を頻繁に

訪れる家慶に水野忠邦に対する讒訴が強まったのは、当然の帰結であった。

 それを憂えた水野忠邦に、信玄の隠し金塊の絵図の存在を教えた輩がい

た。甲州金は金の純度が極めて高い、今の一両の金の含有量は改鋳(かい

ちゅう)につぐ改鋳で極めて粗悪なものになっていた。

 もし、高島藩に隠し金塊の絵図が存在するならば、それを奪い金塊を捜しだ

し、幕府の疲弊した金蔵に入れる。そうなれば再び家慶公の信任が得られる。

 水野は秘かに養っていた、恐るべき影の軍団を使うことを決意した。

 この極秘の計画が、大目付の嘉納主水に漏れたのだ。主水は秘密裡に水野

忠邦の動きを探り、今宵、影の軍団が高島藩上屋敷を襲うことを嗅ぎ付けた。

それを弟の隼人正に知らせたのだ。

 諏訪高島藩江戸家老の、嘉納隼人正は主水の末弟であった。

 何ゆえに大目付の嘉納主水が、この極秘な計画を知ったのか、これは彼の

大目付としての職掌にあった。彼の任務は大名、旗本の法度(ほっと)遵守の

監視や諸役人の行状などを観察し、将軍に言上する事が任務であった。

 老中首座と云っても譜代大名であり、嘉納主水の監視の対象であり世情で

評判が悪い、水野忠邦の動きを特に注視していた結果であった。

「隼人正、いかがいたす」  忠政が眉宇(びう)をひそめて問うた。

 隼人正には兄の知らせで万全な策があった。

「殿、今宵は奥御殿でお休み下され、中奥の殿の臥所には拙者が殿にかわり

待機いたします。弦四郎、そちは手練者を集めお屋敷の警護を厳重にいたせ」

「かしこまりました」  岩村弦四郎が厳しい顔でその場を辞していった。

 嘉納隼人正は伊藤一刀斎から小野次郎右衛門に伝わった、将軍家剣術兵

法の一刀流の達人として、世に知られた男であった。

 影の軍団は世評で噂はされているが、その存在は顕かではない。彼らも

人間、襲いくれば壊滅させる、これが隼人正の考えであった。

 水も洩らさぬ万全な態勢で真夏の夜が更けていった。

 神田駿河台の地は、旗本屋敷が白壁に囲まれ軒を並べている。すべて名流

として聞こえた大身の屋敷町であった。

 その小路を足音を消した忍び装束の一団が駆けぬけた。全員が錏頭巾(しこ

ろずきん)を被り、忍び装束に身をかためた姿が不気味である。

 坂を下ると、小藩譜代衆の大名家の上屋敷が連なっている。

 九つ(午前零時)過ぎというのに、真夏の残暑のなごりが漂っている。

 一団は坂を下り、迷うことなく左手の大名屋敷の長屋門に膝をついた。

 白壁からは、松、欅(けやき)の枝が張り出し枝葉を大きく広げている。

「ここが高島藩の上屋敷じゃ」  全員が覆面ごしより眼を光らせた。

 深更と云うのに蝉時雨が、止むこともなく周辺に響き渡っている。

「良いか誰にも悟られるな、玄公金秘匿絵図のみを捜しだすのじゃ」

 頭とおぼしき中央の男が忍び声で命令した。

「目指すは諏訪因幡守の臥所、中奥にござるな?」 不気味な含み声がした。

「我等の狙いは絵図のみ、悟られずに奪うのじゃ」

 この時代の大名家の上屋敷は、江戸城を模し、表は家臣等が政務を執る

場所で、中奥は藩主の蟄居する空間、奥は女性の居住する場所であった。

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Last updated  Jan 6, 2008 09:00:40 AM
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