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May 3, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「お受け頂けますかな?」  磯辺頼寛が求馬を凝視した。

「それがしは、諏訪因幡守さまと大目付嘉納主水殿に約束いたしました。水野

忠邦の失脚を狙い、奴の操る影の軍団である六紋銭を殲滅いたすと、決意し、

それ故に甲州道中を下って参った」  求馬が己の決意を述べた。

「水野忠邦の権力の背景に、六紋銭ありと言う訳ですな。権力が万全ならば

我が藩を改易し、玄公金秘匿絵図を奪い磐石なる権力を掌握いたしますか?」

「左様」  求馬が肯き冷えた杯を干した。

「恐れいった。ご貴殿の深慮遠謀には、なにとぞ我が藩の安泰の為にお力添

いをお願い申す」  磯辺頼寛が興奮を隠さずに手をついた。

「お手をおあげ下され、水野忠邦は大奥にまで疎まれております。何れは上様

ご贔屓の水野忠邦も失脚いたしましょう。そのためにも奴は必死で高島城の

落ち度を探っておりましょう、既に藩中に奴の手が伸びておるやも知れ申さぬ、

くれぐれもご用心肝要にお願いつかまつる」

「ご念のいった忠告、痛みいります」

 磯辺頼寛の若々しい顔に、何事か決する色が浮かんでいた。

 二人は一刻(二時間)ほど密談を交わしあった。

「我等は明日にでも、ここを引き払い上諏訪に足を伸ばします。道中は女連れ

故にゆるりと参りたい」  「了解いたした」

 磯辺頼寛は求馬の胸裡をさっした模様である。

「金沢宿で一泊した後に上諏訪に向かいます。江戸表に異変が生じたならば

ご連絡をお願いいたす」

 入念な打ち合わせ後、磯辺頼寛は駕籠にゆられ高島城に戻って行った。


 翌朝は鈍色(にびいろ)の厚い雲が低く垂れ下がった日であった。

「お客さま、今日は雨になりましょう。一日降りやまぬと思われます」

 玄関先で番頭が心配してくれた。

「急ぐ旅ではないが、そうそう長逗留もできぬ」

 求馬は一文字笠に長合羽、猪の吉は菅笠に道中合羽を羽織っていた。

 お蘭も菅笠をかむり、道行き衣で厳重な足拵えをしていた。

 三人は旅籠を出て甲州道中を西に向かって旅立った。

 少し行くと街道は二股に岐れる、道中塚に下諏訪と刻まれた街道を進んだ。

「八ケ岳の上半分が見えませんね」

 お蘭が右手に広がる八ケ岳を眺めぼやいている。

「お蘭、甲斐では天気が良い時は何処からでも富士山が見られるが、信濃は

平坦な地形で見ることは叶わぬ。だが富士見だけは富士山が望めるそうじゃ」

 求馬が富士見の謂れをお蘭に語っている。

「今日は見えませんね」  お蘭が恨めしげにぼやいた。

 一行はうねりくねった街道に差し掛かった。ゆるい登り道が続き、女の足で

はなかなか辛い、お蘭が杖を頼りに頑張っている。

「師匠、足は大丈夫ですかえ?」  猪の吉が盛んに心配している。

「大丈夫ですよ」  「次が、とちの木の集落じゃ」

 刻限は四つ半(午前十一時)頃であろう、心配していた雨がぽつりと落ち始め

た。金沢宿までの行程の中ほどと思われる。

「旦那、この集落で少し休みやしょう」  「そうじゃな」

 肯いた求馬の双眸が強まった、得体の知れない視線を感じたのだ。

「旦那、どうかしやしたか?」  素早く猪の吉が訊ねた。

「いや、気の所為じゃ」  雨が大粒となり、とうとう本降りとなった。

 三人はびしょ濡れとなって一軒の小汚い蕎麦屋をみつけ駆け込んだ。

「あれまあ、旅のお方かの」  薄汚れた着物の老婆が迎えてくれた。

「婆さん、蕎麦を頼まあ」  「あいよ」  老婆が勝手口に消えた。

 三人は濡れた合羽を脱いで三和土の脇に吊るした。

 美味しそうな匂いが漂い、「ざる蕎麦にしては可笑しいや」と猪の吉が

不審そうな顔をしている。

「さあ、躯を暖めておくれ」  老婆が丼を三人の前に並べた。

「これが蕎麦かえ」  見ると蕎麦にだし汁をかけ、刻みネギに生卵がのってい

る。 「美味しそう」  お蘭が汁を啜り蕎麦を器用に啜り込んだ。

「美味しい」  流石は蕎麦の本場である。

「こいつは旨いし、躯が暖かくなるね」  猪の吉も旨そうな音をさせている。

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Last updated  May 3, 2008 04:37:43 PM
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