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Dec 21, 2010
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カテゴリ:士道惨なり

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「士道惨なり」(20)

「皆に申しておく、藩内を引きしめよ。公儀の忍びが徘徊するとは由々しき

ことじゃ、草の根を掻き分けても他に公儀の狗が潜んでいないか確かめよ。

余も道楽は止す」  忠義が三人の重臣に厳命した。

「はっ、畏まりました」  筆頭家老の望月大膳が代表し返答した。

 燃え堕ちた屋敷跡から白煙が三日にわたって漂った。

「まだ燃えておる」 人々は口々に囁きあい焼け跡を眺めている。

 完全に燃えつきた屋敷跡の片付けが、藩庁の手で行われたのは五日後で

ある。燃え堕ちた屋敷跡からは白骨ひとつ見つからなかった。五名の亡骸は

完全に燃えつきたのだ。

 月日が経っていった。藩内の人々はこの悲劇を忘れず噂話を語りあってい

た。それは月日を追うほど強まっていたのだ。

「藩の仕置きは無慈悲なものじゃ、聞けば妻女の香代さまのお腹にはややが

おられたそうな」

「お孫さまを道連れとした弦太夫さまは、さぞご無念な思いでありましょうな」

「隠れ忍びの嫌疑じゃそうじゃが、確証はなかったそうじゃ。大目付に成られ

た稲葉十右衛門さまがそう申されたそうじゃ」

「稲葉さまは弦次郎殿と竹馬の友と言われた人じゃ、あの事件から大層な

出世、今は殿の信頼を一身に集められておられる」

 人々は森家の悲劇に同情しており、稲葉十右衛門に批判的であった。

 こうした噂話は当然、稲葉十右衛門の耳にも届く。藩庁も森家が隠れ忍びで

ある確証は握っておらず、稲葉十右衛門の独断とみていた。

 亡くなった一家に同情が集まるたびに、自分の評判が悪くなり面白くもない

が、藩の実力者とし辣腕を振るう身分となり、誰もが一目おく存在となっていた。

 藩は一ヶ月、藩内、藩境を固め厳戒体勢で忍び者の発見に努めたが、なにも

得るところもなく厳戒体勢を解いた。既に悲惨な事件から二ヶ月が経っていた。

「十右衛門、大山鳴動し鼠一匹も見つからなんだの」

 土井武兵衛が皮肉った。

「なんの、何もなくて結構でござった」

 稲葉十右衛門が、そげた頬をみせうそぶいた。

(今にみよ、黒岩藩を取り潰す冤罪を作り眼に物をみせてやる) 十右衛門の

心にどす黒い悪謀が渦巻いていた。

 そうした時に焼け跡に下手な字で、亡くなった五名の名を書き並べた粗末な

墓標が立てられたのだ。取り壊しを命じたかったが、殿も重役も黙認し藩庁も

咎めだてることもなく、流石の稲葉十右衛門もこれには手がつけられず黙認す

るほかなかった。

 こうして山国の小藩は落ち着きを取り戻し、人々の生活も昔に戻り、いつしか

忌まわしい事件は忘れ去られた。

 北陸の季節のうつろいは早い、冬を予感させるように枯葉が舞い、風も心なし

か冷たく感じられる。

 そんな折、藩内が蠢動する大事が勃発しょうとは、誰もが予測しなかった。

 それは一通の書状から始まった。

 稲葉十右衛門は非番の朝を自宅で迎え、すでに紅葉の始まった山並みを

見つめながら、庭で木刀の素振りを行っていた。

「旦那さま、門前に書状が届いておりました」

 妻女の差し出した書状を何気なく開封した、十右衛門の顔色が変わった。

『いよいよ御壮健、大慶奉り候。今井田宿では丁重なるお持て成しをこうむり

候て、御礼の申し様これなく候。また家の事につき、五名の者つつがなく冥途

に参られるべく候事は、貴兄の画策せしものと存じ候て、心中決するところこれ

あり候。近々におめもじ致し候事を、今より楽しみに致しおり候。まずはかくの

如く御座候。恐々不備 二十日辰ノ刻  弦次郎。大目付 稲葉十右衛門殿』

 皮肉で恐るべき内容の書状であった。

「弦次郎め、生きておったか」  十右衛門ともあろう男が蒼白と成った。

 まさに青天の霹靂、地獄の使者を迎えた気持ちである。

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Last updated  Dec 21, 2010 11:17:42 AM
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