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Dec 22, 2010
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カテゴリ:士道惨なり

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「士道惨なり」(21)

 今でも今井田宿で弦次郎を手にかけた感触が、鮮明に蘇ってくる。
 
 あれは六月末のことであったが、既に三ヶ月は過ぎていた。

(奴は今になって何をしょうとするのか?)

 奴の狙いは藩内に潜入しわしの命を狙うつもりじゃな。十右衛門の脳裡に

弦次郎の書状の内容が目まぐるしく交差した。

 弦次郎が復讐を宣言したと悟った。稲葉十右衛門の背に戦慄が奔りぬけた、

奴なら必ずやるだろう。

「筆頭家老さまの屋敷に参る、用意をいたせ」

 十右衛門は汗に塗れた身体を清め、慌しく屋敷を飛び出した。

 山々は濃緑色に覆われ、領内の田圃の稲が風をうけ輝いて見えるが、彼には

それを愛でる心の余裕がなかった。

「どうか致したか、顔色が優れぬぞ」

 望月大膳が稲葉十右衛門の顔をみて不審そうに訊ねた。

「ご家老、これを」  十右衛門が弦次郎の残した書状を差し出した。

「なんじゃ」  受け取り、読み下した大膳の顔色も変わった。

「弦次郎は生きておったか、稲葉っ、お主は弦次郎を始末したと申したぞ」

「拙者の不手際、お詫び申し上げます。ご家老いかが取り計らいましょうゃ」

「稲葉っ、お主の役職は大目付ぞ、お主をのぞいて誰が指図いたすのじゃ」

 筆頭家老の言う通りである。藩内の不祥事を取り締まることが大目付の役目

である。稲葉十右衛門はうかつな質問を発し冷や汗を拭った。

「拙者の誤りにございます。早速、藩内、藩境に役人を派遣いたし弦次郎の

探索にかかります」

「お主は何を考えておる。この書状がお主の許に届いたということは、奴は

既に藩内に潜んでおるという意味じゃ」  望月大膳が叱責を浴びせた。

 稲葉十右衛門がそげた頬をびくつかせ、眼に往年の凄味が戻った。

「抜かったことを申しました。配下を総動員いたし奴を見つけ出し、必ず仕留め

てご覧にいれます」

「くれぐれも慎重にの、公儀に知れては今迄の苦労が水の泡じゃ」

「畏まってござる」 稲葉十右衛門は左足をひきずり部屋を辞した。

 これは彼が森家を襲った際に、弦太夫から被った傷跡の所為である。

 お屋敷を辞した十右衛門は、不快感を顕わにし唾を吐き出した。

 あの様に取り乱した自分自身の迂闊さに腹が立ったのだ。

 平和であった黒岩藩は恐怖に叩き込まれていた、隠れ忍びとして森家一家の

者をすべて惨殺し、お家安泰と思った矢先に最も恐るべき男が出現したのだ。

 死んだと思われていた森弦次郎であった。彼は心形流の遣い手として藩内に

知られた腕を持っている。

 謂れなき罪で一家を惨殺された悲劇の主である。その弦次郎が復讐に狂って

姿を現したのだ、彼の心境に思いを馳せると鳥肌がたってくる。

「弦次郎は藩と心中するつもりじゃな」

 中老の土井武兵衛には、弦次郎の思いが手に取るように分かる。

(今更、謝罪しても遅い) だが何としても暴挙を阻止したい。

 その一念が武兵衛をつき動かした、誰よりも早く弦次郎に遭い説得を

試みる。わしの話なら分かってくれよう、儚い望みながら武兵衛は命をかけ、

弦次郎に翻意を促そうと思っていた。

 森家の始末を殿が命じられた時、お諌め出来なかった自分の弱さを悔いて

いたのだ。弦次郎は許してはくれまい、それは分かる。

 だが藩の重臣として弦次郎に詫びることは出来よう。針の穴を通すような、

小さな僥倖に彼はいちるいの望みを托していたのだ。

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Last updated  Dec 22, 2010 11:29:29 AM
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