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Apr 15, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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      「騒乱江戸湊(1)

(序章)

 季節は立春を迎えたというに、江戸の町は小雪が舞っていた。

 四谷左門町の小道を傘をさした御家人ふうの武士が、足早にとおり

すぎた。着古した羽織袴姿でこの寒空でも素足である。

 ここは先手組同心の組屋敷で、彼等は代表的な下級武士であった。

 百坪前後の敷地と建屋三十坪ほどの屋敷に居住していた。

 この辺りに歌舞伎や講談で知られた、四谷怪談の傘張り同心の

田村伊右衛門と妻のお岩が、住んでいた屋敷があったと言われている。

 武士は傘を斜めとし、ところどころ崩れ落ちた土塀の角の屋敷の

前に足を止めた。屋敷は丸木を二本建てた木戸門である。

 彼は物なれた態度で玄関に向かい、軋んだ戸を開けた。

「十右衛門殿はご在宅か?」

 武士は玄関の三和土で袴の雪を払い落とし声をかけた。

「源次郎か・・・・散らばっておるが入れ」

 鼻声の声に誘われ古賀源次郎は部屋に身をいれた。

「精がでるの」

 部屋中に傘がならび、この屋の主の勝沼十右衛門が襷がけで

傘張りの真っ最中であった。

 この時代の下級武士は内職に、専念せねば喰ってゆけなかった。

 先手組とは御目見以下の御家人で編成され、世が世がであれば将軍の

先鋒がお勤めであったが、この泰平の世で改廃をかさね、弓十組、鉄砲

二十四組に定められるようになった。

 組は組頭に与力が五騎から十騎、同心が三十名編成となっていた。

 同心達は蓮池、平林、下梅林、坂下御門に番所を設け、交替で

詰番と泊番を勤めとしていた。また一組は火付盗賊改方を勤めとしていた。

 勤務は二日勤め一日休む、三日勤めと称し時間に余裕があり内職に

専念できたのだ。

 彼等の内職は代々木や千駄ヶ谷の鈴虫、こうろぎなどの飼育、麻布の

草花の栽培、下谷の金魚、大久保の植木が有名であった。

 また手内職としては青山の傘、春慶塗、提灯、巣鴨の羽根細工、山の手

の竹細工などが江戸の産物と知られていた。

 こうした物はすべて彼等下級武士の内職で作られていたのだ。

 十右衛門が襷をはずし長火鉢の前に座った。

 源次郎も薄い座布団に腰を据え、十右衛門が火箸で灰をかき分け、

ほそぼそと点った炭火に炭を加えた。

「これは有難い」

 源次郎がすかさず手をかざした。

「ご新造はどうされた?」

「倅が熱を出しての、医師に連れて行きよった。お蔭で風邪気味じゃ」

「お互いに苦労するな、湯呑みを出せ。一本持参した」

 源次郎が一升徳利を長火鉢の上においた。

「久しぶりじゃ」

 十右衛門が嬉しそうに湯呑みをならべた。

                       続く

この小説は既にカテゴリから削除したものですが、角川書店のNEXT賞

でまずまず評価を頂いた物です。推敲しつつ掲載してみました。

 






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Last updated  Apr 15, 2011 03:09:24 PM
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