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May 17, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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      「騒乱江戸湊(31)


「お頭、おいらの勤めはなんですねん?」

「八助、おめえには悪いが暫く出番はねえ。我慢してくんな」

 猪の吉の言葉に上田屋の八助が無言で肯いた。

「八助、済まねえ。折角、呼び出しだしたのに悪いがご無礼するぜ。

おめえたちはゆっくりと飲んでいってくんな」

「何処に行かれやす?」

「案ずるなよ、これから伊庭の旦那に相談だ」

 猪の吉が立ち上がり、ニヤリと頬をくずし座敷を去った。

「兄貴、お頭は昔とちっとも変っておられやせんね」

「梅吉、おいらはおめえが羨ましいぜ。腕はたつし敏捷だ、おかしらが命じ

なさることは分かるよ。梅吉、おめえの門出を祝って飲みなおしだ」

 上田屋の八助が座り直し杯をなめた。

      (一章)

 猪の吉は鶴屋を出て両国橋をめざした。この辺りは料亭町である、立派な

造りの料亭の小道をぬけ神田川の船着場に急いだ。

 ここから船に乗り日本橋に渡れば、お蘭師匠の家はすぐであった。

(旦那は戻っておられるかな)  それだけが不安であった。

 半年前に求馬は江戸から突然に消えうせていたのだ。

「船頭、急いで日本橋までやってくんな」

「無理を言っちゃあいけねえよ、客人一人ではおまんまの食い上げだ」

「あいよ」  猪の吉が一分銀を投げ与えた。

「つり銭がねえよ」  「駄賃だ、急いでくんな」

 川の両側には桜並木がつづき、常夜灯の灯りに照らされた桜の散るなかを、

すいっと猪牙船が日本橋に向かって漕ぎだされた。

 屋根船が数艘すれ違い、芸子でも乗せているのか三味線の音色に笑い声が

暗い水面にざわめいて聞こえてくる」

「風流なもんだ」  

 猪の吉の呟きに船頭が船を漕ぎながら訊ねた。

「客人も料亭の帰りですかえ?」

「急ぎの用を想いだしてね」

「花吹雪、 三味の音聴き、 主の元、きっと待ってておくなましよ」

 船頭が気持ち良さそうに声を張り上げている。

「船頭にしておくにゃあ惜しいね、だが確りと漕いでくんな」

「任しておくんなまし」

 船頭が花魁の真似をし、棹を器用に操り日本橋の船着場に接岸した。

 猪の吉が敏捷に舷側より飛び降り駈け出した。

 何度も通いなれた小道を伝って足を早めた。大川から吹き抜ける風が

躰に心地よい。大川を見下ろせる格好な場所に小粋な家が見えてきた。

 そこから三味線の音が洩れ聞こえる、旦那は帰っておられるな。

「御免なすって」  「誰だえ」  「師匠、おいらだ」

「猪さんかえ、珍しいね」

 お蘭の艶っぽい声が聞こえ、格子戸が開いた。

 綸子(りんず)生地の半模様の衣装姿のお蘭の艶姿が現れた。

「師匠、粋な着物だね。絣(かすり)ですかえ」

「猪さんも着物のがらか分かるようになったね」

 お蘭が揶揄いながらも、懐かしそうに微笑んでいる。

「師匠、悪いが急いでいるんだ。旦那はご在宅ですかえ」

「ご在宅さ、さあ入っておくれな」

 猪の吉が癖で玄関で着物の埃をはたいている。

「猪の吉か?」  

 久闊を懐かしむような求馬の声がした。

「へい、お久しぶりにございやす」

「挨拶は無用じゃ、あがって奥に参れ」

 声に誘われ猪の吉が奥の座敷に進んだ。相変わらず黒羽二重の着流しで

求馬は開け放った窓から、夜の大川を眺めながら一杯やっていた。

「久しい、まず一献参ろう」

「へい、頂戴いたしやす」

 膝をついて畏まって飲み、胸の中がきゅんと痛んだ。

「いかがした」

「こうしてまた旦那にお目にかかることが出来て、嬉しくってね」

「はい、猪さん、何もないが飲んでおくれな」

 お蘭が傍らに座り、杯を手渡し酌をしてくれた。

 一気に飲み干し愚痴がこぼれた。

「旦那、糸の切れた凧のように何処に行ってましたんで」

「お蘭と同じようなことを申すな」

 求馬の白面の相貌に苦笑いが浮かんでいる。


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Last updated  May 17, 2011 12:08:02 PM
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